![[MPV・ターボ] を総括する(最終話) [MPV・ターボ] を総括する(最終話)](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/carlife/images/UserDiary/2042574/p1m.jpg?ct=a703d977e41e)
BGレガシィの乗り換え候補として、
マツダの新型MPV(ターボ)に試乗してきたので、
その様子を 5回に分けて報告する。
今回は (最終話・[MPV・ターボ] を総括する) である。
◎参考 ; [MPV・ターボ] 試乗記&雑感
(その1・接客編) は →
こちら。
(その2・走行性) は →
こちら。
(その3・快適性、安全性) は →
こちら。
(その4・見積編) は →
こちら。
私が試乗した最新モデルを総括する前に、まず、これまでの歴代 MPV について簡単に触れてみたいと思う。
■初代モデルは礎(いしずえ)
初代モデルは今を去ること約 18年前(1988年)、主に北米戦略車として市場に投入された。3列シートの日本車として好評を博し、北米では年間 6万台以上売れたこともある。後に日本にも導入されたが、当時としては大柄な車体や、良く言えば質実剛健、悪く言えば遊び心の感じられない実用車というイメージがつきまとい、9年間もの長きに渡って販売されたものの、その間の国内販売累計はわずか 5万8607台であった。北米での 1年間の販売台数に、国内では 9年間かけても達しなかったことになる (1年あたりに換算すると 約 6512台/年、1ヶ月あたりに換算すると 月販 543台 という厳しいものであった)。
■2代目で商業的に成功
しかし私に言わせると、初代の国内販売不振はクルマ自体の出来が悪かったからではなく、時代の要求に対して登場がちょっと早すぎただけのような気がする。いわゆるミニバンと呼ばれる市場が拡大期に入った 1999年、FMC で 2代目へとバトンタッチした MPV は国内販売で立て続けに年間 5万台を突破、実に初代の 10倍近い売り上げ増を記録している。日本での MPV ユーザーの多くは、この2代目ユーザーである。
■3代目で個性的な熟成を図る
そして今年(2006年)2月に登場した現行モデルが 3代目だ。新聞報道などによると、現行 MPV は当初、国内専用モデルとして開発されたという。現に北米仕様の MPV は未だに 2代目モデルが継続販売されており (それでも月販2000台ペースを保っているそうだが)、新旧モデルが国内外で混在している。現行モデルが例外的に海外に投入されるのは、現状では香港市場が決まっているのみで、他の地域については未定だそうだ。
私が試乗した MPV は、そのように国内市場向けに開発されたモデルだ。これはすなわち、海外市場との共用のために これまで課せられてきた様々な制約が取り払われたことを意味する。DISI (直噴)ターボエンジン、日本人の体格に合わせて様々にアレンジ可能なシートなどがその例で、これは同時に国内他社との差別化も図った意欲作とも取れる。
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以上が歴代の マツダ・MPV の生い立ちや身なりである。
こうした背景や特徴を抑えた上で、現行モデルについて、思うところを述べてみる。
まず総論から述べ、次に各論に移る。と言っても、あくまで私見ですので(念のため)。
【試乗車】
23T(2.3リッターターボ) の FF
【総論】
クルマとしての出来は良い。人を乗せた状態でも重さを感じさせない走行性(エンジントルク)、つながりのなめらかな 6AT、車重に見合ったブレーキ性能(ペダルタッチも)、居住性と積載性の両立など、バランスが取れている。家族 5人以上で乗る機会の多い人々にお勧めできる。逆に言うと、乗車人数が 4~5人以下のことがほとんどであるユーザーは、あえて MPV を選ぶ必然性は低いと考える。MPV の性能や装備は、その名の通り、人を多く乗せた状態で最大限に発揮されるものだから。
【各論】
◎走行性について
<良い点>
ターボはストレスの無い走りを提供していると思う。市街地走行など GO-STOP が
繰り返されるような走行モードにおいても、変速ショックはなめらか。タイムラグとも
両立していると感じる。
<懸念点>
6AT はその機構上、登坂路など高負荷環境下でビジーシフトとなる恐れがあるが、
今回の試乗では (試乗コースの制約により) 確認できなかった。
◎快適性について
<良い点>
各シートのサイズは大きめであり、ゆったり乗る分には適している。
空調ダクトがルーフに配されているので、夏場でも後席の冷房効果は良いだろう。
<懸念点>
サイドサポート(ホールド性)が甘いのは仕方が無いところか。サードシートはしっかり
できているが、座面と背もたれ(シートバック)が成す角度をもう少し改善したいところ。
空調ダクトの配置上、厳寒時の足元暖房性能については不明である。
ISO-FIX チャイルドシートはセカンドシート左右にしか装着できない。
セカンドシートにベビーシートを装着する場合、ベルト長の制約により、セカンドシートを
思い切り後ろに下げる必要がある。するとサードシートの足元スペースが喰われてしまう。
◎安全性について
<良い点>
低床・低重心構造は、動的なメリット(走行安定性)が多大であると実感する。
視界については広く、雨天時でもワイパーの払拭面積は大きめであった。
<懸念点>
運転手によっては、ボンネットの先端が見えない(見切りが悪い)点は要検討項目だろう。
セカンドシート中央席 (一体どこからどこまでが中央席なのやら?) の安全性は疑問。
スペアタイヤレスのため、パンクの際には修理キットによる応急処置で その場を
しのがなければならないことの割り切りが必要(注:スペアタイヤはオプション設定あり)。
◎積載性について
<良い点>
スペアタイヤを廃したことにより、前後方向はもとより、深さ方向にもラゲッジスペースに
余裕がある。サードシート直後にバックドアがあるワンボックス系の、使い物にならない
荷室とは雲泥の差がある。
<懸念点>
オプションのBOSEシステムを選択すると、ラゲッジスペースにサブウーハーが鎮座して
しまい、使い勝手が格段に落ちてしまう。バスレフ設計を見直すなどして、もう少し実用性
に配慮した方が良かったのではないか。
◎その他
<良い点>
ボディカラーについては、白・黒・シルバーといった定番色だけでなく、赤系・青系・グレー系
など一通りの色を選べる点が、ユーザーの嗜好の多様化にマッチしている。
<悪い点>
単独オプションが少ない。セットオプションが多すぎ。しかも非常に高価。
【私的なまとめ】
現行 MPV はなかなか良いクルマだ。運転していてストレスを感じにくい点は、「疲れにくい」 ことになり、それはひいては安全にもつながると思う。同乗者もリラックスして乗ることができるだろう。
ただ、(8人乗りという)スペックにこだわるあまり、シート&シートベルトの安全性がどの席でも均等に与えられているとは言えない点。製造(ライン)側の都合を優先させた結果、セットオプションばかりが増えて、ユーザーオリエンテッドの仕様選択ができなくなってしまっている点。・・・クルマとしての造りやパッケージングは素直に素晴らしいと感じるが、最後はそうしたメーカー側の都合優先で仕切られたように感じられてしまう点があることは、非常に残念である。結果、ユーザーが実際に購入する段階になって、初めて 「MPV って、こんなに高価なクルマだったんだ!」 と気づかされることになりかねない。
その意味からも、マツダは現行 MPV ユーザーに対し、その切なる声に耳を傾け、不満点をひとつひとつ解消し、(メーカー本意ではなく) 真にユーザー本意の性能開発や仕様展開を図っていく姿勢が、今以上に必要だと思う。MPV は、細部に渡って 「良く
造られた」 クルマだ。だが、「良く
造り込まれた」 クルマかと問われると、まだまだ成熟させるべき余地が残されていると感じられてしまうのだ。
「素性の良いクルマだけに、更なる成熟に期待したい。」 ・・・と、私的な結論を出したところで、この MPV 試乗記シリーズ を終わることにします。長文にもかかわらず、読んでいただいた方々には お礼申し上げます。
次回は、機会があれば BGレガシィ 乗り から見た
マイナーチェンジド BPレガシィ(年改区分:D) など
について、述べてみる
かも? しれません。