2019年9月8日日曜日。日光東照宮、二荒山神社、大猷院霊廟を見物しての帰り道、栃木県・群馬県境の金精峠を越えて、やって来たのは丸沼堰堤(丸沼ダム)。
自然湖である丸沼を発電用水として利用するために設けられたダムです。
このダムの特徴は、バットレスダムという形式で造られていることです。
ダムの上からだと特徴がよくわからないので、ダムのすぐ下流にある大尻沼の湖畔へと降りていきます。
下流側から眺めた丸沼堰堤です。構造としては、薄いダム本体を下流側から格子状の衝立で保持しているというところでしょうか。
建設は昭和3年(1928年)。希少な形状のダムとして国の重要文化財に指定されています。
ちなみに、ダムの前にはロープ付きの渡し船があり(自己責任で利用可。)、沼の対岸へ渡るのに利用させてもらいました。
これで予定していた訪問先はすべて回ったなということで、片品村にある道の駅「尾瀬かたしな」で昼食にします。
丸沼ダムカレーなるものもありましたが、辛くてさっぱりしたものがいいなということで、キーマカレーうどんにしました。地元の名産ということで舞茸のてんぷらをトッピング。
ここで時刻は間もなく14時。翌日の月曜日は当然仕事なので、素直に帰宅するところですが、「もう、日付が変わる前に家に着けばいいや。」ということで、もう1か所、沼田市東部の国道120号沿いにある廃トンネルへ立ち寄ることにします。
現在、椎坂白坂トンネル・椎坂利根トンネルで越えている椎坂峠の旧国道に入ります。やって来たのはここ。
この廃トンネルもご多分に漏れず、幾人もの方がすでに訪れていて前情報もあるので、「そんなには手間取らないだろう。」と見込んで、ガードレールを跨いで山中へと踏み込んでいきました。
結果から言うと、相当無駄に体力を浪費しました(笑)。進入場所は合っていましたが、辿る目印になる沢が二股になっていたことに気が付かず、違う沢を尾根近くまで登り詰めてしまいました。周囲の地形からして、尾根に向いて左側へと谷をいくつかトラバースしていけばトンネルがあるはずと割り切り、けもの道を使って谷奥を横切っていきます。
やがて、眼下に直線状の地形が見え、そこへ向かって降りていったところ、ようやくトンネルを見つけることができました。
數坂隧道です。「數」は「数」の旧字です。明治27年(1894年)、トンネル完成直前に落盤し、復旧されることなく放棄されました。
他の訪問者の方々が見た通りの姿で特に変化はないようでした。
ご覧のとおり、内部は坑口からすぐの所で天井が抜けて閉塞しています。
よくあることですが、どうも坑口付近のみ石積みで巻き立てて、奥は素掘りのままだったのかもしれません。石積みの縁がボロボロではなく、きれいなんですよね。
「數坂隧道」の扁額。
こちらは竣工年月日を彫り込んだであろう扁額。「明治二十七年」までは読み取れますが、その下は摩滅しています。
石積みの部分は歪みもなくきれいに保たれています。
トンネルの上部は、落盤の影響で凹んでおり、岩がゴロゴロしています。
このままトンネル上部から一気に尾根まで登り、トンネルの反対側へと向かいます。傾斜がきついので、完全に息が切れました(笑)。
トンネルの反対側と思われる所へやって来ました。トンネル自体の痕跡はありませんが、谷間を造成した感じがします。
こちら側には、「數坂隧道」と彫られた扁額が地面に転がっているとのことで、周囲を探してみます。
苔生して全く字が読み取れませんが、形からしてこれでしょう。
失礼ながら、長靴で表面を磨いてみたら「數坂隧道」の文字が見えてきました。
やや引いて見てみると、こんな感じで無造作に転がっています。明治27年から125年間、ずっと転がっていたのでしょうかね。
扁額が転がっていた場所からやや離れた場所には、トンネルで使われるはずだった石材がたくさん転がっています。
トンネルから麓へと下っていく明治時代の峠道跡です。
反対側の遺構はこんなところなので、また尾根へと登って、トンネル前へと戻っていきます。
沼田側へ尾根を少し降りたところにも峠道跡がありました。トンネルの名前にもあるとおり、元々は数坂峠という名前が付いていました。トンネルが未完成となってしまったので、近隣の違う峠にトンネルが開通する大正年間までは、この峠越えの道が引き続き利用されていたと思われます。
これはヘアピンカーブの写真です。
これは三又路。正面へ向かうとトンネルがあります。右手へ下るのが沼田方面へと向かう道のはずです。
トンネルに戻ってきました。日が射してきて、先ほどよりも明るい雰囲気です。
要石をアップ。
何とか無事に確認できたので、これで引き上げることにします。
進入した時に、この沢を登っていればもう少し楽だったんですよね…。
何はともあれ、これでまた一つ廃トンネルを見分できました。
最後に立ち寄ったのは、嬬恋村のJR吾妻線大前駅。土曜日の深夜に立ち寄った駅です。
今度は線路の終端をちゃんと見ることができました。