2025年5月31日土曜日、山梨県甲州市勝沼町にある旧中央本線のトンネル「大日影トンネル遊歩道」へ行ってきました。
このトンネル遊歩道の存在は以前から知っていましたが、「老朽化によりいったん閉鎖します。」ということとなり、すっかり忘れてしまっていました。
そして、とあるみん友さんの更新ブログを読んだ時、このトンネル遊歩道を訪れたことが書かれていたことで公開が再開されたことを知り、さっそく出かけてきたわけです。
訪問当日の山梨県の天気予報は雨でしたが、「まあトンネルの中を歩くだけだから別にいいか。」とやって来ましたが、まあまあ強い雨だったので、駐車場から現地まで移動するのに少々参りました。
中央本線勝沼ぶどう郷駅の東側にある駐車場に車を停め、トンネルへと向かいます。その途中、中央本線のガードをくぐります。
場所はこちら。

※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
コンクリート造のボックスカルバートの奥に、煉瓦アーチのガードが隠れています。
ガード内は煉瓦アーチが2つに分けて造られています。
反対側へと出てきました。こちら側は縦長の印象的なアーチとなります。
「菱山道路隧道」との説明板が設置されています。説明板によると、まず1903年(明治36年)の中央本線開通に伴って坂の上部側の煉瓦アーチが設置され、続いて1913年(大正2年)の勝沼駅開業に合わせて坂の下部側の煉瓦アーチが設置されました。
旧勝沼駅のホームへとやって来ました。先ほどの菱山道路隧道の真上になります。勝沼駅は開業当時はスイッチバック駅でした。1968年(昭和43年)の複線化に伴ってホームは本線上へと移動し、スイッチバックは廃止されました。
ホーム上に設置されている駅名板。
勝沼ぶどう郷駅の駅舎前を通り過ぎた先に展示されているEF64形電気機関車。中央本線で活躍した電気機関車ですね。中央本線の内、いわゆる「中央東線」ではEH200形電気機関車に主役の座を譲ってしまいました。
勝沼ぶどう郷駅の東京方にある「大久保沢河川隧道」。煉瓦造・石造の暗渠を悉皆調査している方によると「大久保沢橋梁」です。
ようやく今回の本命である旧中央本線「大日影トンネル遊歩道」へとやって来ました。左側のトンネルは現行の新大日影第二トンネルです。
説明板によると、大日影トンネルは1903年(明治36年)の開通。1997年(平成7年)に新トンネルが開通したことにより廃止されました。
場所はこちら。

※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
ちょうどEH200形電気機関車がタンク車をけん引して通過していきます。この貨物列車は、山梨県内もしくは長野県内にある石油施設へガソリン等を輸送し終えての帰りの列車ですね。
続いて、E353系電車が通過していきます。
それではトンネル内へと入っていきます。トンネル坑門にはこのような注意板が残されていました。反対側まで約28分かかるようです。
反対側の坑口までの距離が示されています。旧大日影トンネルの延長は1367.8mあります。入口までやって来て、トンネルの長さを見て入らずに帰っていく人もいました。
レール・枕木・バラストがそのまま残されていますね。
大型の退避壕。コンクリートブロックで造られているので、後年に追加されたものでしょう。
まだまだ先は長いです。
こちらは開通当初から存在していると思われる煉瓦造りの大型退避壕。ベンチが置かれて休憩場所になっています。
途中で側壁部分が石積みに変わりました。断層部分を通過するためだそうです。
アーチ部分がコンクリートで塗り固められています。頂点部分のメッシュは老朽化対策で追加されたものでしょう。現役の煉瓦トンネルでは、まあまあ見かけます。
「110km」のキロポスト。
急勾配区間のため、壁面にはSLからの煤煙がこびり付いています。ちなみに、この区間は1931年(昭和6年)には電化されて電気機関車へと移行しています。
25‰(パーミル)か25.5‰の勾配標。パーミルは1000m進む間に上り・下りする高さを表しています。
トンネル内は風雨に晒されないので、電化から94年経っても煤はしっかりと煉瓦に残っていますね。
レールの間に湧水を排出するための排水溝が設けられています。
大型退避壕。退避壕は単調なトンネル内では良いアクセントになります。トンネル本体とは違う造形も面白味があります。
反対側の坑口まであと300m。
109.5kmのキロポスト。
こんな形状での煤の付き方は初めて見ます。こういうものを眺めるのも、いろいろなパターンがあって面白いですよ。
普通に歩き通せば「28分」のところ、1時間弱かかってようやく反対側の坑門へと到着しました。
甲府方も同様でしたが、坑門は総石積み造り。ピラスター(壁柱)を備え、アーチ環部分は「楯状迫石」と呼ばれる楯状の石で構成されていて、重厚さを醸し出しています。
場所はこちら。

※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
トンネルの先にある「深沢川河川隧道」。旧中央本線建設時に建設されたのとことですが、旧線の真下にあるわけではなく、どうしてあの位置に河川隧道が設けられているのかは不明です。
大日影トンネル遊歩道の真向かいにある「勝沼トンネルワインカーヴ」。旧深沢トンネルを再利用したワインカーヴ。
出入口付近だけ見学可能なので、入ってみました。ワイン保管用の冷蔵庫?がズラリと並んでいます。
冷蔵庫の置かれ方を見ることで、このトンネルも急勾配区間であったことがよくわかります。
ワインカーヴの出入口を振り返って。トンネル内径を狭くしてあります。外気を遮断しやすくするためですかね。
ワインカーヴから大日影トンネル遊歩道を眺めます。この時は強い雨が降り、頭上では雷鳴が轟いていました。無事に車へと戻れるのか少々心配中…。
大日影トンネル遊歩道をくぐり抜けて、勝沼ぶどう郷駅側へと戻ってきました。依然、雨は収まりません。
これにて大日影トンネル遊歩道の散策は終了。遊歩道としてきれいに整備されていましたが、過剰に手を加えられることは無く、私のような趣味の人間も煉瓦トンネルの雰囲気を楽しむことができました。
廃煉瓦トンネル探索もボチボチと再開したいところではありますが、近場の有名どころ(マニアにとってのね。)は大体巡ってしまったので、頑張って遠方へ行くか、再訪でお茶を濁すか。どうしましょうかね。