日本では格差が拡大し、平均年収が下がり、もはや「賃金が低くなりがちな高校生の最低限の賃金」を確保するために決められた最低賃金で働くのが普通という「先進国」とは思えないような目も当てられない状態になっている。
基本的な構造は、
・賃金の低下、増税、年金負担によって労働者の実質賃金減少。
・人件費や諸コストの削減と法人税課税額の低減、円安による為替差益により企業が利益を増大。
・経営層の報酬決定の仕組みを変えたことで経営層は企業利益に応じ報酬増大。
である。
利益を確保するほど経営層の安泰につながるので、コストを下げること(人件費抑制、サービス購入に当たる派遣割合の増大、下請けへの支払い抑制など)、投資を避けること、為替差益を得るためのロビー活動などが強化されてきた。自民党政権はそれを受けてさまざまな大企業・富裕層優遇施策を行ってきた。
一般国民の実質収入は低下している。また、この所は円安と外部要因によるインフレによって実質収入はさらに目減りし続けている。それに対する国から国民への保障政策は皆無に等しい(石油元売りに補助金を突っ込んだところで国民まで充分届かない)。
詰まるところ、一般国民からお金を巻き上げ富裕層に再配分する構造がバブル崩壊後強化されてきたのだ。
では、日本における資産保有額と階層別人数はどうなっているのだろうか。
野村総研のデータがあったので引用しよう。
野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計
(野村総合研究所)
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2020/cc/1221_1
いわゆる富裕層を1億円以上の資産を持つものとすると、133万世帯ほどだ。全体が5400世帯であるので、2.4%程度である。
年収1億円を超えると税制優遇が上回り、収入に対する課税割合が減っていくので、収入額が多いほど資産が加速度的に増えやすい構造がある。
問題は格差拡大の中で人数ではどうなっているのか。実は富裕層は増えているのである。
2005年で4900世帯。1億円以上の資産を持つ世帯は86.5万世帯、割合は1.76%。
2019年で5400世帯。1億円以上の資産を持つ世帯は133万世帯、割合は2.46%。
割合にして1.4倍に増えているのである。
以前なら経営層といえども収入はさほど大きくなかったが、報酬増加と税制優遇で太り続け、その人数と割合が増しているのである。
なお、人口は減っているので、全体の世帯数が増えているのは単身世帯の増加のためである。
総務省のデータを見ると、このように増え続けている。
結婚もできず、子供も残せない、結婚できても子供を育てるのが困難。
一方で富裕層は増え、太り続ける。
バブル崩壊後の失われた30年間で起きているのは、一般国民を犠牲にし、ごく一部の国民が利益を享受し、再投資も行われないため国際競争力が低下し続ける、まさにいつ溶けて崩壊してもおかしくない泥船化である。
Posted at 2022/05/09 07:25:36 | |
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