エクシーガは、ブレーキング時にキーキーと制動音が鳴る状態になっていました。
特に最近はブレーキ鳴きが激しくなり、子供の塾のお迎え時に「あ、パパのクルマが来た」と、ビルの3階の教室にいる子供が、外のエクシーガの到着に気づくほどでした。
ブレーキ鳴きもここまで達すると、制動音は(他人にとっての)不快音と化すため、急ぎ この5月連休を利用して対策することにしました。
■ブレーキ鳴きの対策手法検討
結論から先に書きますと、今回は(株)イチネンケミカルズさんの「高粘着消音グリース」を試すことにしていますが、私の中ではブレーキ鳴きに対するアプローチは次の4種類があると思っています。
(1)ブレーキパッドそのものを静音タイプに変える案
→ 現状でパッド残厚があるので今回は対象外。
(2)パッドに面取りやグルーブをDIYで追加する案
→ 過去に実際に実施し、多少の効果はあった。
(3)アンチノイズシムの類を適用する案
→ エンドレス、プロジェクトμ、ディクセルなどがある。
(4)共振を抑える静音グリースを塗布する案
→ 今回はこの案でトライ。
当初はアンチノイズシムの類を本命に据えていたのですが、静音グリースの類に興味が湧いていろいろ調べていくと、実に多種多様な製品が市場にリリースされていることに驚きました。ディスクブレーキシムグリースとかディスクパッドグリス、そのほかディスク鳴き止め剤などのスプレー式も含め、多数の製品がヒットします。
スプレー式のものは持続性が不明なため割愛(>個人の感想です)。グリースの類は、成分として高粘性のベース剤に耐熱性や潤滑性に優れる添加剤を加えたものが主流であることが分かりました。
そうしたものの中から、価格的に納得できそうなもの(>個人の事情です)として、最終的に冒頭に記した「高粘着消音グリース」をセレクト。実際に手配・入手したのは、今から1年以上前となる2020年3月のことでした。
■いよいよ出番
高粘着消音グリースを入手しておきながら、その後のメンテではパッドの面取りやDIYグルーブの追加(前述の手法(2))を施して、鳴き抑制効果を試していました。この手法は、ブレーキパッドの残厚が十分にある場合に有効で、寿命が近くなった際には使えないと認識していたことから、あえて先に実施して経験(効果の検証)を積んでいました。
今回はそうした経験を元に、「興味が湧いたものを試す」「楽して鳴きを抑制する」ことへのトライとして、グリース塗布(前述の手法(4))を実施してみることにした次第。
(※楽して=工数を掛けずに、の意味。)
◎ご参考
「高粘着消音グリース」のパーツレビューは → こちら。
なお、ブレーキ鳴きは後輪から発生していることが分かっているので、今回対策するのは後輪のみ(ブレンボ+プロジェクトμ HC+)になります。
■作業風景(右後輪)
以下、順に画像で作業手順を示します。要所は本文に説明を付記します。
<↓ブレンボキャリパーは、キャリパーボルトを緩めずにパッドの取り外しが可能なので楽です>
<↓取り出したパッドはまだ残厚あり。せっかく外したので、向かえ側/送り側のそれぞれを面取り>
<↓キャリパ全体のダストブローや、ピストン&シール類の点検・簡易清掃も合わせて行います>
<↓割ピンやパッドピン(スライドピン)なども清掃。※やすりは軽く表面をさらう程度に留める>
<↓いよいよ高粘着消音グリースの出番。パッドの背板とシム(塗布面)は脱脂洗浄しておく>
グリースの主成分は、シリコーンと酸化亜鉛(ZnO)です。グリースと聞くと、ドロドロの油脂を思い浮かべる方々も多いかと思いますが、実際は白色のペースト状のシリコーンです。かなり高粘着ですが、チューブからの「すり切れ」は良い方です。
# これは単なる思いつきですが、ZnOはいわゆる
# ベビーパウダーの構成成分にもなっていますので、
# より安価な信越シリコーンKE45Wに市販のZnO
# 含有パウダーをDIYで混ぜてこねると、自家製の
# ブレーキ鳴き止め剤を調合できないかしら?
<↓清潔な手でなるべく薄く均一にシリコーングリースを塗布したあとは、パッド&シムを組み戻し>
ここで、ブレーキディスクローターの内外周には、いわゆるツノ(摩耗残りの土手)があるままになっています。この「ツノ」はブレーキ鳴きの原因になることがあるとされていますが、今回はあえてこのような「鳴きに不利」な環境下(>ローターの研磨などをしていない)でシリコーングリースを適用することで、その消音効果を試そうとしています。
<↓せっかくなので、外したホイールもサッと清掃します。今回は裏側もキレイにしておきます>
# 「トンボ鉛筆の砂消しゴム」を使った本格的な
# ホイール清掃は、また別の機会に行うことにします。
<↓外したタイヤのトレッド面を目視点検。これを見て「少々やべーな」と思いました…>
さて、ホイールを清掃したあとのタイヤは、トレッド面などに異常がないかどうか確認します。パンクやキズなどは無かったのですが、「このままいくとちょっとヤバイな」と思ったことが1点。タイヤの溝が浅くなってきたことではありません。
<↓誇張して書いていますが、トレッド面の摩耗がダブルバレルの兆候あり…を抽出しました>
ここで言う「ダブルバレル」とは、「2こぶラクダ」のように山が2つになった状態です。つまり、これはタイヤの空気圧が低めの状態であることが示唆される兆候です。(シングルバレルだと、「1こぶラクダ」のように山が1つの状態を示します。)
タイヤはハンコックの Ventus V12evo2 で、エクストラロード仕様。空気圧はそれ(+諸々の狙いも)を加味して設定していますが、点検インターバルをもっと短めにして確認する必要性を再認識しました。
# ふだんはあまり取り外ししない部品は、
# 外した機会にしっかりと診ておくことが重要ですね。
<↓とりあえず右後輪のブレーキ鳴き処置、および各部位の目視点検は終了。左後輪の作業に移ります>
■作業風景(左後輪)
やる内容は右後輪と同様ですが、こちらの作業風景も、以下の画像で順に記していきます。
<↓ホイールがブレーキダストで真っ黒だ…(下の作業後の画像と較べてみよう)>
<↓ファミリーカーとしてはダスト汚れが厳しいな。次回のパッドは低ダスト品にしよう>
<↓ホイールを外せば、ブレーキパッドも簡単に取り外しが可能>
<↓こちらもパッド両端に面取りを追加。ただし、DIYでセンターグルーブを掘らないのは右輪と同様>
<↓ブレンボ純正のシムを清掃しているところ。反比例するように、自身の手が真っ黒になっていく…>
<↓左画像:シムになるべく薄く均一に塗り伸ばすところ 右画像:ピンも先ほどと同様に清掃>
<↓パッド&シムを組み戻し、洗ったホイールを再装着(上の作業前の画像と較べてみよう)>
こうして後輪(ブレンボ+プロジェクトμ HC+)に「高粘着消音グリース」を適用しつつ、各部の清掃と目視点検を終わらせることができました。仕上げに、タイヤの空気圧調整が待っています。
<↓後輪の空気圧は、狙い値に対してやや抜けていた。
物理は現象に素直に現れますね、ハイ>
■試走を終えて
作業後に試走して驚きました。あれほど盛大にブレーキ鳴きが発生していたのに、施工後はまったくと言っていいほどブレーキ鳴きが発生しなかったからです。確かに効果はあることの確認が取れました。
ただし、過度な期待は禁物だと思っています。ブレーキ鳴きの抑制メカニズムとしては、高粘着シリコーンを介して共振が抑制されることでの「振動伝達系の遮断による消音」と考えられるため、次のような履歴が与えられ続けると、その効果は徐々に低下するであろうからです。
・シリコーンの高粘性が失われるとき(受熱の繰り返しによる変性)
・添加成分(今回はZnO)の消費・消耗・流れ出し(>あれば)
したがって、今後は次の点に着目しながら経緯観察していくつもりです。
・消音効果が、どれくらいの期間で持続するか
・効果が薄れる場合、どんな薄れ方をするか
(音域/発生車速/ブレーキ踏力など)
何事も、事象に対する推定、対策、効果確認、検証、更なる対策へのフィードバック…というループを回せるはずですので、そのための経験(時には遠回りな道筋もあることでしょう)も重要かな、と思っています。
<↓根本対策としては、すでに新品ディスクローターを入手済み。実はパッドも新品手配済み>
以上、このブログをご覧になっていらっしゃる皆さんに対しても、何らかの参考になれば幸いです。
Posted at 2021/05/09 14:33:04 | |
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