戦前の大日本帝国は、天皇を元首とする国家だ。
戦時には天皇のためにと国民を駆り立て、多くの命が失われた。
軍国教育が行われ、こどもたちは国のため、天皇のために死ぬことをすり込まれた。
戦後、日本を危険な軍国主義国家から民主主義国家に作り変える過程で、当然天皇制は問題になった。
天皇制の廃止には強い抵抗があり、天皇を戦後の国の統率に利用できると考え、実権を持たない象徴天皇制へとシフトさせた。
教育は政治からの独立性を持たせた。
また天皇の権力によって軍国主義教育を行い再度軍国主義化することを防ぐ目的であったわけだ。
**
しかしながら、ここには大きな問題があった。
軍国主義は天皇がもたらしたものではない。明治維新で天皇を担ぎ出し、実権を持ち支配した層がもたらしたものだ。天皇に元首としての実権がなくなったところで、その実権を危険な政治勢力が持っていたのでは何も変わらない。
本来なら戦前の政治勢力を政治から駆逐せねばならなかったが、アメリカは共産主義の拡大への対策を優先させ、日本を反共の防波堤とすべく多くを釈放し、CIAの支援で自民党を結党させ、政治に返り咲かせてしまった。
一旦は取り除いた軍隊組織も警察予備隊として再編成させ、自衛隊となった。特高警察は公安警察として復活した。
その結果が全体主義の強い組織と教育、権力監視のジャーナリズムが機能しにくい戦前からの体制を引き続くマスコミのあり方、政治教育を行わず、高い供託金で被選挙権を行使しがたくし、限られた層によって議員の世襲化が進み、三権不分立が起こっている等々だ。およそ健全な民主主義国家とは言いがたい。
基本構造が戦前のままなので、日本の民主主義など形だけのものだ。
**
象徴天皇制の下で、天皇は極めてリベラルであり、護憲、平和を愛する存在だ。
一方で戦前にその天皇を政治利用してきた層は、象徴天皇制では利用価値がなく、代わりにアメリカへの忠誠を誓うことで日本における実権を保障されている。彼らにとって象徴天皇は、国民に日本の体制が存続していることを納得させるための飾りに過ぎない。万世一系など、その価値の保証のようなものだから徹底的にこだわろうとする(実際には切れているらしいし、神話の話を現実として取り扱う時点で相当におかしい)。
本来の保守勢力は天皇を崇拝するものであるが、その保守勢力が旧体制に都合の悪いリベラルな天皇を敵視しているのであるから、天皇自体を崇拝している宗教的なものではなく、宗教的な装いの中で天皇が制度上持たされた最高権力者という立場を必要としていたに過ぎないことは明らかだ。
**
日本を真に民主化するのであれば、象徴天皇制にするのみならず、徹底的に戦前の支配層を政治から閉め出さなければならなかった。
ドイツは戦前の反省をし、自らの手で戦争責任者を徹底的に訴追し(9000人以上という)、制度としてナチズムを排除している。ナチスの鉤十字を公共の場で展示・使用することは、民衆扇動罪で処罰される。
戦時中の強制労働の補償として主に東欧在住の167万人もの被害者に対して約5800億円の補償金を支払っている。
その結果ドイツは大きく失った信頼を回復し、国際社会に受け入れられている。
それをせず、アメリカの意向もあってうまく立ち回って戦前体制を温存し続けている日本は、とても信頼されようがない。
そもそも、戦後のほとんどの期間を一党が支配してきたと言うだけで相当にうさんくさい。
このところの極右政権によって警戒の目で見られている。
なお、日本のような一党支配体制は一党優位政党制と言うらしい。一党独裁制とは異なるものの、当然問題が多い。
一党優位政党制は、野党が国民から疑問視されることにより成立する。弊害として国民が惰性で与党に投票し続けることにより投票率が低下する。低投票率は国民がある程度政治に満足している結果でもあり、それ自体が悪いわけではないが、与党系圧力団体の組織票の影響力が増大するため、政治が圧力団体により左右され易くなると言える。
また、与党のみが政治における現実の全てを受け入れることによりイデオロギー的立場が曖昧になったり、特定の業界と癒着したりするなどの問題を引き起こす。日本において自民党系圧力団体が自民党を支持する理由として挙げたのは、自分達の業界の利益を代表してくれること(族議員)、野党を支持するよりも政策に早く反映されることなどであった。また、55年体制下の日本では、社会党に顕著に見られたように野党が野党であることに安住し勢力拡大のための候補者増や政策転換に消極的になるという傾向もあった。
Wikipedia
Posted at 2019/07/14 15:16:14 | |
トラックバック(0) |
政治・行政・マスコミ | 日記