ホンダCBR250Four(MC14型、1986年式)のメンテナンス記録です。
エンジンの始動性改善に向けて、一つのトラブルの対処をしたら次のトラブルを認知するという、旧車にありがちな事例の備忘録(その4)です。
◎(その1) →
内視鏡で燃焼室内を観察してみる、の巻
◎(その2) →
点火プラグの交換→思い込みは厳禁の巻
◎(その3) →
原因のつぶし込み・燃料コックが不通の巻
■#3番気筒が失火
前回までのブログでは、セルスタート時に初爆が来ない原因として「燃料コックの詰まり」にたどり着き、暫定処置を施すことによってエンジン始動に成功したものの、別の課題が浮上した。・・・というあらすじでした。
その「別の課題」とは、「4気筒あるうちの#3番気筒が失火している」という症状です。エンジンを冷態始動した直後(水温が低いとき)、アイドリングが不安定気味。その状態でエキゾーストパイプに手を触れてみると、#1#2#4のエキパイは熱いのに#3は手で触れられることからも、失火していることが分かります。
冷態始動時のみ失火して、完全暖機後(or エンジン回転速度を高回転に上げたとき)に#3気筒が着火する可能性の有無を確かめるべく、3気筒状態で試運転(市内を走る)してみます。その状態では、#3のエキパイも手で握れないほど熱くはなっているのですが、エキパイ表面温度を放射温度計で計測することによって、失火有無を再確認することができます。
<↓手持ちの非接触型表面温度計(堀場製作所の放射温度計)でエキパイ表面温度を測定する>
◎ご参考:放射温度計のパーツレビューは こちら
→
堀場製作所 HORIBA 放射温度計 IT-540NH (測定範囲 -50℃~1000℃)
<↓#1#2#4が概ね100℃前後であるのに対し、#3は約50℃と大きな差があることを確認した>
人間の触診では、排気系の表面温度が50℃でも100℃でも「熱い」と感じてしまうところ、放射温度計を活用すると50℃もの温度差があることが瞬時に分かります。サーキット走行時のタイヤ表面温度(トレッド面のIN側ショルダーとOUT側ショルダーの差)計測だけでなく、トラブルシュートにも活用できますね。
#3のみが失火(というよりも点火していない)原因として、また点火系やら燃料系やらの確認を行うことになります。
■市販価格調査
「#3失火」のトラブルシューティングをする前に、点火コイルやプラグコードの類の純正部品の在庫有無、あるいは市販のアフター品の価格帯などをザッと事前把握しておきます。
<↓そのまま使えるわけではないが、市販のプラグコードは「2800円/本」の価格で売られている>
CBR250Four(MC14型)のコイルやコードの類は、まだメーカー在庫ありや?無しや?に付いても問い合わせてみます。
<↓イグニッションコイルは廃盤だと判明(画像下段の斜線が引かれた部分)>
<↓プラグコードは価格が載っている(廃盤の記載なし)が注文不可と判明>
上の画像に示す通り、イグニッションコイルについては単価8415円とのことでしたが、メーカー欠品で廃盤だと判明。プラグコードについては、なぜか#2のみ他の#1~#4と価格が異なっており、廃盤表記が無いことから注文可否を確認いただいたところ、メーカ在庫なしのため注文不可と判明。
そこで、今後(実施するであろう)失火要因の切り分けに向けて、ヤフオク!で中古のコイルとコードを入手しておくことにしました。
■プラグのスパークの確認
その後、まとまった時間が取れることになったタイミングで、点火プラグのスパークを改めて確認することにします。車両の点火プラグ(DENSOのイリジウムプラグIUH27)は取り外さないまま、プラグコードの先端のみをエンジンから取り外し、別途用意してあるスパーク確認用のプラグに差し替えして火花が飛んでいるかどうかを目視確認します。
<↓ブラケットを外してラジエーターを車体前方に追いやりつつ、あらかじめ燃料タンクも外しておく>
<↓外したプラグコードの先端に、スパーク確認用プラグを取り付けてシリンダヘッドに接触させる>
自分用の資料として、火花が飛んでいる状況は動画で記録。
以下は、その動画からキャプチャした画像です。
<↓比較用の例として#1の火花を観察。電極間で強いスパークが飛んでいることが分かります>
<↓火花って、意外に電極間でワンダリング(常に一定方向ではなく、あちこちに飛んでいます)>
上記は比較用(失火していない)#1の点火状態。
では問題の#3のプラグコードに付け替えて確認してみます。
<↓まったく火花が飛んでいないワケではない。弱いながらも励起はしている模様(青白く光る)>
#1と#3で、プラグの火花の飛び方に差があることを確認しました。まずは車載部品の状態を確認したのち、コイルとコードの組み合わせを代えてみて、症状が連れ回るかどうかを確かめることにします。その際は、あらかじめヤフオク!で手配しておいた中古のコイルとコードの出番となります。
■車載部品の念押し確認
念のため、車両オリジナルの点火コイルやプラグコードなどの状態を確認します。ついでなので、コネクタ端子の接点も軽く磨いておきます。
<↓MC14型CBR250Fourの点火コイルはガソリンタンクの下に位置しています>
<↓あくまで目視ですが、外観上はクラックや破損などの様子は認められない>
<↓コイル周辺の電気接点(コネクタ端子)の清掃をして組み戻ししたが・・・結果は変わらず>
電気接点を清掃(磨きなど)しましたが、#3失火状態(#3プラグの弱いスパーク状態)には変化がありませんでした。
■症状が部品に付いて回るかどうか
次に、#3番気筒用の点火コイルやプラグコードを他の気筒と入れ替えて、症状が入れ替え部品に付いて回るかどうかを確かめます。まずは車両オリジナルの部品間で入れ替えし、次にあらかじめヤフオク!で手配しておいた中古のコイルとコードを含めて入れ替えします。
<↓新たに入手した中古品と区別するため、車両オリジナル品には色付きのペイント文字を付加>
ところでCBR250Four(MC14型)の点火コイルとコードはヤフオク!で多数出品されており(@2019年12月時点)、その中から「割れや欠けが無い」「作動確認済み」などと記載のあるもので安価なものを落札しました。ただ単に「実働車から取り外しました(ので恐らく大丈夫)」的な商品説明のものは避けます。
<↓この日のために、あらかじめヤフオク!で手配しておいた点火コイルとプラグコード>
<↓中古のコイルとコード(1台分:税込み2640円+送料1280円=代金合計3920円で入手)>
いろいろと試しましたが、結局、
「車載の点火コイルとプラグコードの中で、接続を入れ替え」
「車載コイル+中古コード」
「中古コイル+車載コード」
「中古コイル+中古コード」
のそれぞれの組み合わせにおいて、#3気筒の失火状態は変わらず。
よって、点火系と言うよりも燃料系(キャブレター)に原因が残っている可能性が高まりました(燃料タンクから燃料コックまではガソリンが流れていることは確かめられているため)。
■キャブレターはショップに依頼
失火の原因がキャブレターにあると仮定すると、恐らく(真因追求のためには時間を要して)泥沼にハマってしまう可能性があります。あるいは消耗品(ガスケットなど)のメーカー在庫が欠品だった場合、そもそもキャブレターを分解したくても分解出来ない恐れもありえます。
よって(ここ最近は、自分自身にあまり時間が取れなさそうなので)キャブのOHはショップに依頼することとしました。ただし、依頼する際にも消耗品の在庫があることが前提となります。そのため、事前に調べたところ「keystar(キースター)」という会社から、車種別に「燃調キット」というキャブレターの分解整備&チューニング(調律)用のパーツが販売されていることが分かりました。
<↓キースターのWEBサイトのキャプチャ。比較的古いバイク用のキャブレター部品もリリース>
<↓CBR250Four用の「燃調キット」の構成部品(これらが一括で同梱される)>
ガスケットと主なキャブ調整部品がキット化されているので、これを入手してからショップにキャブレターOHを依頼します(と言うよりも、実質的には(キャブレターだけにとらわれず)#3の失火が解消されるための整備」というスタンスで、作業を依頼します。以下はその申し送りメモです。
<↓ショップへキャブレターの分解清掃、オーバホールを依頼する際に、諸情報をまとめた連絡表>
こうして、私自身が作業に着手すると「時間が掛けられずに中途半端」になったり「(キャブに関する)知識や経験が無いことによるリスク」を避けるため、その部分はプロに作業依頼することにしました。
「その5」に続く。
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2020-02-02(Sun.) : 更新
[CBR250Four] エアクリーナー&キャブレター燃調キット(始動性改善・その5) に続く。
Posted at 2019/12/30 03:20:34 | |
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