
家の近所のスバルのディーラー(B4時代にお世話になっていたお店)に、以前、2日間だけ店頭に「ライトニングレッド」(真っ赤)のBRZが飾ってあった。
Z34といい、CR-Zといい、基本的にターゲットがオッサンなので、オレンジメタリックとか渋めの色が多いのだが、この「ライトニングレッド」はスポーツカーのスポーツカーたる色で、非常にカッコ良かった。
ここ2週間ぐらい、
東京モーターショーでも見た「サテンホワイト・パール」のBRZがディーラーにあるのは気づいていたが、静的には東モでじっくり見たワケだし、スルーしていた。
ところが、昨日、このクルマがナンバーをつけて走ってるのを見かけて、「試乗できるようになったんだ!!!」と、テンション高くお店を訪問した。
仲の良いスタッフは、本日は岡山国際で走行会で不在だった(笑)
■Subaru BRZ (ZC6)
試乗車はラッキーなことに6MT。
Sグレードなので、トルセンLSD、17インチ仕様。
●エクステリア
エクステリアのスタイリングについては、東京モーターショーのレポートでいろいろ感想を書いているのでここでは割愛。
カッコイイと思うが、フロントフェンダーのダミースリットだけがひたすら残念で台無し。
●インテリア
天井からピラーから黒で統一されており、硬派に良くまとまっている。
まとまり過ぎており、スポーツカーとしては個性に欠けて退屈と言えなくもないが、スバルにしては上出来だろう。
質感では先日乗ったRCZなどと較べるとかなり差を付けられているが、「スポーツカー」なんだから質感なんて糞くらえだとも思える。
気軽にフルバケ換装できるような内装が良いのだ。
ペダルレイアウトに少しクセがある。
アクセルペダルがブレーキペダルよりも随分奥にあり、ヒール・アンド・トゥがしにくい。わかってしまえば、そのペダルレイアウトに合わせてアンド・トゥしてやることは可能だったが、不自然だ。
左足ブレーキはしやすいのだが・・・。
F.S.260km/hのスピードメータがカッコイイ!!!・・・が、ハッキリ言って見にくい(笑)
だいたいが、200km/hオーバーまで引っ張れるんだろうか?
見難い分は、タコメータ内のデジタル表示があるのでOK。
●エンジン~ドライブトレイン
ボア×ストローク=86×86のスクエアなFA20エンジン!
トヨタのD4-S直噴付の水平対向。
吸気系の取り回しとかしげしげと観察。
斜めに「Vタワーバー」が配置されている。
まず、音がNAの4発っぽい音。
MAHLEの「サウンドクリエーター」というシステムにより、アクセル連動で吸気音がコックピットに伝わるそうな。
マイクで拾って拡声しているワケではないらしいが、原理は不明。
排気音が聞こえるワケではなく、かと言って「シュコーッ」って感じの吸気音が聞こえるワケではなく、エンジン音、メカニカルノイズがやたらと聞こえる。
安っぽい雑味・・・って感じの音では決してなく、それなりに男臭い、雰囲気のある音だが、F22C(S2000)やS14(E30 M3)やE07A(ウチのビート)ほど、アタックの強い音ではない。
ただし、マフラー1つで大きく化けそう。音源としてはイケてる。きっとマフラーでヤル気な音になるハズ!
・・・が、しかし、「イケてる4発NAっぽい音」を奏でて、本当にFA20はイケてるんだろうか?
そもそも、水平対向は4気筒でも振動を理論上キャンセルできるのがメリットであるハズ。
EJ20は極めてなめらかに静かに回るエンジンで、それゆえにエンジンのアタック音ではなく、吸排気の音が支配的だった。ターボによる排気のエネルギーを消費しているから、というだけでなく、NAモデルも本当に静かでキレイに回るエンジンだ。
ところが、このFA20の音は、水平対向の美点を無視し、直4NAの名エンジンを模倣したような特性だ。
これは、そう演出したかっただけなのか、まだ熟成不足ゆえなのか?
果たして・・・・。
空吹かししてみると、ヤル気な音がするが、レスポンスはそんなに良くない。
良くないというか、少し苦しそうに回転上昇する。
軽量フラホなんかで大きく改善できるのだろうが。
走ってみると、まあ、それなり。
2LNAとしては、ウチのプジョー307SWなんかよりもトルク感もあって実際に加速もするが、目の覚めるような何かはない。
フラットトルクなので、ターボ車やK20A(VTEC)のようなカタルシスはない。
オーバースクエアのEJ20や、ウチのビートのE07Aのように、高回転に吹け上がる快感もない。
音にある程度雰囲気があるので、ちょっとごまかされている気もする。
「音はややスポーティーだが、本当にこれはスポーツエンジンとしてイケてるのだろうか?」と。
ただ、潜在能力は感じる。ちょっとした吸排気の変更で面白くなりそうな・・・。
最近のスポーツ2LNAと比較すると、ロードスターのエンジンの方が緻密にカチリと組まれた感じでキレイに回るが線は細い。
F20C(S2000)は、雰囲気・パフォーマンスの両面でFA20より上だと思う。
6MTは普通に良い感じだった。
●ボディ~足回り~ほか
まず、ノーズが軽い。
そして、車体が軽い(このグレードは1230[kg])。
最近は、軽快感よりも「剛性感」を前に押し出しているモデルが多い(CR-Zとか)が、BRZは軽快さがナチュラルに伝わるフィーリング。
そして、エンジンの重心の低さと、フロントミッドシップ寄りにレイアウトされていることが本当にきちんと伝わってくる。
インプレッサ比で120mmの(!)もエンジンマウント位置が下がっているらしいが、モロに体感できた。
911の強烈なリアのトラクションや、ウチのビートのような「モロ、リア荷重」では決してなく、あくまでフロントミッドシップとしての重心位置だが、きちんとリアのトラクションを感じることができるのも好ましい。
エンジンルームを目視している分には、S2000やRX-8と較べて、「フロントミッドって言えるのか?」と思ってしまうが、乗ってみると、フロントミッドっぽいフィーリングだ。
この部分は、設計からしてイケてるんだろうが、非常に丁寧に作りこまれた感じで、変な演出もなく、本当に素直な動き、気持ちの良いコーナリングをする。
タイヤはいつものRE050(←私は苦手)ではなく、どういうワケか、ミシュランのプライマシーHP 215/45R17。
これも、これ見よがしなハイグリップラジアルのフィーリングじゃなく、ナチュラル指向っぽい。
自然なフィーリングで、かつ、キャパもある感じで、イケてるんじゃないかと思う。
●総評
エンジンに「心の琴線に触れる何か」がなかったのは残念。
頑張ってるのは伝わり好ましいのだが・・・・。スポーツエンジンは音だけじゃないと思うので。
でも、低重心と前後重量バランス、そこそこの軽量・・・・による素直なコーナリングがこのクルマの大きな価値だと思う。
エンジンの吸排気だとか、タイヤだとか、車高調だとか・・・・は後からどうにでもできるが、レイアウトは流石にどうしようもないので。
ベース車としては可能性、面白みを感じる。
価格も競合と較べてずっとリーズナブルだと思う。
ディーラーさん、ありがとうございました。
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