
ハイブリッド技術ネタ好き、ホンダ好き・・・・としてだけではないのだが、いろいろ義務感もあって、i-MMD(2モーターのホンダの新ハイブリッド)搭載のアコード・ハイブリッド(2013.06.20発売)の試乗に行ってきた。
朝からル・マンのストリーミングを流しながら注力していた、重たい仕事をひとつ片付けたら、もう17時過ぎで、ちょうどル・マンの日本語放送が再開されたところだったので、どうしようか迷ったのだが、やっぱり、旬なウチに乗っておかないと・・・と。
アコードは歴代好きなのだが、モデルチェンジの度にガラリと趣向を変えてくるなあ・・・。
(参考)
ブログエントリ:
【試乗】Honda Accord Euro R (CL7)
ブログエントリ:
【試乗】Honda Accord (CU2)
■Honda Accord Hybrid EX (CR6)
●エクステリア
これはこれで完成度の高いデザインだと思うし、特に顔にはホンダらしさも感じるのだが、
先々代(CL7)、
先代 (CU2) の「アコードならでは」な個性は薄まって、凡庸な高級セダンのデザインになったと個人的には思う。
先々代(CL7)、
先代 (CU2) はそれぞれ大好きだと思えるデザインで、特にCU2のワゴンは世界のDセグワゴンの中でも一番カッコイイと思っていただけに、個人的には今回のアコードのデザインは少し残念だ。
(しかも、今回はワゴンはリリースされないらしい・・・)
地味だ。ツマンナイ。
地味だったレジェンドが売れずに消えていったのと同じ目に遭わなければ良いが・・・・。
やたらと長いホイールベースは、福MXさんにご教示頂いたように、中国市場でのニーズなのかな?
特にリアビューは退屈だなあ。
カムリとあまり変わらない。
ただし、ここんところ新型車のセダン評の度に
「このクルマも中国市場を意識したデザイン」
「エッジの効いた流線型」
「流線型だケド、デブじゃない」
を繰り返し発言してきたが(フーガ、
BMW5、アテンザ、ソナタ、パサート、
Lexus GSなど)、このCR6アコードはその「ソナタ系・中国市場向けデザイン」に迎合していないのは個人的に好ましい。
北米市場、中国市場で、カムリ、アコード、ティアナが「3大売れてるDセグセダン」で、そのシェアを急激に
ヒュンダイ・ソナタ、
起亜 K5 オプティマに食われていっている・・・・というニュースをちょくちょく目にするが、カムリ、アコード、ティアナの3車種に限って、中国市場に迎合したデザインじゃないのはなんだか意外。
ただ、この3車種が似たようなデザインに収束していっているのが、なんか残念でキモい。
日本メーカはデザイナーの個性、CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)の発言権が弱く、「役員様」の保守的な決定が支配的な背景が浮き彫りにされている感アリ。
グリルノーズの「H」エンブレムがやたらめったらデカいのを、営業さんにツッコんだところ、
「ACC」:アダプティブ・クルーズ・コントロール
「CMBS」:衝突軽減ブレーキ(※何の略称かカタログに書いてない)
用のミリ波レーダーがこのエンブレムに仕込んである・・・とご説明頂いた。
●インテリア
ホンダ車のインテリアは総じて、幼稚で戦隊物臭いのだが、アコードは歴代センス良く上質だと思う。
新型CR6もその路線は受け継いでいるが、若干ゴテゴテしてきた感じ。
このあたりはAudi A4なんかも同じ印象(モデルチェンジの度に少しずつインテリアがジジ臭くなっていってる)。
うん、でも、ホンダ車のステアリングホイールとしては、イケてる方だ。
多機能な割にブサイクじゃないし、他車種のように下手な樹脂の使い方で安っぽくしたりしていない。
ちょっとビックリするのはペダルの安っぽさ。
インプレッサですらこれよりずっと高級感のあるペダルなのだが。
アコード、高級車になりたいワケとちゃうの???
左足ブレーキは自然にできるレイアウト。
●パワートレイン
エンジン諸元
エンジン型式: LFA-MF8
最高出力: 143[ps](105[kW])/6200[rpm]
最大トルク: 16.8[kg・m](165[N・m])/3500~6000[rpm]
種類: 直4
総排気量: 1993cc
ボアXストローク: 81.0mm×96.7mm
圧縮比: 13
燃料供給: PFI
過給機: なし
モータ諸元
モーター型式: MF8
電源電圧: 700[V]
モーター最高出力: 169[ps](124[kW])@3857~8000[rpm]
モーター最大トルク: 31.3[kg・m](397[N・m])@0~3857[rpm]
※出力・トルク値は先代と同じ
ハイブリッドだから「エンジンルーム」ではなく「パワートレインルーム」と呼ぶべきなんだろうか?
レクサスとかBMWなんかはエンジンルーム全部がカバーで覆われていて、ほとんどメカが見えないが、ホンダは堂々と見せて(魅せて)いるのが個人的には好感度大。
このアコードから登場した2モーターを使う新方式のハイブリッドシステム「i-MMD」!
エンジンヘッドの右にインバータがあるのが見える。
前方排気で、触媒の右側に、i-MMDのキモとなるギアボックスがチラ見できる。
↑「人とくるまのテクノロジー展2013」で撮影したi-MMDのカットモデル。
参考ブログエントリ: 「
【JSAE2013】人とくるまのテクノロジー展2013 Honda i-MMD」
に、他にもi-MMDのカットモデル写真やパネル写真を掲載しているので、ご興味ある方はご覧くださいまし。
で、i-MMD。
営業マンの話をどこまで信頼して良いのかはわからないが、「EV走行主体」「エンジンは発電重視」と言ってた。
アトキンソンサイクルの2L NAを一番効率の良い回転数で運転して発電し、レンジエクステンダーEV的にモータ駆動する。
で、必要なときは「モータアシスト」ではなく「エンジンアシスト」という思想だとのこと。
IMA(←インサイトとかCR-Zのアレ)は「エンジン主体」「モータはあくまでアシスト」と言ってたので、完全に逆の思想。
実際、リチウムイオン電池の充電量がそれなりだと、EV走行だった。
二代目レクサスGS450hではワザワザ「EV走行モード」にしても、すぐに「アクセル踏み過ぎ」という失礼なメッセージとともにEV走行モードが解除されたが、超アコードでは、ガツンとアクセル踏んで加速したりしなければ、60km/hまでEV走行のみでイケた。
無音。
スムース。
良く出来てる。
低速時からガツンと踏むと、流石にエンジン:165[N・m]とモータ:397[N・m](!)なので、それなりにガツンと加速した。
・・・が、レクサスGS450hのような、エゲつない加速はしない。
ま、そもそもエンジンのクラスなんかも違うから当たり前なのだが、加速時に泣ける何かがないのはFFだから・・・というのもある。
GSの場合はとにかく「後ろ足で蹴飛ばしてます」の演出が素晴らしいので。
ちなみに、ある程度の速度が出ているところからの中間加速は、なんかラグがあってモッサリしていた。
タコメータがないので、実際のところがわからんが、吹け上がらない。
それまでが無音だっただけに、加速時に急に「グオーン」とエンジン音がやたらめったらデカい音で鳴る。
酷く安い雑味ではないが、所詮直4の音で、決して美音ではない。
で、デカい音が鳴る割に、加速しない。
モータは3857[rpm]までが定トルクでそもそも高回転用途ではないし、エンジンもかなりロングストロークで高回転型とは思えない(そもそも発電用途がメインならなおさら)。
・・・そういう意味で、このクルマは、完全に「エコカー」であり、定回転域で極力EVモードで走り、その無音っぷりとスムースさを楽しむクルマなのだ。
高回転がどうだとか、エンジンの美音がどうだとか、そういう価値観はもう古いのだろう。
それが高級セダンでも。
多気筒とか、大排気量とか、そういう記号性も不要なんだろう。
なんかホンダ車評のたびに同じことを書いている気がするが、昔からのホンダ車ファンで、古い価値観を持つ私としては高回転を捨ててしまったホンダにはあまり魅力を感じることができない。
ビートを、9000rpm以上回せるE07Aを大事に乗り続けよう。
ただ、i-MMDは「EV主体のハイブリッド」としては、良くできていると思う。
IMAはイマイチだと思う点も多いが、i-MMDはオススメ。
営業マンはトルコンATだと言ってたケド、i-MMDにはトルコン入ってないよね?たぶん。クラッチでエンジンとモータを使い分けてるし。
少なくともトルコン臭さは運転していて全く感じなかったし、好印象。
※もっとも、トルコン嫌いの私だが、
先代 (CU2) アコードのトルコンATは国産トルコンATとしては最もマシなフィーリングだった。
●ボディとか足回りとかハンドリングとか
やたらと乗り心地が良かった。
ソフトだった。
先代 (CU2) アコードが、BMWライクな「ドシッ」とした剛性感を強調したボディと硬めだけどハーシュネスはいなしてくれる素敵な足回り、重めのガッシリしたステアリング感だったのに対し、新型CR6ではガラリと趣向を変えてきた。
とにかくソフト。ステアリング(EPSの味付け)も軽い。
営業マンを横に乗せての試乗なので、ガツンとブレーキングしてみたりとか、大きくロールさせてみることはできなかったが(残念)、ただ、そのソフトさは「非常に上質」な印象を受けた。
レクサスLSやクラウンのような、悪酔いする船のようなフワフワ感ではなく、フラットライドで、絹のようなきめ細かいテイスト。
フラットライド。
ある意味、クオリティ高すぎて無味無臭。
でも、無味無臭でも、
W204メルセデス Cクラスの無味無臭っぷりともちょっと違う気がする。(とても丁寧に作られている感じとキメ細かさは共通するが)
シトロエンの上位車種なんかに近いテイストなのか?
キメ細かくソフトな足回りなので、ボディからのアピールはやや希薄だが、それでもちゃんと剛性感は伝わってきた。
私は
先代 (CU2) のようなドイツ車的なテイストが好きだし、
先々代(CL7)のようなスポーツテイストは更に好きだが、「高級セダン」としては、コレはコレで、素晴らしいと思えた。
ただ、モデルチェンジの度に方向性をガラリと変えてきているので、
「ホンダらしさって何だろう?」
「迷走?試行錯誤?」
という印象も受ける。
もっとも、前進し続けることも大事だと思うので、ホンダはこのクルマを造り上げたことを誇りに思って良いと思う。
で、売れなかったら、「やっぱりホンダに求められているのはこれではなかったのだ・・・」とガッカリすれば良いのではないかと思う。(売れるとイイなあ・・・)
ただ、大きな問題点が一つ。
信号で右折するとき、派手に「意図しない動き」をした。
かなり露骨に。
比較的鋭角な曲がり方だったし、中央分離帯のある交差点だったので、VSA(ABS+TCS+横滑り防止装置)が働いたのかもしれない。
が、唐突で露骨過ぎた。
むしろ焦って、変なステアリング操作をしそうになった。
たった4回の左折と2回の右折しかない試乗のうち、1回の右折でこの問題の挙動が生じたので、もっと長時間乗ったら、きっと幾度も経験するんだろう。
これは「煮詰められていない電子制御」の弊害臭い。リコール対象か?
前述のミリ波レーダーによるセンシングを用いた
「ACC」:アダプティブ・クルーズ・コントロール
「CMBS」:衝突軽減ブレーキ(※何の略称かカタログに書いてない)
が働いたのであれば、警告が表示されるそうなので、どうもそっちではなさそうだ。
Dラーさん、営業マンさん、ありがとうございました。
●試乗記関連目次はこちら