
ブログエントリ: 「
【試乗】Suzuki ALTO TURBO RS (HA36S) 前編」 の続き。
「走ってみて」編。
■Suzuki ALTO TURBO RS (HA36S) 後編
●エンジン+ドライブトレイン
エンジン型式:R06A型
種類: 直列3気筒インタークーラーターボ
弁機構: DOHC12バルブVVT
ボア×ストローク: 64.0×68.2
総排気量: 658[cc]
圧縮比: 9.1
燃料供給装置: EPI(電子制御燃料噴射装置)
最高出力: 47[kW](64[ps])@6000[rpm]
最大トルク: 98[Nm](10.0[kg・m])@3000[rpm]
使用燃料: 無鉛レギュラーガソリン
↑コレも、S660と同じく、真ん中のデカいダクトはインタークーラか何かの熱交換器の冷却用で、吸気ダクトは左。
最近のクルマのエンジンにしては吸気ダクト形状はコンベンショナル。
↑エンジン手前、エンジンとバンパーの間の下方にターボチャージャーが見える。
コレもS660と同じく
「レギュラーガソリン」なのがポイントだな。
ハイオクにすればノッキングマージンは十分にあるので、ブーストアップ余地は十分なのだろう。
↑ECUは三菱電機。
エンジンはいつものスズキのターボ。
線は細いが、切れ味は鋭い感じで、ロングストロークなのに、上までストレスなく速く回る。
S660のような低中速での太いトルクの演出はナイが、スズキらしくOK。
「演出がナイ」というより、パワーバンド自体、狭い気がする。4500か5000rpmより上をキープしないと速さを保てない気がする。
コレはコレで、操る楽しさに繋がるので個人的にはアリだが(※ただし、後述するAGSとの関係が問題になる)。
音は「ジャー」系の直3ターボの線の細い芯のない雑味。
少なくともノーマルの排気系だとプアな音なので、マフラー交換は必須。
・・・というか、最近の軽ターボ、どれもこれも、本当に排気管径、細いなあ・・・。
エンジンのレスポンスが良いだけに、AMT(あるいは「ロボタイズドMT」「セミオートマ」)の
「AGS」に対する慣れが必要。
すぐにエンジン回転数がレッドゾーンに到達するので、きちんとタイミングを合わせてAGSをシフトアップしないといけないのだが、
操作に慣れずにもたもたしていると、自動ではシフトアップしてくれず、レブリミット部で回転数が頭打ちした状態でホールドされる。
「自動でシフトアップされない」のは「余計なことされない」ので好ましいと思えるし、
レブってブローせずに頭打ちしてくれる・・・そして、燃料カット的なフェールセーフで急にガツンとロックしたりしないのは、「賢い」と思うし、好ましいと思う。
(個人的には「燃料カット」という制御は、いきなりガツンとロックしたような状態になるので、危ないと思うし、エンジンにも優しくないと思うので、アルトのコレは本当に好ましい)
でも、じゃあ、AGS自体の出来が良いか?と言われると微妙な感じ。
初期のセレスピード(アルファ147とか)のようなシフトアップ時の長いトルク切れはナイのだが、やはり
DCT(
VW・AudiのDSG・Sトロニック、
ポルシェのPDK、
三菱のツインクラッチSST、
BMWのM-DCTなどなど。リコールまみれとなった
ホンダのi-DCDはパドルで操作したことがナイので評価対象から外す)
と較べるとシフトチェンジがキレイではナイ。
だからと言って、非DCT・・・つまり、シングルクラッチのAMTが機構としてダメなのか?というと、個人的にはDCTのクラッチのクロスフェード的な使い方による、クラッチ寿命と交換クラッチの価格などを連想してしまい、なんだかなあ・・・と考えてしまうので、シングルクラッチはシングルクラッチでわかって使えばむしろアリなのでは?・・・と昔から思っている。
コスト面から考えても、シングルクラッチのAMTの熟成、普及が進むと良いな、と考えている。
DCTがLuk(
ホンダ・i-DCD)、ゲトラグ(三菱・ツインクラッチSST)など
欧州サプライヤをアテにしないと成り立たない観点からも、
国産のAMT技術が前進すると良いな、と思う(日本はCVT偏重だからAMT/DCTが遅れてる)。
以前、社用車で使っていた三菱ふそう・キャンターのDuonicのDCTのクラッチASSYはEXEDY、クラッチ板そのものはEXEDY子会社のダイナックス製だったが、コレの出来は酷かった。
頑張れニッポン!
シフトダウンは、
シフトダウン後にレブってしまうような回転数だと操作しても「ピピピピ」とエラー音が出て、シフトダウン出来ない。コレもまあ「賢い」んだろう。
前述のように、
エンジンのレスポンスが良く、
でもパワーバンドが狭いので、結構頻繁にAGSのシフトアップ・シフトダウンの操作が必要となる。
なので、
タコメータはもっと見やすい方が良いし、シフトインジケータなどがダッシュ上もしくはメータフード上に欲しいところ。
●ボディとか足回りとか
ワインディングのタイトなコーナーで、
常にアンダーが出る(
「自在にアンダーを出せる」とも表現できる)が、
それはそれと理解して運転すれば扱い難いワケではナイ。
ただ、
あまりにフロントタイヤのグリップレベルがプアなので、履いているタイヤはエコタイヤか何かかと思って乗っていたのだが、
試乗を終えて確認したらBS RE050Aだった。
RE050A、以前乗っていたレガシィB4(BL5A)の標準タイヤとして使っていたときは、グリップ→スライド、スライド→グリップの以降が極めて唐突で、特にスライド→グリップが唐突過ぎるのが問題で、グリップ回復時にステアリングの向きにクルマが飛んでいく傾向にあった。
その経験から、BS(特にRE050)がとても苦手になったのだが、
今回、アルト・ターボRSを試乗してみて、RE-050でたくさんアンダーステアを誘発しても、そういう唐突さは感じなかった。
アンダーステアだとか何だとかよりも、とにかく、
座面・座高・クルマの重心が高いことが酷く怖かった。
コーナーのたびに横転しそうな感覚で「怖ぇ~っ!」と。
コレは
昔、ハイゼットで箕面の峠で横転したトラウマなのか、あるいは現在、世界でも有数の低重心なビートに乗っているからなのか、あるいは誰が乗ってもこの重心高は怖いのか?
ロールがそこそこ大きいこと、シートのホールド性が低いのも怖い要因なんだろうなあ・・・。
いろんな価値観があるので、アルトでサーキットに行くのもステキだと思うが、私はこの重心高が怖すぎるので、サーキット車、スポーツ走行用途車には選ぶことはできないなあ・・。
ボディの剛性「感」は高かった。
昔のスズキのボディは酷かったが、スイフト/SX4以降、本当に改善されたと思う。
↑ホイール、個人的にはダサいと思う。
強めにブレーキングすると、モロに前荷重になるが、ボディのヨレてる感はなく、剛体としてのボディが一塊で、前にグッと荷重がかかる感覚。
(クラウンなんかの船酔いするようなピッチングではなく、
良い意味で「前荷重」を与えることのできるダイブ)
加速時は、若干リアが沈むが、ブレーキング時ほどの沈み量はない。
ここからの私の推察なのだが、伸び側や縮み側の減衰がどうとかじゃなく、
・もちろん制動Gの方が加速Gより大きいワケだが、それは置いておいて・・・
・前足も後ろ足もバネレートは低い
・フロントヘビー
↓
・結果、制動時のダイブは大きいが、加速時のリア沈みは小さい
というメカニズム?
いずれにしても、加速時にリア荷重になってもFF車にメリットはナイし、
アンダーな足なのでブレーキングでシッカリと前荷重を稼げるのは良いと思う。
ただ、
スポーツドライビングにはもっとシッカリとした足が欲しいところだが・・・
・・・でも、
このKYBのバネでもアンダーが出ているワケなので、RE050Aに対してより踏ん張る足をもってきても、アンダーが強くなるだけか・・・。
670kgという、最近の軽自動車としては驚異的な軽さが話題になっているが、
重心が高すぎて、個人的には軽さのメリットを全く感じることができなかった。
せっかく軽くても、重心高のせいで、ピッチングもロールもデカい。
特に前述のように、コーナリング時の「転けそう」な感じは恐怖。
私は「軽量化ヲタ」だが、
「軽い」よりも大事なことがあることを「体感」としてこのアルト・ターボRSに教えてもらえた。
やはり、「低重心化の鬼」クリスチャン・ロリオーの思想が大事。
●まとめ
「1秒足らず」で好きになれなかったアルト・ターボRSだが、ワインディングをシッカリ走ってみても、個人的には響くモノがなかった。
このベース車両が、キャドカーズさんのフルチューンで、どう化けるかが楽しみ。
まずはこの仕様でセントラルを走らせてみるとのこと(怖いなあ・・・)
キャドカーズさん、貴重な試乗機会を頂き、誠にありがとうございましたm(u_u)m
●試乗記関連目次はこちら
Posted at 2015/04/26 21:06:19 | |
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