■auto sport(オートスポーツ) 2014/1/17号(No.1372)
出版:三栄書房 (2014/03)
これもプレシーズン号。
もうシーズン始まっちゃったが。。。
●最新ドライビングテクニック特集
このメイン特集に魅かれて購入。
サブタイトルに
"F1/スーパーGT/WRC/D1・・・・・・ マテリアルが進化すれば運転も変わる
トップドライバーの「仕事」を解剖する"
とある。
REV SPEED誌のマンネリ・ドラテク特集と違って、新しい視点が多くて楽しい。
バックナンバーでは
「auto sport(オートスポーツ) 2013/2/15号(No.1349) 」
の
特集「スポーツドライビング」がオススメ。
・マクラーレン・今井弘エンジニアが語るF1ドライバーの凄味 検証:ジェンソン・バトン 『反応型×記憶型』の相違点
今井氏、autosport誌への登場頻度多い?
今井氏は
"単にアンダーが好きとかオーバーが好きとかということではうまく説明できない。違うのはむしろこういうことなんじゃないでしょうか?"
とはじめ、以下のように続ける。
"マシンがある挙動を示した際、それに対してドライバーは無意識に反応します。"(そして対処)
その対処の結果としてのクルマの挙動の変化に対して、また新たに反応・・・・を繰り返していくのが今井氏の言うところの
『反応タイプ』。
これに対して
"一方で、前の周に何が起こったか。あるいは前日のセッション、極端には1年前の同じサーキットで何が起こったかをしっかり記憶していて『このコーナーではこういう挙動が起きるはずだから、こういう動作をしよう』、そういう動きもあるんですね。記憶を基に行動を起こすパターンです"
と続け、これを
『記憶タイプ』と呼んでいる。
極めて高い次元の話だが、
『記憶タイプ』の典型がバトンで、
『反応タイプ』がハミルトンだそうな。
なんか妙に納得。
(そして、昨シーズン、マクラーレンに在籍したペレスが全く話題に出てこない件。。。)
ハミルトンもドライバーとしての記憶力は「F1ドライバーのなかでも並外れている」そうだが、バトンのそれが異常なレベルだそうな。
だからタイムが安定する、と。
この記事を読んでいて、
レガシィでやっていたECUのことをすぐに連想した。
ECUのノッキング対策としての点火タイミングリタードにも
『反応型』(=Feedback)と、
『記憶タイプ』(=学習によるフィードフォワード=Fine Learning)が存在したので。
ECUもドライバーと同じく、どちらか片方で成り立っているワケではなく、
1) まず『反応型』=フィードバック
2) フィードバックの積み重ねを『記憶』
3) 『記憶』を元にフィードフォワード制御し、フィードバック制御に対して不十分な挙動を『反応型』=フィードバックでサポート
・・・の繰り返しなので。
今井氏はエンジニアなので、こういうアルゴリズムを人間に当てはめて考えているのか、人間のこういう機能をアルゴリズム化したのが現代のECUなのか・・・・。
私は半年に1回とか数ヶ月に1回とかしかサーキットに行けないし、その少ない走行会でも何10LAPもできるワケではないので、
『反応型』『記憶型』のどちらの資質も重要なのだが、残念ながら、どちらも人よりかなり劣っていると思う。
そもそも、走り・タイムに一貫性がないのがまずは問題。。。
・トシ新井のWRC最新ドライビング「FF走法」解説 レスマージン、ハイリターン。
ここ数年間、WRCがスッカリ退屈になって観なくなってシマッタのだが・・・
新井敏弘選手が言うには、
ローブ、オジェ、(最近話題の)ティエリー・ヌービルの3名は、FF的なドライビングを実践しているとのこと。
"コーナーであまり後輪を滑らさず、前輪をイン側に少し切り込んで旋回するスタイルを好む"
とのこと。
対照的にヒルボネン、オストベルグなど北欧系のドライバーはドリフト派らしい。
"ここ数年の結果から判断すると、軍配はフランス&ベルギー連合のFF式ドライビングに上がる"
とのこと。フィンランド人ドライバーなどもFF式への転向を計っているそうだが、なかかうまくいかないらしい。
「なぜFF型が有利か」は、引用すると長くなるので省略。本誌を読んでください。
本誌には以下のようには表現されていないが、前述のマクラーレン今井エンジニアの話とリンクするな・・・と個人的には思った。
FF型:
『記憶型』というか
フィードフォワード型。
"(新井氏)完璧なスピードコントロールと、それを可能とする高精度なペースノートが必要"
ドリフト型:
『反応型』。
フィードバックタイプ。危機回避能力に優れるが、WRCでは同じコースをグルグル回るワケではないので・・・・
という印象。
私はFFが苦手(それでもここ5年間ほどでかなり慣れた)なのだが、最近のラリー事情がそんなことになっていたのか・・・・と。
コリン・マクレーの豪快なドリフトに熱狂した者としては寂しいな。
・谷口と片岡が語る"ドリフトとGTカードライビングの関係" 「さほど、ありません」
D1固有のドラテク、アプローチと、GTとの無関係っぷりについて語られているのだが、一点だけ。
"クラッチを揉む"
という表現があるのだな。
要はクラッチ蹴りを半クラでやるようなテクニック。
"クラッチを繋いだり切ったりを調節すること。ドリフトではクラッチもひとつのアクセルと考えられていて、アクセルオンのままクラッチを調節することで寄せたり離れたりをコントロールしている"
"特に追走ではアクセルでコントロールすると、姿勢が乱れたり失速したりするからクラッチ側でもやります"
とのこと。
へー、知らなかった。
ドリフトは基本的にタイヤやバンパー、フェンダーをはじめ、いろんな部品を「消耗」させる競技だが、クラッチも対象なのね。。。
・躍動するゲーマーレーサー バーチャルとリアルの同期ポイント
ゲーマー(グランツーリスモ)出身のレーシングドライバーについての記事。
先日、
D.D.R. AKIBA1号店でシミュレータを初体験したところなので、タイムリーな記事。
インタビュー内に
"横Gを感じることはできないけど"
とあった。
私も
D.D.R. AKIBA1号店のシミュレータ体験記で
"「お尻でリアのグリップを感じる」ことは「私には」できなかった"
と書いているが、シミュレータのメカで横Gはお金をかければ「ある程度までは」横Gが発生しているような再現はできると思うのだが、タイヤのグリップ、タレなんかの再現が難しいと思うんだよなあ。
レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、メルセデスなんかのシミュレータってどうなんだろうね。
・F1科学分析クリニック「フォーミュラ・メディスン」代表 リカルド・チェッカレリ医師が語る"ドライビングと心拍数" 本当のあなたは"あと21秒速い"はず
タイトルの
"21秒"はラップタイムじゃなく、F1におけるレースディスタンスのトータルね。(紛らわしいタイトルで少し詐欺っぽいと思った)
心拍数の話はCAPETAなんかにも登場したが、本記事で結構詳細に書かれている。
あとは大脳の状態とラップタイムの関係とか。
===
自分に役立つ・役立たないとか、F1観戦に役立つ・役立たない・・・・はともかくとして、こういうソースを読む機会自体がなかなか得られないので、たまにこういう特集を組んでくれる auto sportは貴重だと思える。
●自動車 書籍レビュー関連目次はこちら
Posted at 2014/03/20 12:34:40 | |
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