
少し前のネタで、旧車乗りやMTドライビングに精通した人には当たり前の話かもしれないんですが・・・・・
スバルのECUをイジっている人以外には馴染みのない言葉で「IAM(Advanced Multipler)」というパラメータが存在する。
IAMはノッキングを検出すると値が下がっていく。
IAMが下がるとそれに伴い点火時期の進角も少なくなり、結果Fail Safeとなる仕組み。
IAMがあるスレッショルドを露骨に下回ると、Wastegate Dutyも0となり、ブースト圧が0.5以上に上がらなくなったりもする。
以前にも書いたことがあるが、IAMが降下するタイミングは実走ログを見ると、おおよそベタ踏み時のときではなく、シフトアップのときだった。
図のログのように、シフトアップ時にアクセルを戻して(Idle Switch == 1)、クラッチを切る(Clutch Switch == 1)と、その間燃料カットによりA/Fが20.33(ログ上限値なので実際にはもっと大きい)という超リーン状態となる。
ここで、クラッチを繋ぎながらスロットルを開くと、図のログの6行目のように
・回転数:5186[rpm]
・負荷:2.29[g/rev](高い!)
・ブースト圧:0.9[bar]
という高負荷にも関わらず、
・燃調:15.39[AFR](リーン!)
という状態になってしまう。
で、結果としてノッキングを生じIAMの低下を招いてしまう。
この現象は、私の経験からは、より負荷・ブーストの高い3→4速、4→5速で発生しやすく、ストリートではIAM降下が起こらなくても高速道路走行で発生したりしていた。
当時は、アクセル変化量に対して燃料を足してやる「Throttle Tip-in Enrichment」を増量してみたり、よくIAM降下が生じている4800~5600[rpm]付近の「Open Loop Fueling」をリッチ化してみたり、点火時期をノーマルよりも遅角化させたりしてみていた。
しかし、症状が発生するのはベタ踏みによる高負荷ではなく、シフトアップ時に一回燃料カットされるのが原因なので、なかなか解決に至らない。4800~5600[rpm]は「IAMが生じやすい回転数」ではなく、「7000[rpm]台まで回してシフトアップしたときの回転数」なのだ。
で、ドライビングスタイルを見直すことにした。
シフトアップ時のスロットルOFF、クラッチを繋いでからのスロットルONが速すぎるのか・・・・と、アクセルコントロールをいろいろと試してみていた。
はじめのうちは手探りなので、ギクシャクとした操作となってしまい、大きなシフトショックを発生させてしまったり・・・。
そんな折、
「そういえば、シフトアップ時も本当はダブルクラッチした方がよいって何かで読んだなあ・・・」
と思い出した。
シフトダウン時は、昔からダブルクラッチをきちんと使っていた。ヒール・アンド・トゥの際もダブルクラッチを行い、ニュートラルにクラッチを繋いだ状態で空吹かしを入れていた。
が、シフトアップ時のクラッチ操作は一回で済ましていた。
確かにそれでは、クラッチを切った状態でエンジン回転数は下がっても、シンクロの回転数は下がらない。
で、シフトアップ時もダブルクラッチを使うようにしてみた。
2→3速へのシフトアップ時には、
2速
↓
スロットル閉
↓
クラッチ切断
↓
シフトをニュートラルへ
↓
クラッチ接続(半クラは使わない)
↓
回転数降下を待つ(短時間。もちろん空吹かしは入れない)
↓
クラッチ切断
↓
シフトを3速へ
↓
クラッチ接続(半クラは使わない)
↓
スロットル開
という操作を行うわけだ。
操作手順は増えるが、クラッチの接続時に半クラを使わずに「スパンッ」と接続してもシフトショックはなく、シフトアップは自然な感じとなった!
もちろん、減速比が離れているギアへのシフトアップ時はニュートラル状態での待ち時間は長くとる。
シフトチェンジ前のスロットル開度が大きかった場合も同様。
そうでないときは、「スパン、スパン」と素早い動作での切り替えとなる。
はじめのうちは待ち時間の読み違いもあったが、2週間ぐらい実践してたら、だいたい考えなくとも狙い通りの気持ちのよいシフトアップができるようになった。
で、肝心のIAM問題。
シフトアップ時のダブルクラッチを徹底するようになってから、全く降下することがなくなった!!!
「ダブルクラッチは、シンクロ無き時代の遺物だが、シンクロをいたわるためには現在もするに越したことはない」
と一部で言われたり、
「現代のクルマはシンクロが優秀かつ丈夫だからそんなもん必要ない」
と言われたり・・・・で、いろんな考え方があるみたいだが、少なくともレガシィの燃調アルゴリズムにはシフトアップ時のダブルクラッチを行うことが有効なようだ。
まさか、ECUセッティングと実走ログから、そんなことに気づき、10年以上続けていたドライビングを変えることになるとは思わなかった。
「ヒール・アンド・トゥ時の素早いダブルクラッチは腕の見せ所だけどシフトアップは初心者でもできるモノ」だと思っていた自分が恥ずかしい。
冒頭にも書いたように、旧車乗りやMT運転の達人には「10年も乗ってて知らなかったのか!」とツッコミが入りそうですが・・・・^_^;
以前に、Alfa GTのセレスピードを試乗したときに、シフトアップ時の異様に長い間に
「なんて不出来なんだ!!」
とツッコミまくったもんだった(DSG試乗より後だったし)。
しかし実際には、シフトアップ時の回転合わせにはそれ相応の時間がかかるので、仕方のないものだ・・・ということを、今さらながらに実感。
う~ん、クルマって奥が深い。
●レガシィB4(BL5A)のECUチューン関連目次はこちら
●レガシィB4(BL5A) 関連目次はこちら
Posted at 2007/12/30 13:10:30 | |
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