
友人に、湾岸ミッドナイトの作者、
楠みちはるの「おまえの話はクルマばかり。」を借りて読んでいる。
「楠先生」という表現もあるが、「先生」と呼ばれる職業(教師、医者、建築士、弁護士、代議士etc...)には、どうも勘違いした人が多いので、「先生」と呼ぶのはやめ。だいたい、40冊も「湾岸」を購入している私は楠にとって「上顧客」以外の何物でもないわけで・・・
これは、「ミスターマガジン」(1991.05~1994.09)、「ヤンマガ」(2003.10~)でのクルマのインプレ・批評連載をまとめたものである。
個人的にはめちゃくちゃ面白い。
基本的に、楠のかなり偏った趣味に拠るところが大きいので、車種もポルシェ、BMW、フェラーリが繰返し登場し、その合間を縫うようにメルセデス、NSX、いすゞなどのレビューがちりばめられている。
湾岸ミッドナイトを読んでいても、楠が
・ニッサンとポルシェとRX-7が好き
・徹底したターボ偏重
・スバルは嫌い
なのは伝わってくるのだが、「おまえの話はクルマばかり。」ではそこまで偏ってはいないものの、楠の好みのみで展開されるクルマ批評は痛快である。
堂々と各クルマで公道240や250[km/h]を叩き出したことが記されているが、問題ないんだろうか???
「湾岸ミッドナイト」のZ32のマコト編で、富永が山下に語る930ターボの話・・・
S2000のユウジ編での山本の長い長いトーク・・・
それらが、結局、本書でも楠の言葉で綴られている。
特に後半のヤンマガ連載「となりで乗るクルマ」は、インタビュワーの「メルセデスまり子」とのやりとりが、「湾岸」の城島とれいなのヤリトリのようで、読んでいて楽しい。
テンポ良く、「で、このクルマは?」とツッコミたくなるほど脱線も多い。
スバル嫌いだと思っていた楠が、レガシィ 3.0R(BLE・・・6気筒水平対向の6MTのヤツね)を妙に評価していたのが意外でちょっと嬉しかった。
私のB4の先日の修理時に配線ミスがあったことがわかったので、今日ディーラーで直してもらった際、「3.0って試乗車ある?」って聞いたけど、残念ながらなかった。
私は、週に2回ぐらいは書店にいかないと窒息死するほど本が好きである(週2で行くからといって、週2冊買ってるわけじゃない)。
雑誌は、そんときそんときの気分で
・Motor Fan illustrated(これは毎号欠かさず購入)
・Rosso
・Tipo
・ENGINE
・NAVI
・Motor Magazine
・CG
・CarMagazine
・AutoCar
・SUBARISM
・Club LEGACY
・af imp
・eS4
・Racing On
・WRC+
などを無節操に購入しているし、
・CarView
・WebCG
・DrivingFuture
・ホビダスオート
・MotorMagazine - MEDIALOG
などのサイトもよく見る。
が、インプレは基本的にスルー。
全く読まないわけじゃないけど、あんまし鵜呑みにしない。
本書でも「湾岸」でも楠が語っているように、雑誌には自動車メーカがスポンサーがついている以上、そのメーカのクルマの悪口は書けないし、「広報車」を借りてる以上、悪口を書けない・・・・・というのは、昔からわかりきってた話だから。
なので、私は雑誌を購入しても、ほとんど写真集扱い。写真眺めて、あとは技術系の記事や、レース結果の記事、歴史的な特集記事などしかあんまし読まない。
「おまえの話はクルマばかり。」では、かなり偏った主観で、いろんなクルマを斬っている。
スポンサー、広報車とインプレの関係をクドいほどネタにしながら。
クドいほどネタにしつつ、クルマによっては酷評しつつも、なんだかんだでやっぱしうまいフォローをしているあたりが見ていて微笑ましい。
で、総合結果としては面白い。
「自分の言葉」亡きクルマ評論家による当たり障りのないレビューと較べると、話の流れだけでも面白い。
難しい話だが、面白いのは主観中心のレビューなのだが、10代や20代前半のキッズがこういう主観中心の本を読んで、それをそのまま受け売りで自分の意見としてしまう怖さはある。
音楽誌では「Rockin' On」「BURRN!」といった影響力の強い雑誌で、低脳ライター達によるCDレビューを若年層が受け売りしてまうことで、評価すべき新人アーティストが酷評されたり、どうしようもない作品を作っている大物アーティストが絶賛されたり、見るに耐えない文化を見てきた。もう10年も前の話なので、最近の事情は知らないが・・・
そういう観点からは、「当たり障りないこと」「良いこと」しか書いていない自動車雑誌の一般的なレビューの方がよいのかもしれない。
多くの読者は、試乗することなく、雑誌のレビューでクルマを評価しているわけなので。
音楽誌では私はそういう意味で、「CDを売るために」発行されているタワーレコードのフリーペーパーであるbounce及びintoxicate(旧musee)を一番愛読した。どのCDに対しても基本的に良いことしか書かないので、ライターの評価が自分の先入観に影響することが少なかったからだ。(無料だし)
まあ、でも、楠の話は少々ジジ臭いので、若者がこの本を積極的に買うとも思えないか・・・。
反論もあるだろうが、徳大寺有恒の「間違いだらけのクルマ選び」がなんだかんだ言っても結局面白かったのは、評論家にしては珍しく徹底的なダメ出しが多かったからだろう。
なぜ徳大寺があんだけ大御所扱いされ、クルマを酷評しても自動車メーカによって抹殺されなかったのかは謎だ。ご存知の方、教えてください。
ただ、徳大寺のレビューは、「好き・嫌い」ではなく「良い・悪い」で語られていたところが私には評価できない。
明らかに「良い・悪い」で評価できるファクターもあるが、好みの問題で語るべきフィーリングなども「良い・悪い」という評価だったのが、上述の「Rockin' On」「BURRN!」の問題点と同様、自分の価値基準でクルマを見ることのできない多くの読者に先入観を植え付けていた点がどうも気に入らない。
それでも、徳大寺のレビューは結局、面白い方だと思う。
最近の評論家では、フェラーリの教祖、MJブロンディの記事(主にROSSO)が主観・偏見丸出しでちょっと面白い。
ただ、ナンボなんでも視野が狭すぎるのと、文章力が低く、ボキャブラが少ないので、5台程度のレビューで飽きてしまう。
「自分で運転したクルマしか最終的に評価しない」スタンスの今は、偏った主観レビューが読んでいて楽しい。
・・・・もっとも、私はかなり理系寄りな人間で、日本語とか文学とか弱いので、ツッコミどころがあればツッコんでくださいまし。
●自動車 書籍レビュー関連目次はこちら
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Posted at
2008/04/19 21:03:45