■Honda CR-Z (DAA-ZF1)
周りの助けもあり、GWの怒涛の忙しさが一段落したので、CR-Zの試乗に行ってきた。
昔CR-X(サイバー、EF)に乗っていた私にはやはりちょっぴり興味をもてるクルマなので。
CR-Zは「シー・アール・ゼット」だと思ってたけど、「シー・アール・ズィー」なんだってね。
●エクステリア
出来・不出来よりも、ひと目で「スポーツカー」と思えるデザインということ自体に好感がもてる。
写真で見たり、CR-Z単体で見ると、そんなにパッとしたもんでもないんだけども、ストリートで遭遇すると「オッ!」と声を出し、振り返って見ることができる。
フロントフェンダーのアールからヘッドライトへの流れは、オデッセイやシビック(FD2)なんかと酷似していて、近年のホンダのデザインの方向性が明快に表れていて気持ちが良い。
サイドビューは、フロントオーバーハングが長すぎて、とてもバランスが悪くブサイクだと思う(レガシィやインプレッサも)。
リアフェンダーのボリューム感のある面構成は結構好きだが、ライトウエイトスポーツというよりはZなど重量系スポーツっぽい演出かも。
重たそうに見せて、実際に重い。
リアビューは好き。
真後ろからは、初代インサイトに良く似ており、ストリートで遭遇すると、インサイトかCR-Zかで迷うところ。
サイバー系CR-Xとも良く似ていて、個人的にはグッとくる。
リアビューもコンセプトモデルの方がサイバーでカッコ良かったが、このあたりは仕方ないんだろう。
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CR-Zを退屈にしているのがボディ色だと思う。
いろんなディーラーの前を通ってみかけるCR-Zの展示車・試乗車の大半はシルバー系、グレー系の色。
せっかくのスポーツカーなのだから、赤とか青とか黄とかオレンジとか原色で攻めて欲しい。
実際、街で一度だけ遭遇した真っ赤(ミラノレッド=私のB4のリップスポイラーに使用している色)なCR-Zはとてもカッコ良かった。
この試乗車の「ブリリアントオレンジ・メタリック」はまあまあ好きだけど、どうせなら、もっと純然たるオレンジ(911GT3なんかにあるような)にして欲しいなあ。
ホワイトについても「プレミアムホワイト・パール」なんてパール系になっちゃってるんだけど、コンセプトカーの頃のような潔い白の方がカッコ良かったと思う。
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●インテリア
ホンダのインテリアは相変わらずな感じ。
毎回同じ感想だが、同じ未来的・宇宙的インテリアでは個人的には
シトロエンが圧倒的にカッコ良いと思う。
でも、出すモデル出すモデル、ずっとこれ系のデザインを続けているということは、ホンダはよほどこのデザインに自信をもっているのか、信念があるんだろう。
外野のつまらん意見でフェイスリフトの度にコロコロと顔を変えるスバルのデザインと違って、このあたりの頑固さはホンダならではで、そのスタンスには好感がもてる。
シートは可もなく不可もなく・・・だけども、座ってみると車内の狭さが良い感じで、スポーツセダンなどでは得られない「コックピット感」がちゃんとある。
ちなみに後部座席は、私のシートポジションだと足のスペースは皆無。前後席間距離はほぼ0mm。
●パワートレインルーム
ハイブリッドだから「エンジンルーム」と呼ぶより「パワートレインルーム」が的確かな?
IMAはエンジンと一体構造なので、パワートレインルームをのぞいてもあんまし良くわからない。
直4FFなので仕方がないが、パワートレインルームの見た目は凡庸。プロボックスあたりとかわらない。
S2000(AP1・2)や、RX-7、RX-8など、にエンジンルームを見ただけで感動できるのはやっぱりフロントミッド系FRの特権なのかな。
●運転してみて
試乗車は「α」のCVT仕様。
1.5L SOHC、直4、FF。1180[kg]。
インサイト同様、モータアシスト感はあんましなく、ガソリンエンジンのクルマのフィーリング。
インサイトよりはトルク感のある演出・・・というか実際にトルクがあるんだろう。
アクセルを踏みこむ瞬間は、モータアシストによるものなのか、クルマがグイッと前に出る。CVT車にはここでもたつくクルマが多いので、この点は良くできていると思うんだけど・・・・・・・その後が続かない。
アクセルをベタ踏みしても最初だけグイッと前に出るけどすぐに頭打ちする。伸びない。
モータがクランク軸直結になっているから、モータアシスト時にはOKでも、エンジンで高回転まで回したいときはイナーシャにしかなってないんだろうか?
実際、
かなり径のデカいモータ(ステーターの径はデカいけどローターはそうでもないらしい)だしなあ(L寸はかなり短い)。
ハイブリッド制御がどうなってるのかはわからないけど、モータの最大トルクは1000回転で発揮されている(78[Nm])ので、回転上昇とともに辛いのかもしれない。
ホンダ車の試乗レビューのたびに書いている気がするが、かつての「軽く回るホンダエンジン」「高回転型で、線は細いけど上に行くほど良いホンダエンジン」のフィーリングは最近の他車種と同様にCR-Zでも全く見られない。
ちょっと雑なフィーリングでシャープさがなく、上に伸びず苦しそうに回るホンダエンジンなのだ。
いっそ、もちょっと低慣性なモータを使い、エンジン主体のハイブリッドではなく、シリーズ方式(エンジンを発電のためのみに使い、駆動にはモータのみを使う)のハイブリッドにして、モータだけで走らせた方がかつてのホンダの特性には近いかもしれない。
音もなく、ストレスフリーに高回転まで回るスポーツカーもテクノでカッコ良いと思う。
CVTは、SPORTモードでもNORMALモードでも、良くできていて、自然なフィーリング。
ただし、パドルシフトを使った「マニュアルモード」(?)は個人的にはダメだった。切り換え時の挙動がなんか気持ち悪い。
もっともせっかくのCVT(無段階変速)にわざわざ段をつけてやる行為そのものがナンセンスだと思う。
ホンダは昔からトルコンATのマニュアルモードも不自然なので、このあたりは苦手なんじゃないかと思う。
乗り味は予想に反して、ドッシリとした重量感・剛性感のあるもので、「硬いけど往なす足」。
「硬い」と言っても、スプリングレートではなく減衰での味付けのようで、ピッチングやロールはそれなりに大きい。
インサイトの「軽くて硬い足」とは異なるテイストで、
CU2アコードなんかの方が近い。
ボディの剛性感といい、足の味付けといい、実家の初代Audi TTクーペなんかと良く似たテイスト。
「ライトウエイトスポーツ」な味付けでは全くないけど、個人的には好きなテイスト。
ただし、曲がらない。
車重に対して非力なためか、車重に対してスプリングレートが低いからか、加減速時、コーナリング時は1180[kg]よりもだいぶ重いクルマに思えた。
●まとめ
最近、サードパーティーからエアロや足回りパーツなんかが発売されているCR-Z。
個人的にはパワートレインのフィーリングが良くなかったので、チューニングしても果たしてスポーツカーとしてはどうなんだろ?・・・・とも考えてしまうのだが、モータを使ったものだけに、いずれはPCU(Power Control Unit)チューンなんかで容易にフィーリングを換えることができるようになるのかも。
営業の方が「ターゲットは若者じゃなく、子どもが巣立っていった実年層」と繰り返されていたけど、内装が子どもっぽいことをのぞけば、TTクーペやZ4、Z34なんかに乗っているオジサマ層向けのスペシャリティーカーとしてはアリなのかも。
なんにせよ、この時代に(見た目だけでも)スポーツ色の強いクーペをリリースしたこと自体に意味があると思う。
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