スバルの水平対向エンジンの最近の動向の覚書。
■EL15
水平対向4気筒NA
1498[cc]
ボア×ストローク: 77.7×79[mm]
DOHC
圧縮比: 10:1
81[kW]/6400[rpm]
144[Nm]/3200[rpm]
初めてのロングストローク仕様のボクサー。
個人的には旧モデル(EJ15)の方がフィーリングが良かった。
EJ15(GG2F)試乗記
EL15(GH2)試乗記
EL15が好きになれないので、同じくロングストロークのFB20(最新型)には期待半分、不安半分・・・
■EJ20
※写真はJUNのブースで展示されていたカットモデルなので、ノーマルEJ20ではない
(以下、EJ207=GRBインプレッサ)
水平対向4気筒ターボ
1994[cc]
ボア×ストローク: 92.0×75.0[mm]
DOHC
圧縮比: 8.0:1
227[kW]/6400[rpm]
422[Nm]/4400[rpm]
他社のいろんなエンジンと見比べてみると、EJ20は極端にオーバースクエア。
私のBL5レガシィのEJ20Yは、上記EJ207とはいろいろ仕様が異なる。
圧縮比は9.5で、タービンはTD04(小さい)。
レスポンス・燃費には優れる理屈(あくまで理屈)だが、残念ながらブーストアップはちょびっとしかできない。
レガシィ購入前、購入当初はインプレッサと同じエンジンだと思っていたので、今となっては残念な事実(がんばって圧縮比落としてタービン変えれば良いのだけど)。
これが、フォレスターやエクシーガのターボ仕様EJ205になると、圧縮比9.0。
8.0と9.5の間・・・・で、私には狙っているところが良くわからない、中途半端な仕様に思えるのだが・・・・。
EJ20は仕向け地別の仕様を含めると200種類ぐらいのバリエーションがあるそうだ。
汎用エンジンの組立ラインの設備の仕事を担当したことがあるんだけど、汎用エンジンは世界各国の発電機メーカや農機メーカなどにOEMされるので、同じシリンダブロックでも、納品先別で、ヘッド違い、オイルパン違い、フライホイール違いなどで200種類ぐらいがラインを流れてた。
でもEJ20はロビンと違って汎用エンジンじゃないので、そんなにバリエーションを増やすのは効率悪→コスト高に繋がりそうに思えるのだが・・・・?
■EJ25
(以下、EJ255=BM・BRレガシィ)
水平対向4気筒ターボ
2457[cc]
ボア×ストローク: 99.5×79.0[mm]
DOHC
圧縮比: 9.5:1
210[kW]/6000[rpm]
350[Nm]/2000~5600[rpm]
EJ25にもいろいろあるけど、BM・BR用の仕様。
EJ25はSOHCだとi-AVLS(可変バルブリフト)だけど、DOHCだと吸排気のデュアルAVCS。
DOHCだとi-AVLS採用に何か問題があるのか、それとも、i-AVLSはやっぱり良いものじゃなかったのか・・・その背景は不明。
タンブルジェネレーテッドバルブ付。
スバルの最近のモデルにはTGVが付き物だけど、みんカラの周囲のユーザには不評。
渦流発生によるメリットよりも、吸気抵抗になるデメリットがパワー系ユーザには不評なのが一点。
発展途上の機構で、トラブルが多そうなのがもう一点。
EJ20以上にオーバースクエア。
圧縮比9.5は、BL・BPレガシィのEJ20Yと同じ思想。
5円弧コンプレッサー(タービンの吸入流露の流速を高めるための流路=スクロールで干渉が発生しないよう、断面形状を独特なおむすび型(五円弧)に改良したもの)らしい。
最近のタービンのトレンドらしい。
EJ25 DOHC 試乗記(BPHアウトバック)
EJ25 DOHC 試乗記 (BR9レガシィ)
↑残念ながらSOHCのEJ25の試乗経験がない。
BPHとBR9で微妙に感想が違うのは、乗り手の問題か、制御の味付けの問題か?
■EZ36
(以下、EJ255=BRFアウトバック)
水平対向6気筒NA
3629[cc]
ボア×ストローク: 92.0×91.0[mm]
DOHC
圧縮比: 10.5:1
191[kW]/6500[rpm]
335[Nm]/4400[rpm]
EZ30の後継。3000→3600[cc]へ。
mistbahnには未体験の6気筒NA。
EZ36はスクエアなのね。
EZ36にはAVCSに加えて、バルブリフト機構も備えているらしい。
かなり最近のモデルでフラッグシップであるEZ36にバルブリフトが付いているってことは、i-AVLSはダメな仕様ではなく、高価な仕様ってことなのかな?
(何故かEZ36では「i-AVLS」って名称が使われていないようだ。北米では「AVLS」とは呼んでいるみたいだけど。・・・ってことは、EZ36の可変バルブリフトは「i-AVLS」とはまた別物??)
EZ30は「極悪燃費だけどフィーリングは極上」と良く聞くんだけど、実際に体感してみたいなあ・・・・。
EZ36のアウトバックの試乗車がないか、今度聞いてみよう。
■EE20
水平対向4気筒ディーゼルターボ!
1998[cc]
ボア×ストローク: 86.0×86.0[mm]
DOHC
圧縮比: 16.3:1
110[kW]/6500[rpm]
350[Nm]/1800~2400[rpm]
ボア・ストロークはスクエア。
カウンターウエイト最小限のクランク、コモンレール、エンジンの短いL寸・・・など、新技術がテンコ盛り。
現物は展示会などで何回も見てるけど、車載状態は見たことがない。
一度運転してみたいなあ・・・。
新型ガソリンエンジンのFBには、当然EE20からのフィードバックを長いこと期待していたワケだけど、思ってたよりちょっと残念な・・・・・。
■FB20
(以下、フォレスター用)
水平対向4気筒NA
1995[cc]
ボア×ストローク: 84.0×90.0[mm]
DOHC
圧縮比: 10.5:1
109[kW]/6000[rpm]
196[Nm]/4200[rpm]
20年続いたEJ20の後継、「第三世代ボクサー」として登場。
富士重工業のリリースしている内容は
ブログエントリ 「スバルの新世代ボクサーエンジン」に詳述。
極端にオーバースクエアだったEJ20だったのが、遂にスクエアどころかアンダースクエアとなったのが特徴。
燃費こそが最重要である現代事情を考慮した仕様で、スバル存続のためには歓迎すべき新エンジンだが・・・・。
こんだけ世間がロングストローク偏重になると、過度にオーバースクエアなEJ20にロマンを感じてしまう。
EJ20はそこまで強烈な高回転型エンジンだとは思わない。
同じ4気筒なら、水平対向であるが故に、確かに振動・雑味は少なく、評価すべきポイントなんだけど、個人的には「味のないエンジン」だとも思う。(もっとも、ロータリー、直6、ボクサー・・・・と、キレイに回るエンジンとはそういうもので、吸気とか排気とかのチューニングで味付けしていくもんなんだろうけど)
でも、そんなEJ20が、世代交代を得て、逆に魅力的に思えてきてしまっている。
自分は若い頃から「アンチ懐古趣味」な人間だったんだけど、年食って、振り返ることが多くなったから、というのもあるのかも。
まあ、ボア・ストロークの件を置いておくと、FB20は新型なのでやっぱり改良されているポイントがたくさんある。
問題の多いTGVも更に改良されたらしい。
ピストン冠面の形状も今どきの凹型に。
AVCSも進角・遅角の両方向に制御可能となったそうな。
私は昔から「何故EJは直噴化しないのか??」と訴えてきたが、FB20もポート噴射だった。スバル曰く
「まだまだポート噴射で改善できる余地があると判断した。将来的なステップとしては、もちろん直噴化も視野に入れてはいるが、コスト面なども含めた総合的な検討の結果、今回はポート噴射とした」
とのこと。(※一般的な直噴化できない言い訳は「
【技術】日本で直噴化が進まない理由? 」参照)
先日、スバルのディーラーさんで、EJ20(NA)を積んだフォレスターと、FB20を積んだフォレスターを並べて、アイドリング状態としてもらった。
パッと見はわかんないんだけど、並べて見ると、例えば吸気管のレゾネータの位置や形状とか、ベルトの取り回しとか、補機類を含めていろいろ違って面白い。
アイドリング時の振動は、ロコツにFB20が小さかった。
振動の要因には、エンジンそのもの以外にも、マウントだとかオイルだとか各回転部品の動バランスだとか、いろんなパラメータがあると思うけど、加速度センサなんて使わなくても手で触るだけで十分にわかるほどの差があった。
FBはこれからどうなっていくのかな?
ターボ仕様も、最高回転数を抑え、低回転重視、低速トルク重視の一途をたどりそうで・・・・・・・
それは正しいと思うんだけど、趣味性の高いエンジンではなくなるんだろうなあ。
ヲタ層に支えられてがちなスバルブランドだと思うので、ちょっと心配。
参考文献: Motor Fan illustrated vol.48 エンジンPart1 Japanese ENGINE~
参考文献: Motor Fan illustrated vol.49 エンジンPart2 European ENGINE1~
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