
いわき出張、4日目。まだしばらく続きます。
なかなか洗濯が終わらない。。。
■F1機械工学大全
出版: 三栄書房(2014/10)
著: 世良耕太
発売されてすぐ購入して、読みやすいので、すぐ読み終わったんだケド、バタバタしていてレビューする時間がなかった。
●世良耕太氏
Motor Fan illustratedなんかでもモータースポーツ寄りの記事は世良氏が書かれてたりするし、
世良氏のブログも面白いので良く見てる。
あんまし掘り下げないんだケド、私のように駄文・長文にならず、使う写真素材なんかも
「ああ、そこそこ!そこが見たかった!」
と思える、ツボを押えてスッキリと読みやすい記事を書くヒト・・・という印象。
●キャッチコピー
本著の内容に入る前に・・・
内容の前に、
帯のキャッチコピーがイケてないというか、なんか不快。
世良氏が考えたワケではなく、コピーライターによるものかもしれない。
内容的には2014年に抜本的に変更されたレギュレーションに基づく技術紹介と、ここ数年のF1技術のトレンド紹介なのだが・・・
"ホンダのいない6年間に、F1はこんなに進化した"
と、いうキャッチコピーは本著の内容の本質から外れ、
第三期ホンダが撤退したことを無意味にDisっているような文章だ。このコピー、何のメリットがある?
ホンダの撤退は残念だったが、それはそれで大人の事情があるのだよ。
帯の裏にまでダメ押しで
"ホンダがF1を撤退し、2015年に復帰するまでにF1テクノロジーがどこまで進化したか一目瞭然"
と書かれているので、このコピーを書いたヒトはひょっとすると
「ホンダの撤退=日本のF1ファンのF1離れ」
「ホンダの復帰=日本のF1ファンのカムバック」
だと思ってるのかも知れないが・・・
それはそれで勘違いだと思う。
"世界最高の技術開発競争の舞台で何が起きているか?"
というキャッチコピーも
本著の内容と矛盾する。
F1は
「世界最高の技術開発競争の舞台」だと思うが、
レギュレーションが厳しすぎて、量産車両と較べてハイテク規制によりローテク化しているものも結構多く、本著書の中でもそれは記載されている。
キャッチコピー書いてる人は、中身読んでないのか、読んでも理解できないの?
●概要
「グランプリ特集」の特集記事のまとめ本らしいケド、私は余程か特別なGP(例: 2012年日本GP、現地観戦して可夢偉の表彰台に感動したGP)ぐらいしか「グランプリ特集」は買っていない。
(「グランプリ特集」は「F1速報」に較べて、GPからのタイムラグが大き過ぎて、発売される頃にはネタが新鮮じゃないので・・・)
・・・なので、
「ああ、『グラ特』の再編か」
という印象はナイが、常々、F1の技術ネタ系の記事は雑誌(「F1速報」「F1速報PLUS」「auto sport」「Motor Fan illustrated」・・・・)なんかで読んでるし、特に2014年の大規模レギュレーション改革については、2012年や2013年の頃から、各誌でクドいぐらいに特集されてきて、いちいち買ってたので、そういう意味では、「知ってることの再確認」といった感じ。
でも、クドくなく、
シンプルに読みやすくまとめてあるので、再確認にも良かったし、F1技術ネタに疎く、コレから知ろうという方には良いのではないかと思う。
やたらと多くの写真を使っての「チーム別マシン比較」・・・・的な表現手法ではなく、
最低限の写真と、わかりやすく簡潔なイラスト、グラフでまとめられており、とても見やすい。
やたらと多くの写真を使っての「チーム別マシン比較」・・・的な記事は大好きなのだが、それは本著とは趣旨が違って、レースレポートであったり、テストレポートであったりするので、本著には不要で正解だと思う。
個人的には
「帯」以外は良著だと思う。
1~2年もすると「過去の情報」になってしまう難しい位置づけの本だケド。
●SOC
「SOC(State Of Charge)」=バッテリーの充電状態[%]という言葉は、私はF1に関係なく以前から知っていたが・・・・
F1中継で川井ちゃんが、説明無しで「ソックが・・・」と言うのは良くないと思う。
・・・っていうか、何年もやってるのに、川井ちゃんの解説はいつもイケてないと思う。
ERS用のリチウムイオン電池をサイクル寿命のためにF1でもSOCを使いきらずに20~80%や30~70%で使ってる・・・とか、
性能と寿命のためにF1でも温度管理をきちんとしている・・・といった情報は知らなかったので、ちょっと興味深かった。
●V8 シングルプレーンとクロスプレーン
以前に「Motor Fan illustrated vol.89 ~V型エンジン 最善の妥協~」で読んだことのある、V8エンジンのシングルプレーンとクロスプレーンの解説が本著にも載ってた。
すっかり忘れてたので、おさらいになった。
MFiでは「フラットプレーンとクロスプレーン」という呼び方だったが、「フラットプレーン」を「シングルプレーン」と呼んだりもするのかあ。
本著によると、市販車ではフェラーリのV8モデルに限ってはシングルプレーンだそうな。
●CoP
SOCに引き続き、3文字の専門略語。
CoP=Center of Pressure。空力中心。前後空力バランス。
こないだ「用語説明」した「WOT」みたいに、現場で多用されているであろう(?)、略語っていろいろあるよね。
「CoP」って略語はそんなに目にしないケド、良く雑誌なんかのF1技術特集記事のウイング写真なんかと合わせて、直接的でナイにせよ、CoPの重要性が書かれているのを目にする。
最近だと、2014最終戦に、マクラーレンがレッドブルそっくりのフロントウイングを投入したが、リアの空力にこだわり過ぎて、フロントウイングの解説が遅れた・・・的な。
●ドラッグ
F1のテクノロジーを、そのまま自分のビートに流用するのはなかなか難しいのだが、それでも、F1やモータースポーツ誌の技術ネタを見るときは、何か流用できるネタはないのか?という目で見てしまう。
DRS(Drag Reduction System)の解説章に
"車両全体に占めるドラッグの割合"
"車速とドラッグの関係は非線形にしたい"
というグラフがあった。
先日、ビートのGTミラー化での空気抵抗(ドラッグ)の計算をしてみたり(突起物では考え方が異なるとご指摘を頂いたが・・・。ありがとうございました)・・・
鈴鹿フルコースのストレートスピードが伸びないことに悩み、過去の走行データをいろいろ解析していて、幌を閉めてる/開けてるで、メインストレート・エンドの最高速が5km/h異なることに気づいたり・・・
と、最近もビートの空力についてはあれこれ考えたりしてたので、興味深く読めた。
●FRIC
FRIC = Front to Rear Inter Connected(略語多い・・・)。
前後連結ダンパー。
2014シーズン、エンジンのみならず、FRICがメルセデスの優位性と見なされていたが、シーズン途中でFRIC禁止になっても、やっぱりメルセデスが強かった。
FRICは理に適った機構だと思うので、市販車にも有効そうだなあ・・・と思っていたんだケド、
"前後のダンパーを連結する仕組みは、F1に限っても1990年代前半から散発的に試されている。乗用車でも一般的な技術だ。開発にあたる当事者からすれば、「何をそんなに大騒ぎしているの?」という感じを受けるようだ。"
と書かれている。へー。
市販車(?)の例として、マクラーレン MP4-12Cが紹介されている。
●ブレーキ、BBW
F1のブレーキディスクが小径で、そもそもキャリパのピストン数が少ないのは、レギュレーションの規制もあるが、そもそもホイールが13インチだから大きく作れないからだそうだ。なるほど。
一番、「へー」と思ったのが、
BBW(Brake By Wire、略語多い!)の回生ブレーキの制御について。
ハイブリッド車の協調制御と違って、F1では、単純に油圧ブレーキの制動力に、回生ブレーキの制動力を「単純に上乗せ」しているだけだそうな。
"なんともプリミティブ"と書かれているが、個人的にはこちらの方があるべき姿だと思える。
会社のレクサス GS450hで、回生ブレーキが壊れたことがあって・・・
ブレーキペダルを踏んでも全くブレーキが効かず、ある程度の踏力に到達したら、途端にメカブレーキがガツンと効く・・・・という、とんでもなく怖い状態に陥ったことがある。
そんな「イケてない協調制御(・・・ちゅうか、協調できていないよね、コレ)」よりは、
プリミティブな方が直感的だし安全側だと思う。
・・・でも、2014シーズン頭に、可夢偉はBBWのトラブルでマッサに突っ込んでるし、ビアンキの鈴鹿での大事故にもBBWが絡んでるのでは?という疑惑があるよね。。。。
●ステアリングホイール
ザウバーC32(2013年)のステアリングホイールの各機能紹介の章。
「デフのプリロード調整ダイアル」とか「コーナー進入時のデフの利き具合を調整するダイアル」とかはドライバー向けだな、と思う(※両者の違いはワカランけど・・・)が、
「タイヤ径補正ダイアル」とか「空燃比調整ダイアル」とか、そんなんまであるんだな・・・。
無線指示がナイと、流石に調整しにくいだろうなあ・・・。
●自動車 書籍レビュー関連目次はこちら
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Posted at 2014/12/11 00:25:07 | |
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