■ステンレスは色々な種類があります。
とは言っても一般的には耐食性を期待される訳で
溶接性等はそんなに期待されていなかったりします。
(逆を言えば耐食性が高いのと引き換えに
溶接に癖があるとも言えるのかもしれいですね)
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■今日はそんなマルテンサイト相のお話
逆を言えば加工方法を間違えると、ステンレスは性質が変わる事があります。
グラインダで刷りまくったり、傷や汚れを与えたり
グニャンと一気に曲げたりすると、ステンレスの伸び縮みによって
いわゆる不導体皮膜が損傷したりします。
二相はともかく、よくばって
いくつもの性質を選ぶ事は出来ないって事です。
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■その辺りは合金の悲しさ、比重などが違う物を
均等に混ぜて入るのですが、圧力をかけたり引っ張ったり伸ばしたりすると
性質が一部変わってしまう事があります。
例えばグニャンと輪にすると錆びたりしますし
傷がつくと隙間腐食も起こりやすくなるし、
変な硫黄とかの物質が入り込むと、やっぱり錆びやすくなります。
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■また下手な溶接をごまかすべくグラインダをかけても
性能が悪化します(笑)
それは電子顕微鏡などでも明らかで
いわゆる肌の良い状態をきちんと保つ事が大事で
替え先加工などのずさんさによっても、やっぱり
こういう事は起こり得ます。
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■そういう意味でも、前のエントリーでちらと
ジャガイモさんが触れてらっしゃいましたけど
『技術の基本』がないと、
どんなにいい肌の性能が高い金属ができても、
その技術を継承する事が出来ないのです。
■よって、溶接の肌のずれ
■隙間や環境の悪化による孔食の発生
■或いは溶接の時の熱のかけ過ぎによる粒界腐食や鋭敏化
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■こういう物は、たとえハイスペックな、原発であっても
逃れ得る物ではなく
600合金=ニッケル系であっても溶接個所の腐食と言うのは
確率的に起こりえる物です。
■もちろん、検査したり、塞栓してみたり、色々やってはいるんですけど
やっぱりそういう例は起きなくはないんですよね。
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■その辺りの事を分かっていないと
何故限られた国しか原発の根本技術がないのか?
(IHIや重工も、別に直工が全てではないですからね)
と言う事も分からない訳で、
でもそこまで考えずに、日本だから凄いんだ
日本だから出来るんだ、だけでは、日本から技術は失われていくばかりです。
技術屋さんや、加工屋さんや、職人と対話して
コストだけにとらわれず(もちろんコスト管理は大事)
事故が起きない様に、起こさない様に、
あるいは事前にこの個所は起きやすいかも等の情報のやり取りをきちんとする。
そういう事をしたプラントと、
ヤッツケでうわーっと作ったプラントでは
長い目で見て当然耐久性や過酷事故の有無が違ってきます。
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■経験があれば、一見レントゲンで問題無くても
『溶け込みが足りない』『ずれがある』と言うのは
その画像から分かります。
また例えば容器関係では
撹拌バネみたいなのがついている設備では
その水流が当る所だけ、金属が「食われたり」します
「無垢材」がいいのか、ライニング+加工がいいのか、
はたまた煉瓦がいいのか、そういう意味合いや、将来壊す更新するサイクル
そういう物を考え、きちんとチームとして
契約形態にとらわれず会話ができるか?と言うのは非常に重要です。
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2013年03月12日
【騙されんなよ?】偽装請負の本当と嘘【偽装請負?】
で触れましたけど
、『指示』は元請け→下請け→孫請けかもしれませんが
それはあくまでお金の話、現場はチームなんです。
変な話、何人が紛れこもうといい物は作らなければいけません。
訳分からないで突っ立っているだけの監督なら
ただの「立ちんぼ」になってしまいます。
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■先程の、粒界割れや、応力腐食割れも
別に世界的に見れば普通のレベルです。
溶接を見聞きしてない人達が、ゼネコンの手抜きに違いない
イルミなんたらだ、施工不良だ、
自動溶接の塊の車ですら、
3年10万㌔保証なのに
原発やらプラントが何で40年保証できる訳(笑)
でも施工不良云々じゃなしに、技術のある先人や
今の技術のある人達が、40年も50年も持つ溶接を
『一発で決めてくれる』(一発溶け込み出来なかったら完全溶け込みできないし)
その凄さを分からずして、「中韓だから駄目だ」なんて言ってたら
「中韓と一緒」になっちゃうよ、と言う事が言えるのではないのかなあと。
本物の証は荒い仕上げの後、とかじゃ無く
何これって言う、綺麗な仕事だったりして。
或いは荒くても、迷いのない「粗くない」仕事
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■ぶっちゃけ、天然ガス発電のタービンの羽根の溶接や加工だって
原発などの溶接と同レベルの精度があるから
固くて削れなくて、溶接もしづらい物を加工して
日本だけの装置ができる訳で、そういう所まで考えて
重工は悪の組織だからとか聞くと、意味のわからん事を
と思ってしまったりします。
SVの値段はさすがに、ケリ飛ばしたくなりますけどね(笑)
ちなみに世界で一番高価なスーパーバイザーは
「あれば」と言う会社の人達らしいです。大体1日50万仕事
もちろん突っ立ってるだけのケースが多いようで。
ちなみに今場末の鉄工所は1日7000円からとの情報もあります。
もっともそんなとこつぶれたらワヤなので仕事なんて頼めません
でもしっかり相場は下がります…
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■とはいえ、原発は安いから存在しているという訳では
チャンチャラ無くて、
その制作と維持にかかるエネルギーや人材こそが
日本の技術を底上げするから存在している様な物です。
これからの時代は、平和を守る為に軍事費を増やして
パワーバランスを守るというちょっともったいない無駄の多い時代に入ります。
例えば、宗教的に騒いで原発をぶっ潰すのはいいですが、
そうなると、軍需産業
すなわち軍産複合体化する部門で、技術を維持するという事も必要です。
それがいいのか悪いのかはさておいて、
基本技術と言う底力を失えば、アッセンブリーがいかに優秀でも
為替や引き抜きであっという間にブランドを失うのは
家電業界がはっきり示しました。
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■正直原発村の失敗と言う物があったとすれば
設計の力ではなく、
現場力で保たれていた総合チーム力を
原価圧縮と現場の切り捨てで追い込んだからであって
そのスッカスカになった上辺のチームを
「すげー日本」だけでごまかし続ければ
本当に中韓に抜かれちゃいますし
一部の巻き物とかの加工技術は既に抜かれ出してます。
グラスライニングももう駄目かな…、技術品質はともかく、ね
そういう中で、しっかりと戦略を練って
アベノミクスのあぶく銭を、「生き残る投資」に変えていかないと
風力とか太陽光みたいなゼニごく潰しばっかり作ってると
粗大ごみ国家になっちゃうんじゃないのかなあと眺めてます。
■景気の調子のいい時になるからこそ
仕込をしておかないと、今度は壊れたものも直せなくなりますよ。
ま、直す人がいればいいけど。
家にしても外構にしても、車にしても、あるいはもっと大きい物でも
出来るできないはともかく、作り方と勘所はきちんと
押さえておかないといけなくて、職人さんと話をするのは
やっぱり教わる所が多くて楽しいなあと思います。
その話がまた次のネタになりますしね^^;
教わる事があるというのは有難い事ですね。