資料編についてはこれにて終わり。
といっても次の更新は恐らく・・・来週(苦笑)
■読んで分かる人にとっても、これを良いことと思うか、
悪い事と思うかは人それぞれだと思います
ただ、
使用済燃料プールの恐怖に気づけた人は本当に少なかった。
自分だってガンダーセン教授に言われてはじめて、
ああそうかと思いました。
多分山さんは気づいていた・・・はず。
でも3号機プールについては怪しいかな?
何となくわかるはずです。
1~3、そしてプールについて、
同じ反応、同じイカレ方をしなかった事は現場の奮闘を意味します。
そしてその事がまた、
今の状況を予想する事をちょっと難しくしています。
最悪の予想をする人はいても
最悪の情況でまあまあ
ラッキーな情況を予想する人はいないからです。
だからこそ、そこに面白さがあるのですが
犠牲が伴う事を考えると面白くもないわけです。
■そしてここに小出グループが登場します。
しかし小出助教は、今日のような情況が起こらない為に
原発を研究した人であって、
こうなった後にどうなるかを知るわけが無い
■今の日本の大きな問題は、その場におけるスペシャリストを持ち上げて
全知全能のように祀りたて、専門外でミスすると叩きまくる事だ。
ゴミを燃やす話に小出助教が詳しかったらびっくりである
■知識欲旺盛で、何の専門家かもはや謎な
トンデモコペルニクス
武田教授の方が珍しいのです
(↑元はウラン濃縮が本職です)
ではモンテカルロさんの続きです。
いずれ資料はあるのでもうちょっとわかりやすくまとめる事が出来るかと思います・・・
いずれね^^;
今回のポイントはα崩壊と、自己核分裂は表裏一体・・・・
ふと思うんですがとてつもなく運悪く内部被曝物体が核分裂したら、
中性子は素通りですむのかな??
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011年3月25日金曜日
使用済み核燃料はなぜ熱くなるのか?
使用済み核燃料はなぜ熱くなるのか?
以前書いたように、「使用済み核燃料」は、通常の使用済み燃料と違って、まだ「燃える」ことができる。「燃える」というのは比喩であって、本当は「熱エネルギーを出す」という意味だ。ここに放射性核物質の怖さ(と同時に面白さ)がある。
ウランは放射性物質だから、放っておくと崩壊してなくなってしまう(より正確には別の原子核に変わってしまう)。この、ウランの崩壊形式には2種類ある。
主要な崩壊チャネルはα崩壊で、アルファ線とガンマ線という放射線を放出する。(アルファ線とはヘリウムの原子核のことであり、ガンマ線は高エネルギーの光子のことである。)ウラン235のα崩壊の寿命は7億年ほど。(これは、例えば、1キロのウラン235が500グラムに減るまでの時間に相当するので、半減期というべきかもしれない。)つまり、一個一個の原子核に着目すると「なかなか崩壊しない」ということになるが、たくさん集まって塊となった場合は「長い間ちびちびと崩壊し続ける」という意味でもある。例えば、0.2gのウランに含まれる原子核の数がだいたい1020個だから、一秒に一回
はα崩壊して放射線を出していることになる。
もう一つの崩壊チャネルは自発的核分裂(自発崩壊)といって、中性子線とガンマ線の2種類の放射線を出す。この中性子線は連鎖反応の引き金になることもあるので、注意が必要になる。今回の福島原発の事故でも、中性子線が漏れていることが報告(全部で13回)されていて問題視されている。その理由は「臨界状態」とか「連鎖反応」と関係しているからだ。連鎖反応を起こすには、中性子線が必要となる。
「使用済み」を考える前に、「使用前」を考えてみる。使用前のウラン燃料を「濃縮ウラン」というが、これは「連鎖反応」しやすいウラン235の濃度を人為的に高めたウラン燃料のことだ。ウラン235を使用していくと当然その濃度は減ってくる。その密度が「臨界密度」を越えて低下すると、連鎖反応しにくくなる。これが「使用済み燃料」である。福島原発では13ヶ月おきに燃料の1/4を交換していたようである。これは「完全に使い切ってから」捨てるというよりは、「効率が悪くなったら」捨てるという状況に近いだろう。つまり、使用済みの中に「燃えかす」はたくさん残っている可能性は高い。
使用済み燃料では連鎖反応は起きていない。しかし、「燃えかす」のウランはα崩壊や自発崩壊しつづける。その結果、ガンマ線が放出され続ける。冷却しなければ、どんどん熱が溜まり、数百度、あるいは数千度といった高温になってしまう。
緊急停止した炉心の中の状況も似ている。制御棒によって中性子が吸われ、原子炉から無くなってしまえば、連鎖反応は止まる。これが「核反応が止まった」と表現される状態だ。これにより、連鎖反応によるエネルギー生成は止まり、原子炉は冷え始める。が、今度はα崩壊や自発崩壊が始まり、ガンマ線が放出される。そのエネルギーが溜まってくると温度は再び上昇に転じる。これが「崩壊熱」と言われるもので、一号炉から3号炉までの燃料棒がメルトダウンしてしまった原因である。崩壊熱は水で冷やしてとる、というのがGE mark1のやり方らしいが、今回の事故ではそこが壊れてしまった。
追記:米国の国立核データセンターのホームページの表紙に、ウラン235とプルトニウム239の崩壊熱についての論文が貼付けられた。今回の事故を受けてのものと思われる。英語では崩壊熱のことを"decay heat"という。崩壊熱は、核分裂破片(fission fragment、といい、これは放射線の粒子も含む)の運動エネルギーとして飛散し、環境の熱エネルギーに変わる。つまり、原子炉やその周辺の施設を「熱する」ということだ。)
追記2:また、
崩壊熱の危険性については、京都大学を始めとする研究者の間では30年以上も前から広く知られた問題だったようだ。
追記3:「燃えかす」の中には、連鎖反応の崩壊生成物もあることを、上の考察では無視している。たとえば、ヨウ素131やセシウム137などはベータ崩壊し、さらにはその後γ線も放射する。これらも、崩壊熱に寄与するので、崩壊熱は上記の見積もりよりもさらに多くなる。ただし、ヨウ素137の半減期は8日なので、一週間以上経過すると、その寄与は劇的に減ってくる。一方、セシウム137やウラン235、238の崩壊熱は延々と続く。
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2011年3月31日木曜日
無視された京大原子炉(原子力安全グループ)の研究成果
さきほどの文章から知った、京都大学•原子炉についてちょっと調べてみた。調べるといっても彼らのホームページを拝見しただけだが、そこに驚くべき研究成果が蓄えられていることがわかった。有用な知識/提言の宝庫といってもよいだろう。そしてその宝庫に入っていたのは、今回の福島原発事故のような事故が起きる可能性を予言した(30年前に!)一連の文書だ。これらの「宝」が長年無視されてきたことが、今回の東電の対応をみればよくわかる。
膨大な量の資料が公開されていて、それら全てに目を通すのは大変だと思う。いくつか目に留まった資料があるのでそれを紹介したい。
この文書の制作者は原子力安全研究グループと呼ばれる京大原子炉のサブグループで、彼らのゼミの資料をまとめたものを文書にして公開している。その第一回(1980)と第97回(2004)の小出先生の資料を見てみたい。
まずは第一回から見てみよう。1980年の発表である。最初の頁に「事故が起きた時、放射性物質の放出を食い止められるか」という問いかけがある。食い止めるための方策として、緊急炉心冷却装置、格納容器の頑強性などがあると紹介がある。しかし、「これらの装置がちゃんと作動するかどうか、また作動しても有効に働くかどうかは不確かだ」と主張している。
緊急冷却装置などの、こまごまとしたシステムがうまく動かなかったり、動いても効果がなかったり、ということはありえることだ、とさすがの原発推進者も認めようだ。しかし、格納容器が壊れてしまうと、その末路は「破局的」なものになるため、どの原発安全審査会においても「格納容器だけは何があっても壊れない」と根拠のないオウム返しが繰り返された、と報告している。つまり、格納容器の安全性については、科学的、論理的な議論は最初から抜き取られてしまっていた、という。失敗を見たくない、事故が起きたことは考えたくない、という「思考停止」状態の議論がなぜ許されたのか?(経済問題であったことは想像に難くない。)
資料の3頁目に「原子炉事故における崩壊熱の重要性」というセクションがある。これはまさに「福島事故の予言」だと思う。このセクションでは津波が危ない、と名指ししているわけではない。が、なんらかの予期できぬことが起きて、それがもとで崩壊熱を制御できなくなったとき、格納容器は壊れ、「破局」が訪れるといっている。
原発開発の初期には、原子炉自体が小さく崩壊熱も小さかったので、冷却装置が壊れても「頑強な」格納容器は熱破壊に耐えうる、と推進派は主張し、「思考停止」の議論も、ある程度は正当化することができた。しかし、炉の大型化による崩壊熱の増大によって、その根拠がすぐに消えてなくなってしまった。つまり、論理的に考えれば、冷却装置が壊れた時、炉心は必ず溶けて壊れてしまうこととなる。
そこで、推進派は「絶対に緊急冷却装置は壊れない」という、最初の考えと矛盾する論法を振りかざし始めたという。そういう議論の例がいくつか紹介されている。その一つが、敦賀原発の安全審査報告書。推進派によって書かれたこの報告書には驚くべき真実と嘘とが入り交じっている。
まず、この報告書は正しく水素爆発の危険性を指摘している。「燃料溶解が起きた場合」を仮定して議論しているのだが、その場合、燃料を保護するジルコニウムが、炉の減速材かつ冷却剤である軽水(水のこと)と化学反応を起こし、水素ガスが発生する可能性がある、と指摘している。この予想は今回の福島の事故で正しかったことが証明された。ある意味素晴らしい論理力といえよう。しかし、次の文が驚きである:「水素ガスが発生しても、水素爆発は絶対に起きない。それは原子炉内部は不活性ガスで満たされているからである。」不活性ガスとはヘリウムやアルゴンなど、電子軌道が電子で埋まり化学反応(この場合は酸化、つまり燃焼)しない気体のこと。
今回の事故についての無数にある解説報道のうち、「不活性ガスが機能せず失敗した」ため水素爆発が起きた、というものは皆無だ。そもそも、東京電力が水素爆発という説明をしたのは、爆発が起きてから数時間も後のことだった。しかも最初は爆発したことをなかなか認めなかった。「不活性ガスがあるから爆発するはずがない」と条件反射してしまったのだろう。つまり、認めなかったのではなく、「理解できなかった」といったほうが近いと思われる。「システムが作動しなかった時どうなるか」という思考訓練を積んでいないと、よく「頭が動かない」といわれる状態になる。(昔、英国に住んでいた頃、自宅で空き巣と鉢合わせたとき、そういう状態になったことがある...)
冷却装置が壊れてしまった時、すぐに「水素爆発が起きるだろう」と正しく解説した人はいなかった。(追記:実は居たにも関わらず、メジャーな報道機関はそれを報道しなかった。)1970年代にすでに議論されていたのに、どうして忘れ去られてしまったのか?それとも、これが起きることを知っていた人は、色々な意味で消されてしまったのだろうか?教科書からも消されてしまったことなんだろうか?
実は、東京電力が無視した警告はまだある。専門家の間では、1100年前に三陸で起きた「貞観地震」が、今回の地震と同程度だったことが知られていた。特に、産業技術総合研究所の報告が2010年にまとめられており、東京電力に注意勧告していたにも関わらず、東電はそれを完全に無視していた。2009年の耐震対策の審議会の後などは、「貞観地震程度なら想定内」と言い切っていた東電だが、今回の地震は「想定外だった」と主張しているようだ。このやり取りをみると、1960年台の安全審査で見せた振る舞いと瓜二つだと思う。いつでも論理が矛盾している、という意味で。
追記:東京電力は、作業員一人一人がつけるべき「線量計バッジ」を、作業グループの代表に一つ与えただけであったことが判明。これは作業員の安全性を無視したやりかただ。これでは、前線で命を懸けて働く作業員が高度の被爆をしているかどうか、まったくわからない。英紙ガーディアンには作業員の待遇がとても悪いことに力点をおいた記事が載っていた。東京電力のやり方は日本のイメージを悪くする。
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その他の勉強資料
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第3章 原子核の安定性
原子核の崩壊
ある不安定な核種の原子核が N 個あるとする。それが崩壊するときに放射線を出す。個別の原子核はそれぞれの時刻に崩壊するが,多数の原子核の集団全体では崩壊率すなわち N の減少率 ( R = -dN/dt )は個数 N に比例する。その比例係数をλとすると
-dN/dt = λ・N
が成り立つ。これは N(t) を未知関数とする微分方程式である。その解は t = 0 での N をN0 とすると,
N(t) = N0e-λt
が得られる。R(t) についても同様に
R(t) = R0e-λt
を得る。
半減期は集団の個数が半分になる時間である。個別の原子核は何時崩壊するかはわからないが,集団の振る舞いが正確に議論できる理由は,崩壊が量子力学の統計的性質を反映しているからである。半減期を T で表すと崩壊定数λとの間に
T = ln2 / λ
の関係がある。また
N(t) = N0 2-t/T
になる。
平均寿命τは個別の原子核の寿命の平均で定義される。t ~ t + dt の間に崩壊する数(すなわち t ~ t + dt の間の寿命を持つ原子核の数)は (-dN/dt)dt であるから,平均寿命は (-dN/dt)dt の重みをつけた t の平均である。結果は
τ = 1 / λ
となる。これを使うと
N(t) = N0 e-t/τ
となる。
α崩壊
不安定な原子核から 4He の原子核(α線とも呼ぶ)が飛び出してくる崩壊。α粒子の結合エネルギー
Bα = m(A-4,Z-2) + m(4He) - m(A,Z)
が負であればエネルギー的には崩壊が可能である。この条件は A > 150 の質量数の核で大体満たされるが,実際にはもっと重い原子核でなければ起こらない。その理由はα粒子のエネルギー Eα はクーロンバリアより低いために,トンネル効果でバリアを抜けなければ核の外へ出られないからである。このトンネル効果は量子力学的な確率的現象であり,α粒子のエネルギーとバリアの高さとの関係が少し変わるだけで確率(結果として半減期)が大幅に変化する。
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α崩壊
α崩壊は原子核の中に閉じ込められているα粒子が原子核の外に飛び出してくる量子力学的現象である。原子核内に閉じ込められたα粒子の波の一部は量子トンネル効果により原子核の外に出てくる。
例えば原子核のα崩壊(原子核内部からα粒子すなわち24He の原子核が飛び出してくるという現象)は、古典的には起こり得ない。原子核の結合エネルギー(核力という力で陽子や中性子どうしが互いに引っぱりあう引力による)を計算すると、α粒子は外に出ることはできない。しかし量子力学的な浸み出しによって外に出る。いったん外に出てしまうとα粒子と原子核(どちら もプラスに帯電)はクーロン斥力によって離れていくので、α粒子の放出が起こる。
量子力学講義録2005年第8回-琉球大学理学部物質地球科学科准教授前野昌弘の講義録(http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/qm/qmK_8.html)
この波を観測すると確率規則に従った確率で原子核の外側に出たα粒子が観測される。これがα崩壊である。観測する時間が短いと、波の大部分が原子核内に閉じ込められたままなので、α粒子が観測される確率は極めて低い。そして、観測する時間が長ければ長いほど、外側に漏れてくる波の量が多くなるため、α粒子が観測される確率が高くなる。 α崩壊を起こす物質において、1個の原子あたり1個のα粒子が観測される確率が50%になる時間は、その物質の半減期と等しい。