核を正視出来ていた頃の検討会です。
原発の是非はともかく、正視くらいは出来るはず。トロトラストで登場した議事録です。
リンクを張っておきます。ご興味のある方はどうぞ。
07/11/12 第4回原爆症認定の在り方に関する検討会議事録
第4回原爆症認定の在り方に関する検討会
日 時 平成19年11月12日(月)13:00~15:00
場 所 厚生労働省 省議室(9階)
1.論点に係る意見発表及び意見交換
2.その他
(前略)
まずは 今お話がありましたように、神谷委員から「急性放射線障害の概要」という
ことで御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○神谷委員 それでは、「急性放射線障害の概要」ということで説明させていただきます。
急性放射線障害の概要につきましては、既に専門家の先生方はよく御存じのことだと思
いますが、専門家でない先生方もいらっしゃいますので、概略ということで御説明させ
ていただきます。
まず、図1をごらんください。放射線の影響には2つの表れ方があります。1つは確
定的影響と呼びますし、もう一つは確率的影響と呼びます。これは何が違うかというこ
とでありますが、その絵を見ていただけたらと思います。
確定的影響という影響の表れ方にはしきい値があります。
一方、確率的影響というも
のはしきい値というものがありません。閾値というのは何かといいますと、ある被曝線
量以下ですと、その症状が表れないというような影響の表れ方であります。これに対し
まして、確率的影響というのはしきい値がございません。したがいまして、その表れ方
というのは放射線の量に対して確率的に影響が表れるというように考えられています。
ICRPではしきい値を定義しておりまして、それは被曝した集団の1から5%に症状
が現れる線量をしきい値と呼んでおります。 実際にしきい値というのはどういう病気にあるかということでありますが、
代表的なのは白内障であります。それ以外にも不妊であるとか皮膚の損傷、あるいは血液障害という障害にはしきい値がありまして、それ以下の線量では症状が現れないとなっています。 一方、
確率的影響の方ですが、これには悪性腫瘍と遺伝的影響というものが考えられています。これらの影響は、確率的に現れるというように理解されています。
次の表1を見ていただきますと、そこに実際のしきい値が書いてあります。例えば、
骨髄障害でリンパ球が一時的減少を起こしますが、その場合のしきい値は0.5Svと推定
されています。したがいまして、これ以下の線量ではリンパ球の減少は認められないと
いうことになります。それ以外にも、例えば精巣であるとか卵巣の障害、水晶体の障害
である白内障、あるいは胎児の奇形というような障害に対して、それぞれしきい値が存
在いたします。
それから、図2を見ていただきたいと思います。放射線障害を考えるときに、非常に
重要な因子があります。それは、私たちの体を構成しています組織の感受性という問題
です。感受性というと少し言葉が難しいのですが、平たく言いますと放射線に対してや
られやすさということであります。このやられやすさというのは、組織によって異なり
ます。そこの絵を見ていただきますと、放射線高感受性組織と書いてありますが、こう
いう造血組織であるとか、あるいは消化管粘膜というような組織は放射線に対して非常
にやられやすい組織であります。
こういう組織には特徴があります。どういう特徴かといいますと、非常に細胞の増殖
が活発な組織であるということであります。あるいは、非常に幼若な細胞がたくさんあ
るような組織、そういう組織は放射線に対して非常に感受性が高いということになりま
す。これに対して放射線に対して抵抗性の組織というのもございまして、それは先ほど
言った組織の特徴の逆であります。つまり、細胞分裂を余りしていないような組織、じ
っとしているような組織、そういう組織は放射線に対して抵抗性があります。その代表
が神経細胞であったり、筋肉であったりいたします。
次の表2を見ていただきますと、その細胞分裂の頻度と、それから放射線に対する感
受性が相関するということが具体的に記載されています。先ほど申し上げた造血組織で
あるとか、あるいは睾丸の精巣上皮、卵胞上皮、あるいは腸上皮というような組織は非
常に放射線に対して感受性が高く、神経組織とか筋肉組織は抵抗性があるということで
あります。
それでは、実際の放射線障害というのはどのように起きてくるかという問題に入って
いきたいと思いますが、その前に図3をごらんいただきたいと思います。これは、私た
ちの身の回りの放射線について示したものであります。右が人工放射線、左が自然放射
線というふうに区別して書いてありますが、人工放射線というのは私たちが医療等で使
っている放射線のことであります。自然放射線というのは、私たちが地球環境に住むこ
とによって浴びる放射線のことであります。
実際に、私たちは地球環境に住むことによって非常に微量なのですが、放射線の被曝
をしています。その量は、宇宙から飛んでくる放射線であるとか、大地からの放射線、
食物からとる放射線、あるいはラドンとかトロンというような環境中からの放射線があ
りまして、世界平均では年間に大体2.4mSvの被曝が年間あります。
日本の場合はこれよ
り少し多いのですが、世界各地を平たく見てみますと、地域によっては非常に環境放射
線の高い地域も存在いたします。それはハイバックグランドエリアと呼びますが、ブラ
ジルであるとか、インドであるとか、中国であるとかにそういう地域が存在しています。 そういうことで、厳密に言うと私たちは放射線を被曝しながら生きているということ
になるわけなのですが、そうするとなぜ放射線障害が起きてくるかという非常に難しい
問題と直面することになります。こういうことから考えますと、放射線障害の問題は極
めて放射線の量に関係するということになります。
次のページを見ていただきますと、図の4になりますが、そこに放射線の量と、それ
から私たちの健康に障害が起きた場合の症状を書いてあります。急性放射線障害のとこ
ろを見ていただきますと、下の方は私たちが日常的に医療等で使っている放射線であり
ます。それで、
実際に臨床症状が出てまいりますのは、500mSvを超えてからであります。
それ以上になりますと、非常に深刻な放射線障害の問題が出てまいります。
例えば、皮膚が赤くなる、脱毛が起きる、あるいは骨髄障害が起きてくる。線量が高
い場合は、そのまま放置すれば死に至るということになりますし、更に線量が上がりま
すと、今度は消化管がやられて、その結果死に至ることになりますし、更に線量が高く
なりますと中枢神経系がやられるというようなことになります。このやられやすさとい
うのは、先ほど御紹介しましたような組織の感受性に依存した障害の受け方ということ
になります。 表3を見ていただきますと、今までの急性放射線障害をまとめたものが
示してあります。0.5Gyの被曝がありますと、リンパ球が一時的に減少するというよう
なことがあります。しかし、これは回復いたします。
それから、3Gyを超えますと一時的な脱毛が起きたり、皮膚が赤くなるというような
ことが起きます。
更に、3Gy以上になってまいりますと骨髄障害が始まります。骨髄が障害されますと
白血球や血小板等が減少してまいりますので、そのために感染が起きたり、出血傾向が
出たりいたします。それに対して適切な治療が行われないと、死に至る可能性も出てま
いります。
それから、8Gyを超えますと消化管がやられて、その結果、消化管上皮が破壊されま
すので、そこから水や電解質を失う、あるいは出血が起きるというようなことが起きま
す。更にそこに感染が加わりまして、最終的には敗血症というような症状が起きてまい
ります。 更に、6Gyを超えますと肺臓炎が発症しますし、腎臓であるとか、いろいろ
な組織あるいは臓器が障害を受けます。
更に線量が高くなりますと、今度は中枢神経系が直接やられて、その結果、意識障害
であるとか運動失調、あるいは錯乱というような症状が出てまいります。
東海村臨界被曝事故の経験から、8Gy以上の被曝があった場合は、最先端の医療をも
ってしてもその救命はなかなか難しいというのが私たちの経験であります。
図5を見ていただきます。図5には「急性放射線障害の時間的推移」が示してありま
す。放射線障害は非常に特徴ある時間的な経緯を通ります。被曝いたしますと、すぐ症
状が出るということはありません。まずは前駆期という時期があり前駆症状が出てまい
ります。その症状は吐き気であるとか、嘔吐であるとか、下痢というような軽い症状な
のですが、それはやがて治まります。そして、何も症状のない潜伏期という時期に入り
ます。その潜伏期を経て、今度は放射線障害が全面的に現れる急性期の症状が出てまい
ります。
急性期の症状には、血液障害、皮膚障害、消化管障害、循環器系の障害に伴うショッ
ク等、被曝線量に応じた症状がこの急性期に出てまいります。
それから、潜伏期の長さというのも放射線量に依存して短くなる傾向があります。
その急性期を経て最終的には回復期あるいは慢性期に至るということで、急性放射線
障害にはこういうように前駆期、潜伏期、急性期あるいは回復期というように、時間的
な経過があるということであります。
表4を見ていただきますと、その前駆期の症状をもう少し細かく見たものであります。
前駆期の症状の現れ方も線量に依存しておりまして、線量が高いと症状が早く現れる傾
向があります。
少し具体的に見てみますと、例えば嘔吐というのは2Gy以上の線量で被曝するとかな
り高頻度、ここでは実際には70から90%と書いてありますが、その頻度で被曝後1、
2時間後にそういう症状が出ます。更に線量が高くなりますと、もっと短い時間でほぼ
100%に嘔吐は認められます。
一方、下痢に関しましては4Gy以上の被曝がないと発症しません。その場合も、大体
3から8時間の経過を経て発症してくるということであります。更に線量が高くなって、
1時間くらいで下痢の症状が出ますと、6Gy以上の被曝があるというように推定されま
す。
それから、意識障害です。意識障害というのは中枢神経系に対する障害を意味してお
りますが、低い線量ではまず出ません。意識障害が出るのは50Gy以上の被曝がある場合
と言われておりましたが、実際には東海村臨界被曝事故でも軽度の意識障害が認められ
ておりますので、もう少し低い線量でも出る可能性があります。
それから、体温の上昇は2Gyの被曝があれば微熱が出てまいりまして、それ以上の被
曝がありますと体温がもっと上がってくることが認められています。
表5を見ていただけますでしょうか。この表は、放射線障害の初期の診断法をまとめ
ています。放射線障害というのは特別な症状が出るわけではありませんので、その診断
自体は非常に難しいのですが、いろいろな臨床所見であるとか、あるいは検査所見を総
合して診断するというのが適切なやり方だと指摘されています。ここではその例を示し
ていますが、例えば嘔吐が48時間以内に認められた場合は1Gy以上の被曝があるだろ
うと推定されますし、紅斑が数時間から数日以内に認められた場合は3Gy以上の被曝が
ある。更には、脱毛が2から3週間以内に認められた場合は3Gy以上の被曝があると推
定されます。
更にそれをもっと裏付けるのが検査所見でありまして、リンパ球の数が1,000以下の
場合は先ほどお話をしましたように0.5Svあるいは0.5 Gy以上の被曝があると推定され
ますし、更に染色体解析ができますと、より正確なデータを得ることができます。具体
的には、ダイセントリックとか、リングとか、フラグメントというような染色体の異常
が認められますと、少なくとも0.2Sv以上の被曝があると推定されるわけです。
いずれにしましても、この一つひとつではなかなか診断が難しいものですから、これ
らを総合して診断するということになります。
次に、図6を見ていただけますでしょうか。今まで急性放射線障害の初期症状につい
てお話をしてまいりましたが、これからは少し放射線障害に特徴的な血液疾患と皮膚障
害についてお話をしたいと思います。
まず最初が血液障害ですが、図6に示しておりますのは被曝線量に応じて血液中の成
分であります血小板であるとか、リンパ球とか、あるいは好中球がどのように変動する
かということを示しております。これは模式図でありまして、実際のデータではありま
せん。血小板、リンパ球、好中球、ともに被曝線量に応じた減少、そしてその回復が認
められています。
次のページを見ていただきますと、図7にはもう少し詳しくその血液の変動が示され
ています。ここで示しておりますのは、好中球と血小板の資料であります。それぞれ被
曝線量に応じて、好中球ならば好中球、血小板ならば血小板が減少して回復するという
ことでありますが、被曝線量が増えるに従ってその減少するスピードが早くなります。
それと同時に回復するスピードも早くなるということですが、好中球の場合は5Gyを超
えると、その回復は認められないというデータになっています。同様に、血小板の場合
も6Gyを超えるとその回復はなかなか認められないというデータです。
次のページを見ていただきますと、表6と図8があります。この2つの表は、リンパ
球の変動を示しています。放射線障害を受けたときに最も鋭敏に変動するのはリンパ球
です。そこに実際の数値を示しています。この数値を用いて、大体の線量を推定するこ
とができます。それが表6と表8に書いてあるわけですが、例えば700から1,500くら
いのリンパ球があるときは1から2Gyぐらいの被曝線量があったのではないかと推定
できるわけです。
更にそれをもう一歩進めたのが図8であります。これは被曝後、例えば被曝2日目あ
るいは3日目のリンパ球の数を数えれば、その数値を方程式に入れることによって大体
の被曝線量を推定することができるということであります。実際に、この方式はチェル
ノブイリ原子力発電所事故での被曝線量の推定にも用いられました。
次のページを見ていただきますと、今度は皮膚の障害について記載されています。今
までは、基本的には全身被曝を受けたときの急性障害についてお話をして参りましたが、
この皮膚障害に関しは局所的な被曝による障害のデータです。2つ表が出ていますが、
1つはIAEAから報告されたもの、それから表8はICRPからの報告であります。
まず表7を見ていただきますと、3から10Gyの被曝があると紅斑が認められま。更に
は壊死が起きるというような症状が出てまいります。
表8も基本的には同じデータですが、表8の場合はしきい線量で示されています。少
し見てみますと、初期紅斑は被曝してすぐに現れる紅斑のことなのですが、それは2Gy
ぐらいのしきい線量があると言われています。それから、一時的な脱毛に関しては3Gy、
永久脱毛は7Gyぐらいの被曝があるということであります。
最後の表になりますが、次のページの表9をごらんいただけますでしょうか。これは、
急性放射線障害の今までお話をしたことをまとめたものであります。上の方に血液の変
化、リンパ球であるとか顆粒球、血小板の変化が書いてあります。
それから、線量の区分としては、ここでは1から2Gyを軽症と呼んでいますし、2か
ら4Gyを中等度、4Gyから6Gyを重症、更に重症という区分で線量を決めています。
それに基づいて血液の変化、あるいは臨床症状の変化が書いてあります。臨床症状の
ところを見ていただきますと、2Gyぐらいから具体的な臨床症状が観察されるようにな
りまして、4Gyを超えますと今度は骨髄障害の症状がかなり強く出てまいります。更に
6Gyを超えますと、消化管障害が起きてそういう症状が出てくる。更に高くなると意識
障害が出てくるということであります。
下痢のところを見ていただきますと、下痢は大体6Gy以上の被曝があって認められる
というようになっております。そのときの発症時期は、被曝後6から9日の潜伏期があ
るということになります。
脱毛に関しましては2Gy以上被曝した場合に15日以降の潜伏期をもって発症してく
るということですが、6Gyを超えると完全な脱毛が起きると記載されています。
以上、非常に概略的ですが、「急性放射線障害の概要」について御報告させていただき
ました。
○金澤座長 どうもありがとうございました。大変わかりやすいお話をしていただきま
した。何か御質問などございませんでしょうか。
丹羽委員、どうぞ。
○丹羽委員 私は医者ではございませんが、最近放影研の論文で昔、我々が教科書で聞
いていた白内障の線量効果関係について、急性のいわゆる放射線白内障というものにつ
いては先生がここにお書きになっているとおりなのですが、それ以外の高齢に伴って出
てくる白内障についても、それが線量によって少し上がるという知見が出てまいったと
聞いてはいますし、論文もたしか1つ2つ出ていた。
ただし、急性の放射線白内障に比べると線量に対する相対リスクの上昇というのは逆
に非常に少ない関係になっていると聞いておりますが、この点はどのようでございます
か。○神谷委員 急性放射線障害に伴う白内障というのは、診断自体はそれほど難しく
ありませんで、御存じのように後極に白濁ができるというので老人性の白内障とは簡単
に区別できるのですが、老人性の白内障が放射線被曝によってアクセレートされるとい
いますか、頻度が上がることに関してのメカニズムといいますか、そういうものはわか
っていないと思います。
ただ、そういう現象が観察されているというのは先生の御指摘のとおりであります。
○金澤座長 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
すみません。ナイーブな質問なんですけれども、5ページの図3の中で、地球上のい
ろいろな場所で自然放射線の強さが違うというお話をいただきましたが、いろいろな場
所が時によって違うというのならばわかるんですが、いつも同じところがというのはど
ういう考え方をすればいいんでしょうか。
○神谷委員 私は環境放射線の専門ではないので正確なお答えはできませんが、例えば
その地域で花こう岩の量とか、そういう自然界から、大地から放散される放射線の量が
違うところがあるということかと思います。
それから、環境中のラドンとかトロンというような放射性同位元素の量も地域によっ
て随分違います。日本はラドン、トロンというのは比較的低い地域なのですけれども、
北欧は非常にラドン、トロンの環境中の量が多いと聞いております。
○金澤座長 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
よろしいですか。また途中で思いつかれましたら御遠慮なく御質問ください。
それでは、次に永山先生から「内部被曝について」の御発表をお伺いしたいと思いま
す。よろしくお願いします。
○永山委員 それでは、内部被曝について御説明させていただきます。
資料2をごらんください。今日の話の内容は、一番上に書いておりますように内部被
曝のまず総論として内部被曝の経路、あるいは体内分布、代謝、測定法などのお話をい
たしまして、その後、長崎、広島での内部被曝、それから最後に少しチェルノブイリで
のデータを加えさせていただきます。
内部被曝は最初の絵にかいていますように、原爆放射線全体の中では残留放射線、こ
れは放射化の誘導放射線と放射性降下物から成りますけれども、この放射性降下物と一
部の放射化誘導放射線が内部被曝に影響してきます。
このような内部被曝というのは、外からはもちろん放射性物質が入ってくるわけです
けれども、どういう形で体内に入っていくかといいますと、まずAに書いていますよう
に基本的に肺、それから経口、皮膚を介して体内に入ってきます。
まず経肺、吸入です。呼吸器の構造を右のところに簡単に書いていますが、気管から
気管支、細気管支、終末気管支と分かれていって、最終的にガス交換をする肺小葉、肺
胞に分かれるわけですけれども、この中に入っていった放射性物質というのは比較的小
さいもので5μm以下、文献によっては1μm以下と書いてありますが、小さいものは最
終的に肺胞まで達します。ところが、もう少し大きいものは途中で引っ掛かって分泌物
とともに咽頭まで上がっていく。そして、順次飲み込まれて消化管へ侵入するという形
をとります。大体それにかかる時間というのを下のところの四角に書いておりますので、
終末気管支まで入ったものでもやはり15時間ぐらいすると咽頭まで上がってくるとい
うことです。
そうすると、実際に肺胞に入った放射性物質はどういう運命をたどるのかといいます
と、次のページに書いていますように、これは化学物質ですからそういう化学的な溶解
度というものに依存します。可溶性の、いわゆる溶けやすいものはそのまま吸収されて
直接血液、リンパ系を介して循環器系に入っていきます。トリチウム、リン、セシウム、
ヨード、ストロンチウムなどがこれに当たります。
不溶性の物質、溶けないものはそのままなかなか入っていきませんから、いわゆる細
胞の貪食機能によってリンパ系から循環で体内に入っていきます。主に金属の酸化物な
ど、コバルト、ウランなどがこれに当てはまります。一部、これらは異物ですから、肺
小葉では異物に対する局所的な炎症反応が起こって、繊維化とか瘢痕化することも起こ
ります。 これが肺からの吸入になりますけれども、次に経口の場合です。経口の場合
は、主に(1)(2)で書いているような2種類の侵入が考えられます。1番が先ほど言
いましたいわゆる吸入物質が気道から食道へ移動する場合、もう一つは放射性ヨードや
特に放射性セシウムなどが肉、ミルク、野菜、それから書いていませんけれども、水な
どを介して体内に入るということです。
体内に入った後の吸収のされ方というのは、4番のところに書いていますように核種
によって違います。特にトリチウム、ヨード、セシウムというものが非常に吸収がよく
て、ほぼ100%消化管から吸収されると言われています。特にヨードとかセシウムは先
ほど上でも言いましたようにいろいろな食物に含まれて体内に入っていきますので、食
物連鎖関連核種と呼ばれるようなこともあるようです。
3つ目の体内への経路としてはいわゆる経皮、皮膚を介した侵入が考えられます。た
だし、通常正常な皮膚からはほとんど吸収はされないと言われています。例外として、
一応トリチウムがありますけれども、ほとんどは怪我から、いわゆる創傷汚染が主原因
ということになります。これも吸収とか経口と同じで、溶解度の高いものはよく入って
いきますし、溶解度の低いものはいわゆる細胞に貪食されて入っていくという形をとり
ます。
このように体内に入った放射性物質が体内でどのような分布をとるかというのが次の
Bのところです。これは放射性の活性にかかわらず化学物質ですから、通常の化学物質
と同じような薬理学的動態をとります。例えばナトリウム24というのは放射化で起こる
ものですけれども、細胞外液に溶けて全身を回ります。セシウムはカリウムと同様な分
布をとりますので細胞内液に分布しますし、更には筋肉あるいは生殖腺への集積も多い
ということです。ヨード131はもちろん御存じのように甲状腺に高い親和性を持ってお
りますし、ウランは肝臓、骨、あるいはストロンチウムは骨と、ある程度核種によって
蓄積しやすい臓器というものが決まっています。
次のページにいきます。そうすると、そのように分布した放射性核種がどうなるかと
いいますと、その後、代謝されるか、あるいはそのまま排出されます。特にこのとき留
意しないといけないのは、いわゆる放射線核種の半減期ですけれども、通常のいわゆる
物理学的あるいは放射線学的な半減期に対して、体内からの排出に関しては生物学的半
減期という言葉を用います。例えばセシウム137というのは放射線学的には半減期、30
年ですけれども、生物学的には約100日、体から出ていく場合は約100日で半分になる
というようなことがわかっております。
排出は書いてありますように、尿路系だったり、呼吸器から出ていったり、あるいは
便の中に出ていったりということになります。
このような内部被曝をどのようにして測定するかというのがDのところになりますけ
れども、甲状腺に集まったヨード131からのβ線、あるいは体内に入ったセシウムから
のガンマ線というものは、この図に書いてあるような全身あるいは部分的なカウンター
で外から測ることができます。それ以外に関しては、特にα線、β線を出すようなトリ
チウム、リン、ストロンチウムなどに関しては外から測定できませんので、皮膚・鼻腔
の拭き取り、あるいは尿、便の検査ということになります。ですから、これはある程度
急性期に限られる検査ということになります。以上が、簡単な内部被曝に関しての総論
です。
次に、長崎と広島での内部被曝がどのように考えられているかというところをll.番
でまとめております。
まず長崎、広島の原爆で内部被曝がどのように評価されているかということですけれ
ども、そこの四角に書いておりますのは原爆症認定基準における被曝線量の選定です。
ちょっとページ数がずれていますけれども、1番の初期放射線による被曝線量というの
は審査の方針で参考資料の1ページになりますが、そのような表から計算されますし、
残留放射線に関しては被曝線量、これも参考資料の2ページになりますけれども、その
ような表に従って算定されるようになっております。
更に、放射性降下物はここに示しますように、広島では己斐・高須地区、長崎では西
山地区でこのような被曝線量があるということで、トータルの被曝線量を想定いたしま
すので、現在の原爆症認定では内部被曝は全く考慮されていないということになります。
一般的な話として3ページの一番下に書いておりますように、チェルノブイリ等の原
発事故あるいは地表での核爆発、カザフスタンあるいはビキニ環礁での核実験になりま
すけれども、このように地表で爆発した場合には放射性降下物というのが非常に多いと
言われておりますが、長崎・広島のように空中での核爆発の場合は核分裂の生成物が成
層圏まで上昇してかなりの広い範囲に広がるので、集中的な被害がないというのは一般
的に言われていることであります。
次のページにいきます。そうすると、長崎と広島で現在どれぐらいの放射化誘導放射
線と放射性の降下物があったと推定されているかといいますと、放射化の誘導放射線に
関しては広島で約50cGy、長崎でそれの約3分の1から2分の1、18から24cGyくらい
ではなかったかと推定されています。放射性降下物に関しては逆に長崎の方が高くて12
から24 cGy、広島ではその約10分の1ということが推定されているわけですから、こ
れらが内部被曝に関与しているということが考えられます。
そうすると、どれぐらいの内部被曝が実際にあったのかという測定あるいは推定です。
1番は資料2ということで、これは10、11ではなくて3ページと4ページですけれども、
まずそこを少し見ていただきたいと思います。これは、いわゆるDS86の邦訳の本から
取ってきております。私の参考資料の3ページですが、DS86の中で「残留放射能の放
射線線量」というところが第6章にあります。その中で線を引いておりますけれども、
これ以外、これというのは直接の放射線ですが、直接の放射線以外にも残留放射能ある
いは放射性加工物などがあった。しかし、これらの2つの線源からの放射線というのは
余り主要な査定では考慮されてこなかったというのが現状です。
実際に四百何ページある訳本の中で内部被曝に触れたのは参考資料の4ページになり
ますけれども、「137Csからの内部放射線線量」ということで、この1ページ弱が触れ
られているのみです。実際に参考資料の4ページのところをまとめたのが、私の今日の
資料の4ページです。また4ページに戻っていただいて、「内部被曝測定・推定」の1番
です。岡島先生らの報告ですけれども、原爆投下の直後というのは内部被曝に関しては
測定は不可能であったということで、後になっていわゆる長い半減期のガンマ線放出核
種であるセシウム137の測定から内部被曝が推定されたというのが現状です。1969年で
すから、被曝後24年、長崎の西山地区でホールボディカウンターを用いてセシウム137
が測定されています。このとき男性で38.5、女性で24.9という値が得られておりまし
て、対照との比較で男性で約13、女性で10pCi/kgという被曝が考えられています。
その後、1981年の12年後に2回目の測定が行われて、実際の内部被曝は減っている
けれども、半減期が7.4年というふうに計算されています。これは、先ほど言いました
セシウムの生物学的半減期100日と合わないということで、一つの考え方としては土壌
中のセシウムが食物摂取によって体内に入ってきたという環境半減期ではないかという
ことが考えられています。
いずれにせよ、このような数値から1940年から85年ですから、原爆直後から40年間
でのセシウムによる内部被曝はどれくらいかといいますと、男性で0.1mSv、女性で0.08
mSvということになります。この量は先ほど神谷先生が言われましたけれども、いわゆ
る自然放射線による1年間の被曝線量というものが世界で大体平均2.4mSvですから、こ
れよりもはるかに低いということが言えます。
それ以外に測定したというものはほとんど見当たらず、あとはシミュレーションとか
測定になるんですけれども、シミュレーションに関して1つだけ御紹介します。2番に
なりますけれども、これは前回のこの検討会のときに靜間先生が出された資料2の1の
中にあります。今日は参考資料として付けておりませんけれども、DSの2に基づく誘
導放射線量の評価という中で、放射化された塵埃の吸入による被曝のシミュレーション
というものをされております。詳細は省きますけれども、一番下の2行に書いています
ように、原爆当日に広島で焼け跡での片付け作業に8時間従事した場合の推定被曝とい
うのが、塵からの吸入で0.06μSvということで、外部被曝に比較してほとんど無視でき
るレベルではないかということが考えられています。
次のページにいきます。そうすると、このような内部被曝は計算上は非常にわずかだ
ということですけれども、このようなごく微量の内部被曝は危険性はないのかというと
ころがひとつ問題になると思います。
1つの例を挙げますと、トロトラストという血管の造影剤ですけれども、これを投与
された患者さんでの肝がん発生というのが放射線被曝で問題になっているのは御存じだ
と思います。これはトリウムという放射性物質を含むわけですけれども、これは網内系
の細胞に取り込まれ、特に肝臓に集まります。これは代謝されずに長い間、体内にとど
まってα線を出します。これは検査に使いますから、投与量としては非常に微量です。
大体1から5Bqと言われておりますけれども、この量というのは全身、私たちの体の中
にも放射線のカリウム、カリウム40というものがあるんですが、これから出る被曝量が
96 Bqと言われておりますので、これに比べてもはるかに低い量のトロトラストによっ
て肝がんが発生するということは、微量の内部被曝というのは無視できないのではない
かということが考えられるのではないかと思います。
実際、この考え方として、第2回の検討会は私は欠席だったんですけれども、澤田先
生の資料と議事録を見させていただくと、いわゆるホット・パーティクル理論というこ
とを澤田先生は出されております。外部被曝は左側に示すように体内に均一に当たりま
すけれども、内部に入った放射性の微粒子というのは1か所から放射線を出しますので、
回りの細胞が非常に高線量の放射線によって被曝されるということで、微量でも非常に
危険であるという説になります。この理論はもちろん学会で否定されたりもしておりま
すけれども、ごく微量の内部被曝の危険性ということを言っているのではないかと考え
られます。
もう一つ、問題点と言えるかもしれませんけれども、これは内部被曝と疾病の関係で
す。ある程度がんのできやすい臓器というものはありますけれども、それと内部被曝で
の体内分布というのが必ずしも合うのか、合わないのかというところもひとつ問題にな
るのではないかと思っています。
最後にlll.番としてチェルノブイリのお話を少ししますけれども、我々の長崎大学で
チェルノブイリでの検診をしておりますので、その結果になります。そこに青で書いて
おりますけれども、長崎・広島での内部被曝がチェルノブイリのそれに匹敵するという
ことを言うつもりは全くありません。量的には先ほど言いましたように、空中での核爆
発ですので非常に少ないとは思いますけれども、質的に似たところがあるのでデータを
出させていただきます。
我々はチェルノブイリの近郊のベラルーシ、ゴメリ市、それからロシアのクリンシー
で学童の検診を引き続きやっております。下の一番左のような簡易のホールボディカウ
ンターをつくって、真ん中に子どもの絵が載っておりますけれども、このようにしてセ
シウムを測ります。そうすると、一番右のグラフにありますようにセシウム137が引っ
掛かってきます。カリウム40ももちろんここに引っ掛かってくるわけです。
最後のページのグラフにいきますと、95年から2002年までの結果です。このように、
明らかに内部被曝が認められて、この7年間で減少してきた。
ごらんいただけるように、非常に緩やかに下がってきております。それで、体内の生
物学的半減期100日とは到底考えられない長い半減期で下がってきているということで、
これは先ほど言いました長崎の西山地区でのデータと非常に類似している。
次のグラフに書いておりますのは、横軸が土壌の汚染で縦軸がその体内の被曝ですけ
れども、非常に相関しているということで、土壌被曝が高い地域ほどやはり体内被曝が
多い。我々は直接データは持っておりませんけれども、現地の人は向こうの肉、野菜、
ミルク等から放射線活性が以前は出ていたということを聞いています。そういうことで、
このように土壌からの食物を介したセシウムの持続的な体内への侵入があると考えられ
ます。
実際にこれぐらいのカウンターの値でどれくらいかというのが一番下の表ですけれど
も、ベクレルからシーベルトに換算いたしますと、どちらの市においても年間0.16 mSv
くらいの被曝量が量としては考えられます。長崎、広島の場合は恐らくはるかにこれよ
り低いだろうというところが考えられるわけです。
大体、以上が内部被曝に関しての治験ですけれども、最後に文章にしていませんがま
とめますと、内部被曝に関する最近の新治験というのはほとんどないと考えられます。
以前の数値化されたデータを見る限りは、やはり非常に低いと言わざるを得ないところ
ですけれども、最後の方で言いましたように、微量の放射性物質の危険性あるいは測定
できないような、前回靜間先生が言われたようなβ線の関与というのは否定できないと
いう問題も起こっているかと思います。以上です。
○金澤座長 どうもありがとうございました。大変クリアなお話をいただいたように思
います。どなたか御質問ございませんでしょうか。
では、鎌田委員どうぞ。
○鎌田委員 2ページ、4ページの内部被曝測定について御説明いただきました。2つ
質問をしたいと思います。
69年、81年に岡島先生が測定されておりまして、それと現時点での年間の被曝線量に
比べると非常に値が低いものだったということですが、これは当時25年くらい前にさか
のぼったときにどれぐらいの量であったかというエスティメーションが出されておるの
かどうかです。原爆が落ちた少なくとも1か月くらい、あるいは3年くらいの間にどれ
ぐらいの量をその土地の人が摂取した可能性があるかというような御計算はされていな
いでしょうか。それが1点目です。
○金澤座長 では、1つずついきましょう。
○永山委員 実際に被曝直後にどれぐらい体内に入ったかという計算があるかどうか、
私は知りません。
ただし、この69年と81年の計算から数値を使って、45年から85年までの40年間の
内部被曝の量が計算されているんですけれども、これは恐らく69年と81年の値からさ
かのぼって45年の量を計算し、この値が出ているものと私は理解しております。
○鎌田委員 2つ目をよろしいですか。長崎では非常に奇妙なことに、西山地区だけで
1970年まで2人の慢性骨髄性白血病が起こっておるわけです。どちらかというと慢性の
骨髄性白血病は長崎では低い。少ない頻度なんですけれども、あの限られた地区だけで
2人も出たということで、何らかの残留放射線の影響というものを考えなければいけな
いのではないかということから考えまして、先生が今セシウムを主にデータとして出さ
れましたけれども、ほかのものは内部的なものとして病因起因性のものをどのように考
えておられるか、どのようなものを考えておられるか、お尋ねしたいと思います。
○永山委員 先ほど言いましたように、原爆の投下直後のデータというものは全くなく
て、ある程度年数がたってからの測定ですから、実際にセシウムしかデータとしてはな
いというのが現状ですし、もちろんこれはガンマ線だけですから、先ほど言いましたβ
線を測定できていないわけで、セシウム137から計算された内部被曝がもちろんすべて
ではない。ですから、先生が言われるように、それ以外の各種の被曝から発がんに至っ
ているという可能性は考えられると思います。
○金澤座長 ほかにいかがですか。
では、丹羽委員どうぞ。
○丹羽委員 1つは鎌田先生の御質問に関係して、もう一つは永山先生のお話について
です。
鎌田先生の西山地区の慢性骨髄性白血病というのは私も全然素人なのですが、2例と
おっしゃいましたね。もともと症例数が少ない場合、それは何が原因であるかというこ
とについては数が少ない場合は非常に難しいと思うんです。高い、あるいは高くないと
いうふうなことを議論する上で、これは純然たる統計的な問題を申し上げているんです
けれども、そういうことで一般的にその2例というのはどう考えてもこれは高くて、何
らかの特別な原因があるというふうに考えるべき数字なのか。その辺りをお聞きしたい
のですが。
○鎌田委員 おっしゃるように、病気を見て白血病がたばこでできたのか、ベンゼンで
できたのか、何でできたのかは区別ができません。
しかし、200名近くの部落の中で25年間で計算しただけでも、私は先ほど「奇妙
な」という言葉を使いました。奇妙なことに多いということは、何かそこに原因があり
そうだということを言っているのであって、放射線の可能性も非常に考えておかなけれ
ばいけないという意味で申し上げた次第です。ですから、1970年当時から西山地区
に対しては特別な目で科学者がいろいろと研究されたということを申し上げたいと思い
ます。以上です。
○丹羽委員 もう一つ、内部被曝の件なんですけれども、トロトラストについてはたし
か肝臓に集積するということで、カリウムのガンマでしたか、βでしたかのエミッショ
ンとは随分話が違って、αエミッターであるということがまず第1点です。
それからもう一つは、それが特に肝臓に集積して、私は今、思い出せないので次回ま
でにちゃんと調べておきますけれども、その線量はこの程度ではなかったです。たしか
発がんまでの潜伏期が20年から50年くらいでして、その間の集積線量はたしか5Gyと
か、相当すさまじい線量のように私自身は記憶しております。
ただ、間違いかもわかりません。だから、これは大事なことなので次回までに一回調
べてお話申し上げます。
○金澤座長 ありがとうございました。
それでは神谷委員、それから鎌田委員どうぞ。
○神谷委員 先ほど丹羽先生が御指摘になったトロトラストの線量の話ですけれども、
丹羽先生が御指摘のようにトロトラストの場合は東北大学の福本先生が非常に詳細な解
析をされているのですが、集積線量はグレイオーダーで、発症までは数十年かかるとい
うのが福本先生の御報告です。ですから、カリウムの場合とはちょっと状態が違うよう
に思います。
それから、先生の御専門の甲状腺の話をお伺いしたいんですけれども、西山地区で甲
状腺のゴイターの発症が有意に高いというような御報告を聞いたりもするのですが、そ
れに関して最近、何か新しい知見はあるのでしょうか。
○永山委員 検診を続けて、この前できた論文でも腫瘍性の病変は有意をもって高い。
以前出た自己免疫性の甲状腺ですね。抗体陽性のものはこの前のところでは出なかった
んですけれども、腫瘍性の腫瘤ですね。病変は有意に高いというふうに記憶しておりま
す。
○金澤座長 どうぞ、鎌田委員。
○鎌田委員 先ほどのトロトラストの件ですけれども、丹羽先生、神谷先生の御発言ど
おり数シーベルトというのが普通だと思うんです。というのは、染色体を見ますとすご
くばらばらな急性の染色体異常と同じようなものになっています。
ということは、同じリンパ球が同じところに何回も当たっているというような細胞が
たくさんありますので、決して数ミリとか、そういうレベルではないですし、シーベル
トレベルだと考えていいのではないかと思います。以上です。
○金澤座長 ありがとうございます。ほかにどうぞ。
○靜間委員 話が戻りますけれども、岡島先生の測定されたデータで69年と81年の測
定なんですが、被曝直後に体内に取り込んだセシウムというのは、この時点では生物学
的半減期で体外に排出されていると思いますので、原爆の直後に取り込んだものが生物
学的半減期で排出されるまでにいろいろな障害を残しているという可能性はあると思い
ますが、それを測るということはちょっと難しかったろうと思います。
それから、その下の内部被曝の線量が出されていますのはセシウム137だけでしたで
しょうか。1945年から85年までの内部被曝が0.1mSvというものが出されておりますけ
れども、セシウムの量がわかれば核分裂の周率というのはわかっていますので、核種が
どれぐらいできていたかというのはわかります。ですから、核分裂生成物全体の線量に
直したときにどれくらいかというのは、セシウムがわかればほかに換算はできますので、
線量の評価というものもできると思っております。
○金澤座長 これはセシウムのことだけなんですか。
○永山委員 これは恐らく上の数字のセウシムだけだったと思います。
○金澤座長 セシウムを参考にして全体をとなると、どれぐらいになるんですか。
○丹羽委員 すぐにはわかりません。ただ、このときに測られているのは原爆直後のセ
シウムではなくて、それ以降の核実験等でセシウムが摂取されたものだから原爆由来の
ものではないので、この値から換算はできないと思います。
○永山委員 今、先生が言われるほかの核実験というのは、世界のほかのところであっ
たものということですか。
○丹羽委員 そうです。
○永山委員 今、詳しいデータを持ってきていませんけれども、西山地区での値という
のは長崎市内の人だったと思いますが、ほかの地域の人よりも高いという引き算でセシ
ウムからの被曝が推定してあったというふうに記憶しております。
○金澤座長 ほかにいかがですか。
○靜間委員 もう一点補足させてもらってよろしいでしょうか。
前回のときに、最後にセミパラチンスクでの原医研と現地側との調査の報告を国際共
同研究としてされましたものを紹介いたしましたけれども、あのときにセミパラでは地
下実験がたくさん行われていて、それで地下水の汚染があったのではないかということ
と、たくさんの実験が行われているのでその集積があるのではないかということが言わ
れていたんです。それで、帰りまして原医研の星先生ともちょっと話をしましたら、セ
ミパラと核実験場は150キロ離れているということで、地下実験が行われているにして
も地下水の汚染の影響がそこまでは及んでいないということが1点です。
それから、多数の核実験の影響が積み重なっているのではないかということですが、
聞いてみましたら、これは核実験の後のいろいろな雲の流れとか、そういうものがあっ
て、それが必ずしも同じ方向には流れない。例えばドロンという地区があるんですけれ
ども、そこでの影響というのはほとんど1回である。ここにもありますけれども、1949
年8月29日の朝7時に核実験が行われて、フォールアウトを含んだ雲がその村に流れて
きたのが9時ごろだった。その雲が通り過ぎただけでその村に影響が出ているというこ
とでして、そんなにたくさん集積しているのではなくて1回での影響が出ているという
ことだそうです。 したがいまして、前回も言いましたのは内部被曝と外部被曝の量に
ついては大体同等程度のデータが出ていると言いましたけれども、そういう意味からし
ましたら広島、長崎での実験と似たような、1回の実験で起こったということが言える
のではないかと思います。以上のことを補足させていただきます。
○金澤座長 どうぞ、丹羽委員。
○丹羽委員 もう1つ、うっかり言い忘れましたけれども、内部被曝の方が危ないとか
危なくないという議論がよくあるんですが、一応理屈の上からも内部被曝、外部被曝の
評価は、組織に対してある程度均一にした線量で評価してもいいという議論がなされて
います。 理由は、ホット・パーティクルについては大きくなればなるほど線量が損を
する。ウエシテッド・ドースとか言っていますけれども、結局オーバーキルになるとい
うことで、線量効果関係がずっと直線ではなくて上の方になってくるとフラットになっ
てくるということから、ウエシテッド・ドースが1つは出るということで、直線性から
考えても、それから考えても、一応普通の組織線量で評価してもいいのではないかとい
う考え方があります。
ただし、プルトニウムの場合は沈着する部位などが骨表面で、その場合は標的になる
細胞が非常に多いので単なる線量だけでは評価できないということで、割と細かい評価
が既になされております。
もう一つは、ホット・パーティクル説に関してはバスビーさんという方とブランホー
ルさんという方が、非常に危ないと。特にそれはストロンチウムに関して危ないという
ふうに議論を展開されて、それはストロンチウムがイットリウムに崩壊して、そのイッ
トリウムがすぐに何時間というようなオーダーでもう一度β線を出す。その場合に、細
胞が細胞周期を回っていて特定のところへたまっているところにやられるから危ないと
いうふうな議論を展開されました。
これに関しては、今のところそれを支持するというデータは私自身ないと思っており
まして、一応普通の線量で評価して問題ないのではないかと私自身は考えております。
そういうことをコメントさせていただきます。
○金澤座長 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
いろいろ御意見をいただきましたので、まとめの段階でいろいろとまたディスカッシ
ョンをしていただくかもしれません。
(続く)