「身の程をわきまえろ!」とツッコミが入りまくりそうだが、現行のBMW M3クーペ(E92)の試乗をしてきた。
最近、最寄のBMWディーラーに試乗車が入ってからずっと気になってたが、多忙でなかなか行けなかったが、遂に試乗!
良い意味でも悪い意味でもなく、先入観とは全くの別物だった。
「乗ってないクルマのことは評価しない主義」の私だが、このポリシーが正しいことを実感した。
●エクステリア
エクステリアについては、過去にも何回か実物を見たことがあったが、
過去に白のM3を見ては
「白のM3ってカッコイイ!」
「白こそが一番似合うのでは!?」
と思っていたが、試乗車として用意された黒のM3を見て、
「うおお!黒、カッコイイ!!!!」
とあっさりと。。。
白のM3はボリューム感があって迫力があるが、デブで大柄にも見えるのだが、黒のM3は白よりもかなり小さく、シャープに引き締まって見える。
「M3」としての押しの強さがなく、それが逆に私のツボに入った。
お約束で、M3特有部品の写真。

カーボンルーフ。

フロント・フェンダー・ダクト

リアビュー。K2ギアのレガシィ用のリアバンパーにそっくり(笑)。

ホイール、タイヤ。
BMWらしいホイールでカッコ良いと思う。
タイヤも偏平率は40だが、245なので、そんなに薄くない。低偏平過ぎないのが、逆に迫力あって良いな、と思う。
さて、乗り込んで・・・。
●インテリア

インテリアはBMWらしい、地味なもの。
悪くないんだけど、Audi、メルセデスのように高品質じゃないし、ポルシェのようなスポーツカーとしての雰囲気もない。
まあ、それがBMWなんだよな。
私は好きじゃない。
ステアリングホイールは太い。
ちなみに、試乗車はMT。
左足ブレーキの都合で、かなり後ろ目にセッティングする私のシートポジションでも、後部座席の足下は思い切り余裕があるのが素晴らしい。
実家の先代TTクーペとは大違い。
営業さんは、私のB4を見て、
「トミーカイラのエアロですよね」
と。
「よくわかりますね!」
と言うと、昔S14シルビアのイジりもんに乗られてたそうで、国産のチューンドも好きだとのこと。
BMWの正規ディーラーの営業さんとしては意外なイメージ(私の先入観)で、好感度大。
●サウンド
アイドリング時の排気音は小さいながらも、衝撃音の連続で構成されているあたりが、
3世代前のE30 M3を若干彷彿とさせる。
が、エンジンが温もったら無音になり、走行時のエンジン音・排気音も極めて静かだ。
ギアを1速に入れ、クルマを動かす。
クラッチペダルが異様に軽い。
私のB4のクラッチが減ってきていて、ペダルが重くなっているのとの対比もあるが、クラッチペダルの軽さに驚く。
●エンジン・フィール
走り出してみて、まず、予想と違ったのが、エンジンが恐ろしく静かでクールなところ。
4L V8、420[ps]、40.8[kgm]というド級のスペックや、
友人のE30 M3の体験から、もっとド迫力のエンジンを想像していたのだが、恐ろしく静かだ。
そんじょそこらの高級セダンよりも高級なんだけど、そんじょそこらの高級セダンよりも静かなぐらいだ。
走り始めてしばらくは
「つまんねえ、エンジンだな。私のB4の方がずっと雰囲気あるよな」
などと思ったりもしたが、M3のV8からは、トコトン緻密さが伝わってくる。
「緻密感」。
これは、
現行TTクーペなど、現代Audiから強く受けていた印象で、私がBMWに対して抱いていたイメージとは異なっていた。
が、E92 M3からはとにかく「緻密さ」「精密さ」が伝わってきた。
踏まないと恐ろしく静かで従順なE92 M3。
では、踏み込んだら?
驚くべきレスポンスでエンジン回転数は瞬時にレブ付近までハネ上がる
・・・・・のだが、あくまでクール。
そこに「迫力」という演出はなく、加速する景色すらも冷静さを失わない。
そういう意味で、4L V8、420[ps]、40.8[kgm]というド級スペックからイメージする迫力や雰囲気とは無縁だったが、私は、モノ作りに携わる人間として、そのクオリティには感銘を受けた。
これは、Audi(現行TT、A3)に対する評価と同じ。
●シフトチェンジ
そのエンジンのレスポンスだが、ニュートラル時のレスポンスが特に凄まじい。
シフトアップ時、ニュートラル状態での針の落ちるスピードが異様に速いので、ニュートラルから上のギア接続へはかなりスピーディーに行う必要がある。
シフトダウン時、ニュートラルでアクセルを煽ると、レスポンスが良過ぎて、一瞬でレブ付近まで吹け上がってしまう。
挙句、6速MTでギアレシオがクロス寄りなので、その状態で下のギアに繋ぐとガツンとシフトショックが・・・・。
実は、この特性は
友人の、3世代前のE30 M3と全く同一。
E30 M3でその特性を体験済で、ちょっと苦労して慣れた経験があったおかげで、比較的早くに対応することができた。
シフトアップ時は、2速→ニュートラル→3速の一連の流れをとにかく速く。
シフトダウン時は、極めて軽いアクセルの煽りを入れ、間髪入れずに次のギアに繋ぐ。
E30 M3で体験していなかったら、このシフトチェンジにおける、独特の特性には試乗時間中には対応不可能だっただろう。
私のB4とはターボとNAの違いはあると思うが、ニュートラル時のこの吹け上がりと針落ちのレスポンスの違いは、たぶんフライホイールの軽さなんかなんだろうなあ・・・・。
私のB4は以前にも書いたが、シフトアップ時はエンジン回転数が落ちるのを結構待つ必要がある。
で、シフトダウン時の空吹かしは、スピードレンジにもよるが、M3よりも気合が必要だ。
クラッチ交換するときには軽量フライホイールに交換したいけど金がなあ・・・・・・。
まあ、私のB4はさておき、M92 M3におけるこのシフトチェンジ操作に必要なコツとエンジン特性が、3世代・20年前のE30 M3と同一であったのがちょっとステキだった。
●ボディ・足回り・ステアリング
ボディ・足回り・ステアリングについては、個別評価でなく、全体としてのイメージになるが、これも先入観とは全く違った。
過去に、E90 320i(ティプトロ)を試乗した際、とにかく「磐石!」というボディ剛性感に驚き、感銘を受けた。
「これが世界のセダンのベンチマークとなるわけだ!」と。
その磐石さに感銘を受けつつも、骨太過ぎて握れない感じ、「乗せられてる」感じが自分の好みではなかったが、かなり感銘を受けた。
・・・・が、E92 M3は、全くそういうフィーリングじゃなかった。
かなり軽快。シャープ。
1650[kg]という重量を全く感じさせない。
かなり意外だった。私が今まで抱いていたBMW観って・・・・・。
営業さんによると、セダンとクーペではその辺、だいぶ味付けが違うらしい。
セダンとクーペの味付けの違いもあるのかもしれないが、最近のドイツ車の傾向なのかな、と思った。
Audi TTクーペも
先代TTクーペでは、かなり剛性感をアピールしているが、
現行TTクーペでは軽快さ、シャープさを演出しており、剛性感は演出していない。
メルセデスですら、現行Cクラスでは剛性感の演出はなかった。
「ドッシリと重厚」「これでもか、という剛性感」というかつてのドイツ車のフィーリングは、最近ではランエボXやレクサス、最近のマツダ車なんかの方が強く、ドイツ勢はより高い剛性を確保しつつも、演出は軽快な方へと向かっている気がする。
●総評
繰返しになるが、機械としての「緻密感」「精密感」に感銘を受けつつも、スーパースポーツとしては迫力・演出には欠け、もひとつ魅力に欠けた(が、やはり運転後、数時間経つがテンションは高い)。
ディーラーを後にして、自分のB4を運転しながら、イジくり倒したECUと吸排気により、迫力とスピード感のある、このチューンドEJ20ターボは良いな・・・と思いつつも、各部のニブさが気になった。
上述のシフトチェンジ時のニュートラルでのエンジン・レスポンスはもちろんのことなのだが、脚周りなどもM3の方が「シャキッ」としていた。
いろいろと今後のチューニングの方向性を考えさせられた。
E92 M3は良いクルマだと思う。
後部座席も広いし、普通に走れば、本当に素直に乗りやすく、踏めばかなり速い。
ただ、税込1003万円の価値はわからんかった。480万円とか500万円ぐらいならわからんでもないのだが・・・・。
モノの価格って難しいし、買わない(=買えない)者が価格のことをあれこれ言っても寒いだけなのだが・・・・。
BMW観が大きく変わった・・・という意味ではとても良い体験だった。
やはり試乗は自分にとって、とても重要だ(ディーラーさん、ごめんなさい)。
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