■今回は本当に独り言です。
材料とか工業とかカテゴリーに関連する事です。
*************************
■どこにどんな腕が要求されるか?
どこにどんな溶接が要求されるか?
分かる人は少なくなってきました。
************************
■溶接のビードを見ても分かってくれる人も少なくなってきました。
人間の指ってすごいんですよ、
目ってすごいんですよ。
ビードを撫でて、肌を撫でてそれで品質って何となく分かるんです。
モチベーション一つでそういう出来は変わるんです。
************************
■日本の工業基準の保証って大抵1年
せいぜい伸ばして2年、無理言って5年、
それが要求です。
それが普通なんです。
でも職人さん達は、5年持つもの10年持つもの
引いては20年、30年持つもの
それを丹念に作って来てくれました。
***************************
■本当の値段ってわかりますか?
見た目に安い事だと思いますか?
何を何年、どんな使い方をして、どうメンテナンスするのか
そこまで考えて本当の値段が分かります。
それが
本当の設計なんです。
****************************
■日本人はその大切さを知っていた、筈です。
その助言の大切さを知っていた筈です。
素人が見て気にならない、ほんのちょっとの歪み
ほんのちょっとのズレ、ほんのちょっとの力のかかり方
それらが厳しい条件で
熱がかかり、圧がかかり、振動がかかり
その中でほんのちょっとの応力が集中すれば
信じられない所に信じられない穴が空く、亀裂が開く
それはもう、避けられないんですよね。
********************************
■こんなブログを書いている通り、
私は今、『ソレ』にまーったく関係ありません。
厳密には『ソレ』じゃ無く、『ソレの親戚』に関った中で
色々なことを教わり、学んできた、だけです。
*********************************
■世の中には無茶を言っていい物いけない物があります。
お金はどうやっても人が動けばかかるんです。
だからできるだけ「かからない様」にしてあげる。
何故なら『でき上がり』でしか人は判断しないからです。
車なら車の形と乗り心地しか人は見ないんです。
ですから如何に手間を抜くかと言う所で車もカイゼンが為されていますよね。
でも…絶対に手を抜いちゃいけないものはあるんです。
そこを手抜けば、
絶対に恐ろしい事が起こります。
本当に恐ろしいんです。
何故なら確率的だから。
**********************************
■例えば応力腐食割れ
絵では簡単ですが、肌を合わせて溶接するというのは本当に難しい事です、
だって、肌に切れ込み入れて、肌を溶かしこんで
かつ肌が鋭敏化する前に、溶接棒「ごと」なめらかに
ビードを連続に見えるくらい滑らかに溶接する
段差すら許されない、この意味を分かる人と分からない人。
■たとえユーザー会社が金が無くても
そこをケチったら『終わり』です。
それこそ、金型で連続鋳造する発明でもしない限り
その品質を保つことは不可能です。
そして緩やかに絶滅して言った業界はいくつもあります。
**********************************
■いつか製品としては可能かもしれません、
でも…継ぎ目は本当に無いのか?
振動は防げるのか?大体それをどうやって検証する気なのか?
どうするんでしょうね?
**********************************
■恐いのは『基準を満たす業者』なんざ探せばいるんです。
でもそれを一体何年使う気なのか?どうやって維持するのか?
既得権を取っ払ってでも、ユーザが技術者と
話をする覚悟があるのか?技術者の言葉を理解する
気概があるのか?
***********************************
■粗度で言えば、寸法があり、精度があり、3次元で見た歪みがあり
その上で肌が、何発仕上げなのか?
(最近は数字ですけど○ハツ仕上げの方が多いかな)
今までは2発と言いながら3発仕上げだったりして
そういう見えないサービスが積み重なって、初めて日本製の
驚異の耐久性が確保されていた様な物です。
**************************************
■『ソレ』は電池使い捨てのアイフォンじゃないんです。
4や5が毎年出て、ポイポイする物ではありません。
そこには本物の技術がありました。
モネルやインコネルやアロイといった特殊金属は
ほんのちょっとの違いですが性能や特性が全然違います。
つまり熱のかけ方を間違えると…
『性質が違う金属』に変わってしまうという事です。
伝導率も熱膨張率も違うという事は…
そこには「歪みの」違いが分かる職人も必要と言う意味だし
その前加工も、作業を頭に入れて調整しなきゃいけない。
************************************
■そこには、『チーム』があった筈で
『チーム』が守れなきゃ技術もへったくりも無いんです。
そこを踏み外してしまった業界は
二度と「同じもの」を作る事は出来ません。
規定圧力に達したら速やかに破裂する物しか作れなくなる訳です。
保証期間を過ぎれば、某社のタイマーの様に壊れる商品になる訳です。
『確率的時限爆弾』になってしまえば、あとは再熟成するには
熟成にかかった時間と同様か、それ以上の時間がかかります。
************************************
■極端に言えば、
このブログの前提がぶっ壊れる、とも言えます。
中韓と同レベルに陥ってしまう、と言うか
場数が少ない以上、
逆転は出来ないという現象になるでしょう。
そのラストチャンスみたいなものが、今回の事故であり
そこでどのように、「守るべき技術」と「守るべき体制」を維持し
速やかにリプレイス『置き換え』をするかどうか?
チャンスには前髪しかないんです。
直接『ソレ』には関係ないので
別に痛くも痒くもないのですが、日本人としては
勿体ないなあ、と思います。
*********************************
■もうちょっとすると、
適当な扱いで放り投げていると
『ついていけない』『今回は辞退する』そんなところが増える筈です。
出来る時だけおいしい思いができる時だけ
そんな会社もまた生き残っていけないでしょう。
どこで、誰にどんな礼を尽くすべきなのか
それが分からない組織はいつか痛い目を見ます。
値段だけで判断して、「・・・・・^^;」な出来になった時
取り返しのつく所とつかない所があります。
ちなみに提案をワクワクするとか言って提案するのは大抵ヤブ技術者です。
怖い怖い、と文句を言いまくる人の方がいい仕事をしてくれます。
************************************
■数字だけで仕事をする方が、世の中は楽です。
でも数字じゃ無い世界で、五感を生かせば
より良い仕事が見える筈です。
それを育成する為の『ソレ』で『ソレ』があったから
あんな羽やこんな回転体や、制御が可能だったのに
宮大工みたいに細々でもいいんです。
伊勢神宮の遷宮みたいに、20年に一度でもいい。
そういう育成や残し方をしない限り
今後技術は失われる一方です。
更に、「知っている」のと「出来る」のも違います。
『できる』を失った時、よそで探せるものと探せないものがあります。
しばしば恐ろしいのは、
限界を超えても
日本人はちょっとだけ我慢が出来るという事です。
そうして力を加えていくと、破断します。
それはまるで…「
金属の様な物」なのかもしれませんね。