■身の回りを沢山彩るステンレス、
とは言っても車には重たいのであんまり使われません、
それとどうしても異種金属だと金属同士の電位差で
電池になってしまうので、錆が出やすいので…
そう言えばキッチンのステンレス、大分304系が増えてきましたよね。
前はマルテンサイト系で磁性があったのに…
と言っても普通の人には、はぁ、だと思いますし
自分もそんなに詳しい訳じゃありませんが、最近の多品種化
高機能化は目を見張ります。
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■スーパーステンなどはアロイをも凌駕する性能を発揮する、場合もあります。
本当はもうちょっと単純な所から書きたいなと思ったんですが…
凄くいい資料のページに出会ってしまったので、
いきなり中級編でございます。
重たいですが
東北大学の資料が凄く分かりやすいです。
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■まず、色々な条件によってステンレスはいくつもの種類があります。
フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系、そして二相系
あとは固さが自慢の析出硬化系、色々と用途によって異なっているんですよね。
この辺りのレシピは残念ながら未だに、ヨーロッパそれも北欧が一定の強さがあります。
今一番大きいのはフィンランドのオートクンプ…じゃないかと。

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■とはいっても一般的に良くつかわれるのは、
オーステナイト系、SUS304,316L(ローカーボン)
稀にSUS316を欲しがる例もありますが今ローカーボンタイプしかありません。
(これは強度の問題でちょっとローカーボンじゃない方が頑丈なんです)。
あとは二相系やスーパー二相というマルテンサイトとオーステナイトの良いとこどり
(値段も高いですが…)があって、
最近特にそのスーパーステンが注目されているんですよね。
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■と言ってもそのステンレスにも弱点があります。
一つは弱くなってしまう温度があるという事
脆化って言います。
溶接もしっかりと溶し込みができないと
弱くなります。でも馬鹿みたいに熱をかけると熱応力で変形してしまいます。
この辺りは原発の弱点にもつながるんですが
腕でカバーは出来るんですがその腕がねえ…
あと鋭敏化って言って、合金成分にも変化が出ちゃいます。
だからSUSの溶接は何度もするとうまくいかなくなっちゃうんですよ。
よってSUSの溶接を綺麗に漏れなく出来るかと言うのは
職人さんの腕前になります^^
日本の職人さんのじいさんはその辺りが優れていて、安心できるって訳。
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■でもSUSにだって立派な弱点があります。
その一つが応力腐食割れ、何のこっちゃと思いますけど
熱をかけると鉄とかSUSって変形しちゃうんです。
反るっていうのかな??そんな感じです。
その変形の応力を計算しないと、やがて溶接面にずれが生じます。
だからレントゲンで撮ったりするんですよね。
そしてずれると…その断面に沿って腐食が進んで割れる時があります。
原発の細管溶接なんかは、応力がしっかり取れてないとこれが起きちゃうんです。
全体は綺麗でも、溶接個所だけがパッキーンってある日割れる、
大変ですよね?
だから原発の弱点は熱交換器だ(溶接個所が一杯あるから)
と言う事でこの部分の検査は物凄く慎重に行われています。
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■次に怖いのは孔食。海水環境、すなわち塩素イオンが悪さをします。
一度穴があくとあっという間に腐食が進みます。
チタンもこれには弱いんですよね。
自分は塩素環境下でのボルトで体験があります。
わずかな所から、振動等があるとあっという間にクラックが入ってバッキーン。
めったに起きる物ではなく、主には海水環境でさびるってわけです。
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■最後に粒界腐食
これはどっちかと言えば鋭敏化にも近いと言えば近い
溶接の腕が要求される所です。でも溶接で注意すべきに、
応力腐食割れがあってそちらはゆっくり冷やすのが対処
と言う訳で、極めて相性が逆なので
最近はローカーボン、つまり炭素を
冷やして防ぐようにしています。
【追記】冷やしてどうする冷やして^^;減らして↑の間違いですね、【追記終】
要するにSUSは適当な溶接をすると、
継ぎ目が弱点になりますよ、と言うのが一つの目安と言えるのかもしれませんね。
精密な溶接を要求されると、アルゴンなどのバックシールの徹底も
必要になる場合もありますが、それは設備や要求グレード次第
と言えるのかもしれません。
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冶金の世界も意外と奥が深くて、どんな温度でどうやって作るか
こういったレシピがあります。
鉄もSUSもそういうレシピの中で工夫して、開発が進むのですが
そういうのを新日鉄からポスコと言う韓国の製鉄会社が泥棒して
大問題になりました。
今は金属分析ができるので、全然楽なのですが昔は
その配合比率のレシピを、実験して、苦労して
ノウハウとして手に入れていたんですよね。
色んな配合割合に基づいて
その性質が決まってくるのもSUSの面白い所です。
もうちょっと安ければありがたいんですが
今はk当り320-350円程度、鉄の3倍程度します。
前はもうちょっと安かったんですが、SUSは随分と高くなっちゃいました。
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■そんなステンレスの世界で今注目を浴びているのが
スーパーステン、あるいはスーパー二相と言われる物です。
最近では
羽田空港の橋脚に使われて非常に話題を呼びました。
それまでも二相SUS、すなわち329J4Lなんかは
使われ出していたんですけど、それにしてもスーパーステンは
ちょっとした画期的事件でもあったんですよね。
お値段は確かキロ1500円クラスだったような?ちょっと漁ってみるか…
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■と言う訳でさびない鉄SUSについては、
温度であったりイオンであったり、そういう物の条件によって
腐食が違ってくるというお話ですが、
羽田空港についてはもうちょっと、特集してみましょうかね?
ちなみに、高いからベストと言う訳ではありませんので
それぞれ特性があって、強い弱いがあるという事は
申しあげておかないといけません。
温度、PH、暴露環境とかそう言った色々な環境について
様々なノウハウや経験、また、技術革新に基づいて
私達の身の回りのインフラは支えられていて、
中国系韓国系が盗んだり買収したりで猛追していますが
日本は、必死でそういう分野でも頑張ってきていて
層が厚いとは言いませんが、馬鹿にするような業界ではありません。
■時代とともに技術は変わります。
その技術を絶やさない様に、ちょっと理解をする、
常識があっと言う発想で入れ替わる、
そういうのが自分は大好きです。
そんなお話でした。