■これまで曲がりなりにも色んな方面から突っ走ってきた。
今回の福島第一の事故は、物理だけでも生物だけでも、化学だけでも
解き明かせない、複合災害であるからだ。
■その中で、一部触れてはいたのだが
知識、感覚的な自信が無かったので切り込んでいない部分がある。
それが崩壊熱と自己核分裂の話。
弘(2型)さんが何度か分かり易く教えてくださったので、
感覚として理解できるのに近づいてきた。
また、ベクレルも感覚的にようやく理解が可能となった。
(計算上ではなく、金銭感覚のような感覚がないと、
容易に数値を間違えてしまいます)
■事態が落ち着いた今(あえて落ち着いたと言わせて頂きます)
切り込んでいきたい。
■前にも1、2回くらい取り上げている、かも知れないが
ここは人の知恵を拝借した方がスピードとテンポ良く、α崩壊、
自発核分裂、使用済プールについて語れるだろう。
と、言う訳で、しばらく紹介記事を続けます。
面白くないでしょうが、今こそ振り返るには必要な知識です^^
訳分かんないと言う方はそのうち分かり易くまとめますので放置下さい^^;
以下モンテカルロさんの転記
今みても面白いと言うか今見るから意味が分かる。^^
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011年3月25日金曜日
福島原発の中性子線(中性子の出所についての考察)
ウランの自発核分裂(Spontaneous fission)の確率は随分低い、と教科書(八木1971、新倉書店)に書いてあった。自発核分裂とは、文字通りウランが2つに分裂する現象。ウランの電荷は+92だから、二つに割れたら+46。これはパラディウムに相当する。(
実際のウラン235の分裂では「非対称」に割れることが多く、セシウムやヨウ素、コバルトなどが生じる。)
自発核分裂は、量子力学のトンネル効果によって生じる現象で、原子核の構成粒子(陽子と中性子)を閉じ込めているクーロンバリアー(電磁障壁)を、いわば、お化けのように「すり抜ける」現象だ。核の電荷が大きい程、クーロン反発のため通り抜け確率は小さくなる。+2のα粒子は透過しやすく、+46のパラディウムは透過し難い。つまりα崩壊のほうが、自発核分裂よりも頻繁に起きやすい。
崩壊の頻度は、半減期(あるいは寿命)によっても記述できる。例えば、ウラン235(U-235)のα崩壊寿命はだいたい7億年。一方、U-235の自発核分裂の寿命はだいたい1京年(=一万兆年)。これは、自発核分裂より、
α崩壊の方が大雑把にいって1000万倍ちかくも崩壊しやすい、ということを意味する。(Wikipediaのデータではさらに差は開いて1010倍=100億倍だとある。)
自発核分裂も、
他の核分裂と同じように、分裂時に数個の中性子を出す。つまり、中性子線という放射線を放出するらしい。Wikipediaによると、その平均値は一回の核分裂につき約2個だという。一方α崩壊では中性子線はでない。出るのはアルファ線とガンマ線だけだ。
東京電力によると、地震発生時に原発は「自動停止」したという。この停止の意味は「連鎖反応を停めた」ということだ。連鎖反応(チェインリアクション)は、ねずみ算式に増える大量の中性子を生成する。この生成を制御できないと(というより意図的に制御しないのが)原子爆弾になってしまう。もちろん、爆弾原料に比べ、原発の燃料はU-235の割合が圧倒的に小さいため、爆弾にはなりえないが、それでも「臨界状態」へと陥ってしまう可能性がある。こうなると、高熱と強い中性子線が次から次へと漏れ出すような暴走状態となってしまう。原子炉は破壊し、最悪の場合、中身(放射性物質)が飛び散って周辺を汚染してしまう。原発で中性子線が観測されるのが良くない、とされる理由は、臨界状態になっている恐れがあるため、および、核燃料が原子炉から漏れ出ている可能性があるためだ。
今回の事故では中性子線が出ていることが原発敷地内で観測されている。出所が連鎖反応でないとすれば、自発核分裂しかない。上述したように、この分裂はU-235の場合は稀にしかおきない、と言われている。果たして、今回観測された中性子線は本当に連鎖反応、つまり臨界状態から出ているものではないといえるのだろうか?
原発の構造情報を頼りに、これまでに検出された中性子がすべて自発核分裂からのものだと仮定して、その数を算出してみよう。計算した結果があまりにも少ないとなると、それは検出不能のはずだから、今回検出された中性子は「連鎖反応」つまり「臨界状態」から出て来た中性子であるという結論となり、おそろしい事態を覚悟しなくてはならないだろう。一方、計算した結果が結構大きな数になっていれば、ある程度は検出されるだろうから、臨界になっていると決めつける必要はなくなり、ちょっとは安心できる。つまり、ある程度時間が経ったので、自発核分裂から出てくる中性子がそろそろ見え始めて来た、ということに過ぎないだろう。果たして、どっちに転ぶだろうか?頁を変えて、計算結果を示す。
011年3月26日土曜日
福島原発の中性子線(自発核分裂からの寄与の計算
前の考察に基づき、計算をはじめよう。
まず、福島第一原発で使用されている核燃料の規模を調べてみよう。核燃料はジルコン製の金属棒の中にまとめられていて、一本の棒の長さが約4m、半径が5mmだという。従って、その体積はπ(5.0/1000)2×4=7.5×10-5立方メートル。(これを7.5E-5と書くことにしよう。)
この燃料棒は束ねられて燃料集合体とされる。この燃料集合体には数十本の燃料棒が束ねられる。さらに、この集合体を数百個まとめて原子炉に格納する。東電のデータを見ながら、2号機の場合について計算してみる。(2号機は圧力容器が損傷、つまり原子炉に穴があいているのではと疑われている。)
2号機における燃料棒の束ね方は「9x9B」式で、72本が一組となって燃料集合体を形成している。その集合体が全部で548個分、原子炉に格納されている。したがって、原子炉内の核燃料の全体積は72×548×(7.5E-5) =3.0立方メートルと概算される。
ウランの密度は、おおよそ1.9E7(g/m3)だから、炉心中の核燃料の重量はだいたい3.0×1.9E7=5.7E7(g)となる。つまり約60トン。ウランの原子量は約238だから、60トンのウランは5.7E7/2.4E2=2.4E5モル、つまり、この数字にアボガドロ数6E23を掛けると、1.4E29個のウラン原子核が含まれていることになる。東電の資料によると、この内わずか2−4%がU-235だという。4%だと仮定すると、5.6E27個のU-235が原子炉には存在することになる。
ところで、U-235の半減期は約7億年。事故から今日まで約2週間、これを15日=0.5ヶ月と見なすとする。半月は1/24=4.2E-2(年)だから、崩壊したU-235の数は5.6E27(1-2-4.2E-2/7.0E8)=5.6E27×4.2E-11=2.4E17個、つまり10京個となる。
そのほとんどがα崩壊だが、わずかな確率で自発核分裂する。その割合はwikipediaによると、崩壊一回に対し7E-11だという。つまり、この2週間で2.4E17×7E-11=1.7E7回、つまり千七百万回の自発核分裂が起きたと推定される。さらにwikipediaによると、一回の自発核分裂で平均1.9個の中性子が放出されるというので、3.2E7個、つまり3200万個の中性子が、放射線として放出されたと推測される。
まとめると、事故当時、フレッシュな核燃料が原子炉に装着されたばかりだと仮定すると、この2週間で約3000万個の中性子が、自発核分裂によって放出されたと推算される。もちろん、事故当時は運転開始からしばらく立っていた訳で、実際にはこれよりは少ないはず。事故発生時の原子炉に、残っていたU-235が半分以下だったとしても、1000万個程度の中性子がこの2週間あまりで、自発核分裂を経て生成されたと思われる。一日あたりの平均とすれば、約100万個程度に相当する。(さらにU-238から発生する分も入れたら、もっともっと増えるはず。)
これらの中性子が原子炉の中で発生するならば、中性子捕獲断面積の大きい制御棒や、ボロン(ホウ酸)などに吸い取られてしまう。さらに原子炉容器の厚い壁に阻まれて、外部に漏れ出ることは、理想的には無いはずで、外部の検出器にはかからないはずである。
しかし、現実はそうなっていない。中性子線が微弱ながらも検出されている。よくないシナリオは、原子炉に穴が開き、そこから核燃料が漏れだしている場合だ。原子炉の外で、自発核分裂の中性子が一日に100万個も作られ、漏れた燃料が水たまりみたいな場所に偶然集まっているとしたら、それが臨界状態にいってしまう可能性がないとは言い切れないだろう。(その可能性はかなり低いだろうが。)
制御棒無しで臨界状態に達すると、爆発的な中性子線の増加が見られるはずで、それは現在起きていないのは明らか。東電のデータをみると、微弱な中性子線がほぼコンスタントに検出されているだけで、これは一定の割合で中性子を出す自発核分裂のシナリオによく合う。これはいいニュースだと思う。
しかし、連鎖反応の引き金となりうる中性子が、外部(外界)に出てきているのは、あまりよくない状況だ。大切なのは、この中性子線量がいきなり増えたりしないかチェックすることだ。
繰りかえすが、2号機は燃料が部分的にメルトダウンし、さらに悪いことに原子炉に穴が開いている可能性がある。外界(空気中)にはセシウムやヨウ素なども飛び散っている。早めに、燃料漏れの有無を確定し、有の場合はその場所の判別、さらに中性子線が問題ない場所から発生しているかどうかを調べる必要がある。放射能レベルが相当高くなってしまったようで作業は困難だろうが、早く解決すればするだけダメージは少なくなるはずだから。
(追記:アメリカの国立核データセンターNNDCのデータで自発核分裂の確率を確認したところ、Wikipediaのデータと系統的に100倍のずれがあることが判明。たぶん、打ち込みエラーだと思われる。)