このエントリーは生化学的な話です。
プルトニウムがやばいとか
東京は汚染されているとか
言うお話じゃありません。
■プルトニウム被曝事故についてはATOMICAが詳しいです。
プルトニウムの被ばく事故 (09-03-02-09)
詳しすぎてすぐに迷子になってしまいますけどね。
プルトニウム被曝研究のトップは実は中国です。
いい意味かといえば、そういう意味じゃありません。
■とにかく肝心なのはこの3つの情報
(*1) Ca-DTPA
プルトニウムを生体から排泄するのに有効なキレート剤。化学構造的にはCa-Diethylen-triamin penta acetic acid である。
(*2) 傷モニター
プルトニウムはガンマ線を放出しないので、体外から通常のガンマ線計測によって検出できない。しかし、プルトニウムから約4%の放出率で放出される17keVのLX線に着目し、特殊な薄型のNaI検出器を用いると、体外からLX線が検出できる。この測定器を傷モニターという。
(*3) オートラジオグラフィ
写真フィルムに放射性物質を含む試料を接触させ、一定の時間露出することにより生ずる感光した銀粒子の分布から試料中の放射性物質の分布を調べる方法。
■特に重要なのはこの2点
1)キレート剤で排泄できる。(金属ですからね)
2)プルトニウムは独自の検出を行う。
安全側?のあとみんにも
同じ様なことが書いてあります
■尚、プルトニウム被害が恐らく強かったと思っているのは
運転中に核燃料が飛び散ったチェルノブイリです。
確か、ソ連が放射性物質を排出する魔法の薬を開発とか言っていましたけど
キレート剤を使用したのではないかと推測されます。
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■一方今注目しているのは女医さんのブログです。
まじめな方なのか、文献の出展元を載せてくださっています。
医学書なので、機序がまじめに書かれています。
放射線と除染_11~プルトニウム移行排泄 [医学~臨床] [編集]
そして出るのです、フェリチンが。
プルトニウムは鉄移送経路を通って、体内を移動し
蓄積をしていきます。
ウランも、フェリチン小体の凝集に含まれていましたので、
同様の傾向を辿ると思います。
そして
骨と肝臓との相互移行が発生するそうです。
■
と言う訳で、複合被曝理論におけるきわめて重要な表現と見て
今回はプルトニウムに着目しているというわけです。
とは言ってもプルトがそうだから全部そうなわけは無くて、
そんな単純な話なら誰も苦労はしないんですけれどね。
■武田教授の言うTNF(TNPじゃないよ)も面白いのですが、
とりあえず手を広げるのはやめておきます。
ただ、金属蛋白にTNFをはじめとするサイトカインが絡んでいたり、
炎症部にフェリチンが多かったりと、この辺り、複合仮説に関する
ヒントと捉え、とりあえずは放っておこうかと思います。
意外に俗説も科(化)学なのですよ(笑)
引用)
今日は、昨日の記事に記した経路で体内に取り込まれたプルトニウムの、
http://mainichi-benkyou.blog.so-net.ne.jp/2011-03-30
血液による多臓器へ移行・沈着と、排泄についてです。
肺・消化管・創傷から吸収されたプルトニウムの一部は、血液に取り込まれて移行します。
水溶液中のプルトニウムは、プルトニウム同士が化学結合しやすく、重合体を形成します。
これを重合体プルトニウムと呼びます。
一方、イオンまたは分子状態で水溶液中に存在するものを、単量体プルトニウムと呼びます。
血液中に吸収されたプルトニウムのうち、重合体は肝臓に、単量体は骨へ沈着しやすい特徴があります。また、年齢によって臓器への移行率や分布が異なる事も分かっており、
成長期の方が速く血液から消失して骨に多く分布しやすいとされています。
【肝臓へ】
重合体プルトニウムは、肝臓・脾臓・せきしょく骨髄などに多く沈着します。
イヌの静脈内に投与したクエン酸プルトニウム(不溶性)は
約30%が肝臓に沈着したとのデータがあります。
沈着したプルトニウムは肝細胞内でフェリチンと結合してリソソームに蓄積され
いずれ網内皮系細胞内で凝集します。
イヌのデータによると、注射で投与されたプルトニウムは
1000日までは肝臓にとどまるものの、骨との相互移行によりバランスが保たれ
以後、ほとんど消失しなくなり、その後は半減期8年で減少していきます。
これら動物のデータから推測されるヒトの半減期は、40年とされています。
【骨へ】
血液内でトランスフェリンと結合しているプルトニウムが
骨内膜表面および骨内に選択的に沈着します。
骨内への沈着は骨表面で骨形成がなされている部分(類骨が覆っている部分)でおこります。
類骨を通して石灰化が起こっている部分まで侵入し、骨内へ埋め込まれた様な分布をします。
骨では常に骨代謝が行われていますが、プルトニウムの沈着は
骨形成部分に多く、休止部分に少量あり、骨吸収部分では最も少ないそうです。
骨からのプルトニウムの放出は、骨吸収に伴って骨から遊離する他ないので
骨におけるプルトニウムの半減期は長く、1972年のICRP勧告では100年でした!
その後、1986年の勧告で50年に訂正されていますが、いずれにせよ
プルトニウムが骨に沈着すると、人生の多くを高濃度プルトニウムと共に過ごす事になりそうです。
最後に、体内に取り込まれたプルトニウムの排泄についてです。
主な経路は、腎臓を経由して尿へ、または胆汁を経由した便中への排泄です。
ヒトでの注射投与後の全排泄量は、
最初の20日以内に5%、2年後までに10%、20年後までに19%、40年後前に22%と推定されています。
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参考)
あとみんから
(3)発がん性プルトニウムは放射線を出し、放射線を浴びればある確率でがんが発生することから、プルトニウムを体内に摂取するとがんになる可能性があるのは事実である。しかし、これまで実験動物は別にして、人類で、プルトニウムが原因で発がんしたと科学的に判断された例はまだない。過去に、軍事利用では許容量を超えたプルトニウムによる被ばくの例があるので、それらの例を見ていこう。
(a)米国マンハッタン計画(原爆製造計画)被ばく者集団
1944年から1945年にかけて、原爆を製造するプロジェクトであった「マンハッタン計画」に従事した化学専攻の大学生たちが、粗末な化学施設での加熱工程で硝酸プルトニウムの蒸気(ミスト)を吸入し、うち26名が許容量以上の被ばくをした。全員が当時20代前半の若者であった。
追跡調査を続け42年後の調査では、それまでに7名が死亡し、その死亡原因として2例の肺がんと1例の骨肉腫が報告されている。しかし、7名の死亡者は、特にプルトニウム沈着量が多いというわけではない。生存者の中にはプルトニウム沈着量が死亡者より多い人たちもいた。この事故でのプルトニウム沈着量の大小と死亡との間には、直接の関係はなかったとされている。
(b)米国の末期がん患者への実験投与
第二次大戦中、軍事的な目的から末期がん患者の志願者18名に、当時の許容量の10倍から100倍のクエン酸プルトニウムを静脈注射し、排泄物から評価の根拠となる有用なデータが得られた。このときは障害発生の事例はなく、末期がん患者とされながら長期の生存者もいたと報告されている。
(c)米国ロッキーフラッツ火災事故被ばく者
1965年、核兵器製造用のプルトニウム工場にて火災事故があり、酸化プルトニウムのエアロゾル(ほこり状の微小粒子)を吸入し、400名の従業員のうち25名が許容量を超えた被ばくをした。しかしその後も被ばくの影響は報告されていない。
この例は、酸化プルトニウムの粒子径が正確に評価されているのが特徴である。このとき、米国のタンプリンという人物がプルトニウム「ホットパーティクル仮説」を提唱した。これは、粒子状に固まって体内に摂取されたプルトニウムは、均等に分布して体内に摂取された場合の11万倍以上も危険であるという仮説で、いずれ全例が肺がんになると予測し世間の注目を集めた。この説をよりどころとしてプルトニウムの利用に反対する人たちもいた。しかし実際には影響が現れなかったので、逆にタンプリンの「ホットパーティクル仮説」の誤りが実証された例となっている。
(d)米国の金属プルトニウム片侵入創傷組繊検査例
1957年頃、米国でプルトニウム金属の機械工作に従事していた作業者が、プルトニウム金属を掌に刺傷する事故が8例あったと報告されている。事故後4年以上経過した1例に前がん症状類似の所見が報告されている。人体組織で発がんの可能性を示した唯一の具体例とされている。この前がん症状類似の所見があった部位を放置したら、本当にがんになったかどうかについては、学者の中でも意見が一致していない。
(e)中国核工業部事故被ばく者例
1964~1985年の間に、吸入13例、創傷侵入2例が報告されている。吸入の最大摂取量が許容限度の約200倍の例もあった。しかし、この例では有効な治療法により急性影響の発生を防止することに成功し、現在まで影響が認められていない。有効な治療法とは、「キレート剤」の投与である。キレート剤とは金属イオンと結合しやすい有機化合物の一群で、特定の金属を選択的に体外に排出する目的で使用される薬品である。なお、1例のみ12年後に急性白血病による死亡例がある。しかし、この例ではプルトニウム摂取量が極めて少なかったため、因果関係はないと報告されている。.