七夕生まれの君へ。
今年も七夕がやって来ました。君も日付が変わった瞬間、本当に7日になったと同時に陣痛が始まり、慌てて病院に行った事が昨日の事のように思い出されます。
みんなに祝福されて、大きな声で生まれて来た君。
もうあれから18年が経ったのですね。
病気が分からなくて、足が痛い、足が痛いと泣きながらお母さんと通った幼稚園、同じ年の子の何倍の時間をかけて通っていたけど、君は幼稚園に行きたくないって言った事は無かったね。
小学校では、廊下を走ってきた上級生がぶつかって来て、足の骨を折った時は、病気の事が分かっていたので、本当に心配しました。
中学生になった頃は、もう歩けなくなってクルマ椅子でしたが、毎日、親と登下校するという条件で、介助員さんと、階段を上がり下がりする昇降機が用意されて、雨の日も雪の日もお母さんと一緒に学校まで通った事も、つい昨日の様です。
春は桜の花を眺めながら、初夏の新緑の木漏れ日の中、秋は散って行く街路樹の下をクルマ椅子で通って、その最中に見つけた季節の移ろいを、仕事から帰ってきたお父さんに嬉しそうに話てくれる君の事が、お父さんは大好きでした。
そんな君も18歳になって高校三年生。
来年からは社会に出てゆくのですが、クルマ椅子のままで働ける環境、介助が必要な君が通える環境の仕事が少ない事が今は一番心配です。
正直、なかなか思う様に行かない事の方が多くて、本人もそうですが親の方も気が滅入ってしまいがちになるのですが、そんな君は、介助の人をお願いして、自慢の Nゲージ の列車を持って、持って行った Nゲージ を走らせることができるジオラマにある模型店に行って、思い切り走らせて気分転換したり、電車や地下鉄、バスの博物館に行ったり、お父さんとお母さんと離れて自分だけで行動する事も多くなりました。
一番驚いたのは、一生懸命にいつの間にか作文を作って、オリンピックの聖火リレーの走者に選ばれた事は、正直、お父さん、お母さんの人生で一番の驚きでした。
いつも、お父さんやお母さんの後ろで付いて来ていた君が、自分の考えを持って自分で行動する様になった事に、お父さんもお母さんも嬉しく思う反面、正直、寂しさもちょっぴり感じています。
六歳になって、二十歳までしか生きて行けないと宣告されて、覚悟の毎日でしたが、医学や理学の進歩で、そのタイムリミットも少しづつ、少しづつ伸びていますが、その為に飲む薬も年齢と共に数が多くなり、命を守るためとはいえ、君の努力と、文句ひとつ言わない君の姿に複雑な思いでいっぱいです。
腕も肩以上に上がらなくなって、内臓も弱って来ていますが、どうして、君は辛いとか、しんどいとか一言も言わないで笑顔で居られるのでしょうか。
君はこう言ったね。
お父さんと、お母さんと、僕と三人で土地を捜して、間取りを決めて立てたお家が一番好きだと。家でお父さんとお母さんと過ごす時間が一番好きだと。
高校生の君を、トイレに行くとき、お風呂に入る時、寝る時、おんぶして、抱っこして移動するのは、なかなか大変なんですが、考えてみると、高校生になっても、君の温もりを感じる時間が長い事は、世界中の親子の中でも幸せな事なのかもしれません。
8月には、また、短い期間ですが入院が必要になってしまいました。
病院の事や病気の事を、忘れて、のびのびと生きる時間を与えてあげたい、現実的には今の君には実現できない、普通の人には当たり前の時間を、少しでも経験出来たら、そんな事を毎日考えています。
できたら、素敵な恋や、色々な恋愛も経験できたらなんて、年頃の君を見ていると、そんな思いもよぎります。
身体は不自由ですが、できる事はたくさん経験して、どんな18歳の若者より濃密な時間を過ごせたら、そう願って止みません。
君の歳から、18歳は「成人」です。
どんな「大人」になるのでしょうか。
どんな「人生」が待っているのでしょうか。
身体はしんどくなって来ていますが、君にとって、どんな18歳の新成人にも負けないステキな一年を送って欲しい、そうお父さんもお母さんも思っています。
ケンカもして、大きな声で笑って、また、楽しい一年を、君が大好きな、この家で親子三人で過ごしましょう。
生まれて来てありがとう。
七夕生まれの君へ。父より。
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Posted at
2021/07/07 22:44:45