自動車ジャーナリストと巡る東京モーターショーで、五味康隆さんや石川真禧照さんが異口同音に言っていた言葉が、「スズキ」と「マツダ」の評価が低すぎるという言葉だ。
確かに、スズキは先代のスイフトで、造り込みの大事さに開眼し、それが「キザシ」に集約されたと言っても過言では無い。
エンヂンも正直、以前のスズキの軽は特に、メンテを怠ったり、走行距離が伸びると「白煙」を吐く個体が多かった。
白煙 未だに白煙を上げて走る軽自動車が多いのには参った!
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マツダも昔々は、防錆が悪く、アチコチがすぐに錆びて酷いモンだった。
それでも、斬新なデザインや、その他のメーカーに無い個性が受けて新車にモデルチェンジして、最初は爆発的に売れるけど、月を経る毎にどんどん販売台数が減って、それがまるで男子の小水が描く弧の様だったので「マツダのションベン・カーブ」などと業界では揶揄されたもんだ。。。。
そして決定的だったのが両社共、泣きたくなる位、下取りに出すと安くなってしまった事だ。
しかし、その両社共に日本のクルマの歴史に名を残す名車が沢山あることも事実で、スズキの場合、このクルマがあったからこそ今があるというクルマが30歳を迎えた。
「アルト」
僕の世代には、「アルト47万円」というCMがすぐに思い出されるくらい画期的な軽自動車だった。
当時は、軽自動車最大の危機的状況で、正直、軽自動車不要論まで出ていた。
日本のモータリゼーションの発達過程では、ファーストカーとして多くの軽自動車が輩出され、ファーストカーとしての地位を確立していた。しかし、高速道路網が発達し、普通車の値段も下がってくると、軽自動車の需要は激減し、税制等で優遇はあったが、如何せん中は狭いし動力性能も・・・という事で、敬遠される様になってきた。
そうすると、軽自動車達は一斉に、ファーストカーの夢を捨て切れず、豪華に華美に見えるデザインにはしり、それが限られた寸法の中で行われた結果、実に陳腐なモノになってしまっていた。そこへ、経済的にもゆとりが出て、女性の免許保有率も増えて来た時期に、セカンドカーとして割り切り、機能を充実させ価格を最大限抑えたアルトを発売したのだ。
果たせるかなアルトは、あっと言う間に日本の道路に溢れる結果となった。それから、軽自動車は息を吹き返し、また、新たなステージを歩む事になった。
最初は安いというキーワードで売れた「アルト」だが、代を重ねる毎に、ツゥインキャムや回転ドライヴァーズシート、スライドドアの採用など常に革新的なモデルだったのだが・・・
スズキのメインステージには、最新のクルマではなく、ピカピカの初代アルトが飾られていたのが印象的だったが、それが逆に今のアルトを表している様で感慨深かった。
そのステージの後ろには、最新のアルトが置いてあったが、まさに初代と比べると晴天の霹靂、豪華な造り込みに時代の遷り変わりを感じ、そして、今アルトがどうあるかが逆に問われていると感じた次第だ。
そんな逆風吹きすさむアルトだが、新しいアルトにも先代から受け継がれた、優しさがキャリーオーヴァーされていた。
フロント・サイドシルが先方に行くと一段低くなっており、乗り降りの際に足が運び易くなっているのだ。
ちょっとした事だが、こうしたさり気なさが大事だと僕は思っている。
「小さなクルマ大きな未来」のキャッチだったスズキも、今や普通車にもどんどん新しいクルマを送り出している。
「スズキが評価されていない」、一番のクルマが「スプラッシュ」かもしれない。
CMでは、女性向けの様なイメージで売り出されているが、いやいや実際に乗ると、意外以上にしっかりとした足回りに、シートなども硬質。
これは・・・と思ったが、石川さんが、その謎を解いてくれた。
つまり、スプラッシュは欧州でオペルにOEMされる。その為に開発にはかなりオペルからリクエストが出てきたそうだ。
そのうちのひとつが、アウトバーンを140km/hで走行して左コーナーに突入した時に前方が渋滞。それを安定して安全にクリアーできる操安性を備えていること・・・・
これは、かなりハードルの高い要求だが、スズキはほとんどこのリクエストに応える事が出来たと言う。それを聞くと、あの足回りのフィーリングに納得が行く訳だ。
それなのに、オシャレ感ばかりが強調された宣伝では、あまり実力が伝わらないのが残念で仕方ない。
そして、これまでのスズキでは考えられなかった「大型車」が「キザシ」だ。
エクステリアなどは、語り尽くされた感があるが、僕が一番気に入ったのがメーターのデザインだ。
どっかのオプティロンなんたらに影響されて、最近の各社のメーターは「赤や青」のまるで歓楽街のネオンサインみたいなデザインが流行っているが、「キザシ」のメーターはそれらに反して硬派だ。
モノトーンの色調に、カチリとした書体。
さらに僕のハートを鷲づかみして離さないのが、放射方向性文字だ。
こうした文字盤のデザインはクルマには少ない。
これを見ていて僕の脳裏に浮かんだのが、ロレックスの「デイデイトⅡ」で
シンプルでありながら、存在感あるデザインのメーターに、色仕掛けのメーターの多い昨今、清々しい清涼感を覚えた。
「キザシ」をトップモデルに据えた、新しいスズキのラインナップ。
果してアルト以来のスズキの評価を変えるか?大いに注視してみたいと思うのだ。
Posted at 2009/11/01 01:20:19 | |
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