ちょっと前までは、クルマ椅子では何にもできないなんて正直感じていた。ただ、一昔前とは違って、何かが変わってきている事も感じていた。
元気に生まれて来て、人と何も変わることなく育てて、大きくなって、ある日ふと受けた検査で自分の子供の人生が、親である自分より短い事が分った時、どんなに絶望した事か。本当はもっと早い時期に、子供の自由が奪われ不自由な時間を過ごす事になる診断だったが、何とか、その予想も覆して過ごしてきたのだが、それも。
クルマ椅子では、普通の生活は送れないだろうと思っていた色々な事が、だんだんと変わりつつある。自由に移動したり遊んだり。
身体が不自由でなければ何でもない事も、クルマ椅子では「無理」と考えられてきたことも、少しづつ出来るようになって来た。
梨や、林檎や、ブドウ狩りなんてクルマ椅子ではと思っていたが、フト調べてみると意外にも、それが可能だというブドウ園があった。果物が豊富な山梨県の甲府にある
古柏園 がそうだ。
普通より棚を低くして、クルマ椅子でもブドウ狩りができる。その他の施設もバリアフリーを謳っている。
古柏園HPより (クリックすると拡大表示)
棚を低くして、トイレやその他の施設も、身体に不自由な人にも使いやすい様に整備しているというHP を見て、一も二もなく僕は予約した。
前日までの大雨も止んで、少し地面の状態が心配だったが、気温もぐんぐん上昇して、車窓から見える地面は結構乾いて見えた。その希望の
古柏園 は、国道を一本入った県道の脇にあった。
奥にはブドウ棚が見えるが、そこはBBQが出来る広大な食事処。手間には売店やバリアフリーのトイレなどが完備!
前進駐車をするとヘタクソとよく言われるが、クルマ椅子リフトを降ろすには前進駐車しかできないのだがねぇ。
(クリックすると拡大表示)
広めの駐車スペースが広がり、奥にはブドウ棚があって、そこはBBQができる全天候型の食事処だった。そして広い売店があって、バリアフリーのトイレもあって、実際に使ってみたが、広さも手入れも行き届いてクルマ椅子でも問題なく過ごせそうだ。
なにより駐車場から奥のBBQのスペース、売店、トイレも段差が無いというのが、意外に凄いものだ。
僕が選んだのは、せっかくクルマ椅子でも、ブドウ狩りを楽しめるのなら、めいいっぱい山梨のブドウを堪能しようと考え
「食べ放題コース(ぶどう園にて摘み取り食べ放題 制限時間1時間) 高級品種 \1,080- 」
をオーダーした。
ブドウ狩りが出来るぶどう棚は、駐車場や売店のある場所から離れたとこにあって、通常は園のクルマで移動するらしいのだが、ウチの場合クルマ椅子があるので、園のクルマの後ろについて行って現地まで移動する事になった。
園のクルマについて行ったのだが、まぁ想定していたが、フツウに走るので実に困った。クルマ椅子を載せて走ると、ちょっとしたカーブでも
大減速 しないとクルマ椅子に乗っている住人に恐ろしいほどの負担がかかるのだ。そうしたクルマ移動用の、サポートのしっかりしたクルマ椅子もあるのだが、わざわざそれを用意する家庭は殆ど無いだろう。
なんたって移動用と、普段生活用のクルマ椅子を二台持つなんて、場所の問題もあるけど、費用だってバカにならない。ちなみに、ウチの簡易的な 電動クルマ椅子 も、補助が無ければ
約70万円
ちょっと見るのと、買うのではえらい差があるモノなのだ。(閑話休題)
クルマでの移動を最大限考えた専用のクルマ椅子。ただ、これだけですべての生活がこなせるかは別問題。
これをセカンドカーにと思うだろうけど定価が 15万円 !。しかも2台目だと補助も期待できない。
さて、フツウに走るハイエースの後を遅れないように細心の注意をして、目指すブドウ園に到着した。
ブドウ園の回りは自然がいっぱいで、ちょっと昔のクルマのカタログの様に
久々の登場、僕の最初の愛車 510ブル の最後期取扱説明書の表紙。
狙って草むらの中に、その名も
ナチュラル・ハーブ と自然色のボディカラー を自認するセレナを止めてみた。
さすが‼ナチュラル・ハーブと自然色を自認するだけあって、本当に自然に溶け込んでいるセレナ
クルマ椅子をリフターで降ろし、ブドウ棚を見回すと、
確かに通常より低いぶどう棚。クルマ椅子でも手を延ばせば・・・・(子供はかなり背伸びが必要)
通常より低いブドウ棚が広がっていた。早速、ハサミを借りてブドウ狩りを始めたのだが、低くされたブドウ棚でも子供にはちょっと高めで、クルマ椅子から背伸びしなければ、ちょっとキツイ感じだった。
そうそう、あと一点、これからブドウ狩りをされるクルマ椅子の方にアドバイスなんだが、薄手の軍手などがあった方が良いだろう。というのは背伸びしてブドウにハサミを入れる際に、ハサミを起こしたような感じで使うので、指孔の根元で指の皮膚を噛んでしまい痛い思いをするので、樹脂で指孔を覆ったハサミでない場合は注意して欲しい。
指孔の根元で指の身を挟んでしまう。指孔が樹脂で覆われたモノなら大丈夫。
ブドウ狩りのスタート時には、育てられている品種を説明してもらったが、半分しか頭に入ってなく(笑)
みずみずしいブドウがいっぱい!これが一時間食べ放題なのだ。
これは、多分・・・・(苦笑)巨峰だろう。・・・・きっと、たぶん。。。。
とにかく、普段スーパーや果物店の店先で、ちょっと気軽に買うのはという感じの高そうなブドウがたくさん実っていた。
え~と、これは・・・とにかく甘くて、みすみすしくて、どれもこれも美味しい!
想定外だったのは、あれほど普段は、ひと房のブドウを独り占めしたい!と思っていたのだが、実際にひと房食べてみると、意外に食べ応えがある事だ。
普段は食えねぇぞ!と奮起するが、意外に数が進まなかったが、街で買えばひと房でも結構な値段がするので、自然に囲まれて、家族でワイワイする楽しさも考えれば実にリーズナブルだったと僕は感じている。
周りでフォローして、房を引っ張ってハサミを入れなければブドウを収穫できなかったが、それでも自分の手でふた房、収穫できたことに子供は大喜びだった。
一時間の激闘が終わると、クルマ椅子のタイヤは泥だらけになっているので、水道を借りて、泥を洗い落として (タオルは無かったので、洗車用のタオルをひとつ使った) 、元の場所に戻って BBQ を楽しんだ。
いやぁ実に広い食事処。頭の上はぶどう棚!!我が家以外には、2家族しかおらず独占状態だった。
今回は、豚肉と牛肉の食材を用意してもらったのだが、これ以外に、ご飯とお味噌汁に香の物が付くのだから、こちらおかなりリーズナブルに楽しめる事が出来る!!
野菜もたっぷりでお肉の量も十分!満腹間違いなし。
今回、バリアフリーという事で、
古柏園 を選んだのだが、正直、もう少しここをこうすれば、あそこはという点は幾つかあるが、それより、バリアフリーを目指し、クルマ椅子の人にも健常者と同じ夢や楽しみを与えようと努力し、具現化している姿勢には大いに賛同出来るものがある。
自然のモノを相手に、そして、こうした人を相手にする事は実に大変だろうと思うのだが、こうした試みの農園がもっと増えればと切に願って止まないのだ。
またひとつ、家族と子供にとってかけがえのない場を提供していて頂いた
古柏園 さんには心からお礼を述べたいと思うのだ。
ありがとうと。
Posted at 2018/09/30 04:05:23 | |
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