ここに貴重な画像がある。
これはR30のレイアウトを描いた「櫻井眞一郎」自筆の図面と、ツゥール類だ。
細かく見ると手書きながらの、線の揺れと滲みが散見されるが、遠目に見れば現代のCADも恐れおののく緻密性とバランスの気迫が迫ってくる。
「図面は現場への設計者の唯一の意思表示だ」
とは櫻井の言葉である。
単純に正しく寸法に沿った図面を描いても、それが理解できない図面であれば、モノができないし、間違った解釈をして設計者の思いとは違ったモノができてしまう。。。
僕が図面を引き始めた頃、もちろんCADは存在していたが、最初の数ヶ月は一切の定規やシャーペンを使わせてもらえずに「フリーハンド」で図面を描かされていた。
頭に描いた物体の大きさ、寸法を、形状を定規などを使わなくとも図面を描く者の頭に叩き込む為であった。
現代は、すでにCADが主流でフリーハンドでなんて図面を描く事は皆無である。
これがかつては、
特殊な製図用のペンに、インクを吸わせ、力を均等にかけながら用途に合った線や文字数字を、それぞれの決った太さで描く事が、設計する以上に大切な技術者のテクニックだった。
ここでちゃんとした図面が引けなくては、まさにモノができない・・・
いくら数学が得意でも、形をイメージする事が得意でも、それを自らの手で図面と言う世界で表現できなければ、まっとうな技術者とは言われなかった。
これがブルーバードで言えば510の頃になるとCADが入り始めたのだが、それでもまだまだ「手描きの図面」が主流であった。
この頃になると流石にペンを使う事が無くなったが、それでも製図用の鉛筆や、それを削る「芯研器」と呼ばれる製図道具は必需品であった。
そして現代・・・
すべての図面はCAD化され、全ての部品を組み立てた組図を作成すれば、そこからお気軽に部品の部品図、部品図同士の結合図、部品と部品が干渉するかの干渉チェック、果てには現場での組立作業のシュミレーションさえできる様になった。
図面の世界は、ある意味技術者の手を離れ、ドラフターと呼ばれる図面を描く専門の職種の人たちに図面化を委ねるようになった。
ある意味、技術者達の負荷は減ったが、二次元でイメージした物体を3次元にイメージしなおす力量や、全体の部品の相関関係を組み立てる力量が落ちてしまったようにも思える。。。
もはや図面を引いて、実際に組み立てたら、動かなかったとかスティアリングを右に切ったら左に曲がった・・などという、今からみれば信じられないようなミスも無くなったが、モノをクリエイトするという喜びは半減したように思う。。。
もはや技術者は夢をもてない仕事なのか?
櫻井眞一郎の図面を眺めながら、僕は遠くを見つめるのであった。。
Posted at 2008/04/29 13:53:25 | |
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