もう何十年も道路事情が良くなり、パンクの心配が少なくなり、スペアタイアの存在も多くのドライヴァーの記憶から遠のいてしまっているが、僕が子供の頃は、まだまだ未舗装路が多く、保安基準でも装着タイアのサイズのスペアタイアを載せておくことなんて言うお決まりがあったので、どのクルマもデカイ、標準サイズのタイアをスペアとして車載していた。
そんな影響で、二代目のフェアレディZ、S130は主な輸出先の北米では、ラッゲージルームのドライヴァーサイドに、SST、スペースセイヴァータイアが載っていたが、石頭の日本の運輸省は、前例がないというお得意の論理でSSTを認めなかったから、
SSTが認められなかったS130Z前期は、デンっと標準サイズのタイアが載っていて邪魔だった。
ラゲッジルームの面積のほとんどを占める形で、デンっと載っかって貴重なスペースを犠牲にしていた。
そうしているうちに、外国からの圧力と、櫻井眞一郎を中心とした業界の陳情が功を奏し、S130Zも後期からはSSTが認められ、R30スカイラインからは「テンパータイア」も認可されるようになった。
そうなると、薄い軽いスペアタイアは、置く場所の自由度が増して、トランク内に立てて側面に貼りつく様にとか、前後のスペースに立て掛けられる様になった。
そんな中、いやぁ初めて見た時にビックラこいたのが、初代アルシオーネで、
走る三角定規とか、スバルのCADには曲面と曲線の指示がないなどと散々陰口を叩かれたモンだ。(笑)。
鋭角 初代アルシオーネって何だったんだろう?↓
https://minkara.carview.co.jp/userid/124785/blog/755953/
トランクのどこかにスペアがあるだろうと捜すも見つからず、取説を見て初めて気づいた置き場所が、
トランクの左右、前後、底面ではなく「上」にスペアがあった。テンパーとは言え重かった。
ウエッヂシェイプとは言え、どだい薄い上下幅に燃料タンクという事で、スペアタイアはトランクの「上」に吊られていた。
まぁテンパーなんで、薄くて普通より軽いとはいえ、実際に出し入れしてみると大変だったモンだ。
しかし、上には上がシッカリいるモンで、なんと標準タイアで、まさかこんなところにという柔軟な発想でスペアタイアを隠した「偉人」が存在した。
1950年台中盤から、1960年台、欧州はおろか世界中でノックダウンされ、実は壊れるのはフランス車なんで仕方ないが(笑)、名車と言われた、「ルノー ドーフィン」がそうだ。
曲面とまろやかな曲線でデザインされたドーフィンは見た目お洒落なクルマだった。
曲面とまろやかな曲線でデザインされた「ドーフィン」は、実におしゃれな雰囲気が漂う、まさにフレンチ・コケティシュなクルマで、
当時のルノーお得意の RR 方式でエンヂンが後方にあり、室内は静かだし広くて使い勝手も良かった。
この頃のルノーの方程式通りの「RR」方式で、室内は静粛性が高く、広かったので、デザインヨシ、使い勝手もヨシとくれば売れるのも当然で、ある意味ルノーの良い時代の代表する一台であった。
しかし、いざスペアタイアを取り出すとなると、カエルか魚類なのかと思わせる姿形に結構人々は驚いたモンだ。
ドーフィン のタイア交換で魚類を思い出した人は結構多かった様で、欧州でも今でもネットネタになっている。
RR方式で、コロンと丸い小さなヒップを実現するために、リヤにはスペースは無く、広い車内は犠牲にしたくないし、フロントトランクも狭くしたくない・・・という事で、ルノーの技術者はこんなところにスペアを仕込んでしまったという訳だ。それが、
より目のヘッドライトに凸型のバンパーデザインも相まって「べぇ~」と言う感じでスペアが出てくる・・・
健康診断のベロを「べぇ~」と出したように見える、フロント部分にスペアを隠してしまったという次第だ。
通常はカヴァーに隠れて見えないが、カヴァーを開けると、これは同時代の「ドーフィン」のクウペ版「カラベル」なんだが構造は「ドーフィン」と同じで、
ルノーのスペアタイアの保管の様子はこんな感じ。上唇に下唇で口の中はと言う感じ(笑)
正に上唇と下唇があって、口の中は・・・というデザインだった。
「ドーフィン」は見た目のインパクトで、今でも欧州ではネットネタでたびたび出てくるが、これが英国になると、生真面目な性格が構造にも表れるというスペアタイアの隠しモードが存在した。
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Posted at
2021/08/01 09:13:20