あぶ刑事ですっかり有名になってしまった「F31レパード」。
対するは、初代が予想外に売れてホクホク顔の「Z20ソアラ」・・・
初代レパード は、リヤのピラーをビハインドするなど、それまでのデザインの手法とはまったく異なったテイストでデザインされ、エクステリア的には欧州の名だたるカロツェリア達の度肝を抜いた、日産痩身のクルマであった。。。
しかし、如何せん1800の訳の分からないグレード設定があったり、旧態依然のL型エンジンでは、新装開店大排気量ツゥインキャムのソアラの前では精彩を欠き、販売台数では最後までライヴァルに差を開けられっ放しであった。。。
一方の初代のソアラは、日本人好みの直線と面で構成された、シンプルな中でも重圧感のあるデザインで、トヨタの予想に反して大ブレークしたモデルであった。
また、クーペデザインのABCピラーの比率6:4の黄金比率と、さらに、それぞれのピラーの延長線は、ある地点で集約する・・といった、美しいクーペ・デザイン理論を確立した事でもエポックメイキングなクルマであった。
そういった、バックボーンから、それぞれの二代目が創生されたのだが、ここにデザインが決るまでに面白い現象が起こったのだった。
まずは、ソアラの最終実物大モックアップをご覧頂こう。
ピラー部のスリットなど、細かい部分では生産車と異なるところはあるが、殆ど完成されていたと言えよう。
二代目のソアラは「キープコンセプト」で行く事が、早々に決まっていた。
しかし、古今東西、「キープコンセプト」で成功したクルマは皆無に等しかったが、トヨタのデザインチームは
「メルチェデス、BMWがついて来れない様なキープコンセプト」 を合言葉にデザインを初めスケッチを描いた。
しかし、キープコンセプトと言っても、最初は制約無くデザイナーに自由にスケッチを描かせ、他の可能性も探っていたのであった。。。そこがトヨタの優柔不断なところでもあった。。。
そして、そのイメージスケッチの中の一枚がこれである。。
おや!?このリヤの処理の仕方・・・どっかで見たような???
そう!なんだかんだと言っても、初代レパードの完成されたデザインには彼らも興味津々だったのであった。
それを新型に生かせないか!? とスケッチを走らせたのだが・・・
やはりオリジナルは超えれなかったのであった。
されば、我らがF31レパードはどうかといえば、まず最終案に近いフルサイズのモックアップを見ていただこう。
あぁ、まさしくF31のテイストである。
F30のレパードのエクステリアデザインは、欧州の名だたるデザイナーを唸らせたデザインであった事は否定しないが、残念なことに「先進的」すぎて、当時のユーザーがそれについてゆけなかった事もまた事実であった。
そこで、二台目は飽きの来ない基本的なクルマとしてのディメンジョンをピシッと通して、ボディの基本的な美しさで勝負しよう・・と企画された。
イメージとしては、高層ビルの下をスゥーと流れるように走り抜ける時、周囲の都会的な情景がボディやウインドゥに写りこんで流れる、金属的な透明感・・・
「高層ビルの下に流れる残影・・」をモチーフにしてデザインしたという。
そこから、また多くのイメージスケッチが描かれ、クレイモデルが造られたが・・・そのうちのひとつがこれである。
ツゥードア・クーペとしての、基本的なディメンジョンを守って、忠実に形として再現すると・・・
これまた、どっかで見た形が出来てしまったのだ!
6:4のピラー配列比率・・・しかも、そのピラーの延長線が綺麗に上方で交わる・・・まさに、トヨタが確立した美しいクーペのデザイン論にハマってしまったという訳だった。
これではイカン!という事で、日産は独自の「美しいクーペ論」を模索した。
その結果が「真横から見て、算用数字の6が描けるライン」であった。
F31レパードは、その新しい日産のデザイン論によって創生されたのであった。
しかし、イメージスケッチなどの、まだまだデザインが固まらない段階とはいえ、ライヴァル同士がお互いのデザインテイストに、ある地点で交差したというのは、なかなか面白い現象ではないだろうか?
F31レパードもZ20ソアラも、販売台数の差こそあれ、後世まで印象に残るクルマのひとつとして、記憶される事になった事にも、なにか因縁めいたものを感じるのだが。
まったく感性というモノは、時にドラマティックな事を起こしてくれると、改めて思い起こさせてくれる二台である。
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Posted at
2005/10/13 00:58:43