それまで、せいぜい型式でしか呼ばれなかったタイア達が、コンセプト毎にサブネームを持つようになり、各社の中で、大まかに言えば「スポート」、「コンフォート」、「ベーシック」みたいな順列別にブランドが確立してきたのも1990年代だったように思う。
BSだったら、「ポテンザ」、「GRID」、「レグノ」、「B-Road」。
ヨコハマは、「アドヴァン」、「GRAND PRIIX」、「AVS」、「SCIENCE」。
面白いところでは、東洋ゴムがミニヴァン専用と銘打って「トランパス」を出したのもこの頃だ。
クルマの需要が増え、タイアもそれに呼応するかの如く、サブネーム、ブランドがどんどん増えて行き、日本人が好む、「スポーティだけど五月蝿いのはねぇ」という需要には、ヨコハマだと「INTECH」、住友ゴムだと「ルマン」、オーツタイヤからは「ZIEX」で、「コンフォートだけどスポーティ」という向きには、ヨコハマ「ASPEC」みたいに、まさに 「痒い所まで手が届く」 の幅広いラインナップが出てきた。
(TOP画像は、当時のINTECHの広告。実際に僕も履いていたが、なかなか良いタイアだった・・・閑話休題)
そんな中、機能性を突き詰め「排水性」と見た目で「アローシェイプ」が各社各様に出てきた事は前回述べたが、さらに「排水性」を突き詰めで行った結果、ついには「深溝」のパターンを有するタイアが、
「雨中後の筍」 の様に、これまた同じ時期に各社から出てきたのだ!
その先鞭となったのが、独逸の CONTINENTAL
「AQUA CONTACT CZ99」 だ。
一見しただけで、こりゃ排水性がよさそうだと直感できるパターンで衝撃的だった。
この 「AQUA CONTACT CZ99」 だが、記憶が正しければ当時広告で
「同サイズのタイアに比べて 1/2 の時間で路面の水を排水すると」
豪語していた。まぁ正直な事を言うが、雑誌などのインプレでは、排水性に関しては「アクアプレーニング」を起した、いや一歩譲って「起しそうだった」という記述を診た記憶が無いが、操縦性に関しては、あまり良い評判を聞く事も無かった事を告白せねばなるまい。
そして不思議なもので、ほぼ同時に、当時絶好調だった 「GOOD YEAR」 から、その名も
「AQATRED」 というネーミングのタイアが出ていた。
偶然(?)とは恐ろしいもので、亜米利加からも同じ様なタイアが・・・・
こちらの方が、パターンが繊細で、それまでのタイアという概念から一見すると逸脱していない様な気がするが、コンセプトは独逸のタイアとまったく一緒で。。。。やはり、ドライでの操縦性、グリップという点で問題が無かったとは言えなかった。
そこまで過激になってしまった「排水性」への飽くなき挑戦も、ドライでの操縦性、グリップ力という点で大きな問題を呈していたのだが、それじゃあ、こんなんはどうでしょう?という事で、
左:ヨコハマの「AVS EXCELEAD V210」、右:DUNLOP 「SP SPORT 303TP」
操縦性やドライグリップに関わるセンターを残し、代わりに左右に深溝を切った、ヨコハマの「AVS EXCELEAD V210」、やDUNLOP 「SP SPORT 303TP」なんていう
後だしジャンケン 的なタイアまで出現した。
しかし、そうした「深溝」タイアの命は残念ながら長く無く、つまり、ドライでの操縦性、グリップの問題や、新品とタイアが磨耗し始めた時との「排水性」の格差が大き過ぎるという問題と、コンパウンドの材質の研究が進み、シリカに代表されるような、元々ウエットに強いモノが出てきた事もあって、あっという間に衰退してしまった。。。
こうした機能性を追及したパターンの他に、この時期ならでは第参のデザイン性をトコトン求めたタイアも出てきた。
見た目指向の代表格BSの「POTENZA DAGG」
BSの一応、「POTENZA」のネーミングは冠しているが「DAGG」や、DUNLOP「SP9000」なんてその代表格だろう。。。
ちなみに、「DAGG」は 「Drivng A Go Go」 の略なんだそうだ・・・このタイアは僕も履いていたが、意外に排水性が良かったし、ノイズも少なめ。もちろん、POTENZAの名前を冠しているのでグリップもソコソコで、実に良いタイアだった。
パターンで賑わったクルマのタイアだったが、材質の革新とエコロジーの要求から、2000年代に入るとパタリと派手さが鳴りを潜め、パターンは大人しくなってしまった。
あれは「タイアのバブル」だったのか・・・・
二輪車の派手なパターンを眺めていると、そんな事が頭を過ぎったという次第なのだ。
Posted at 2011/05/04 21:18:47 | |
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