デザインの崩壊からメーカーが滅亡したのは日本の「オオタ」だけではない。
アメリカにも似たようなケースがあるのだ。
その端的な例がパッカードだろう。なんたってその技術力は素晴らしく、ディーゼルで飛行機を飛ばしたのもパッカードだし
驚心 ディーゼルで飛ぶ飛行機があった!パッカードの栄光と挫折。。
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戦時中も高速艇のエンヂンはパッカードで大いに日本軍を苦しめた。
パッカードは超高級車の代名詞としてアメリカで絶対的な威厳を放っていた。デザインも秀逸だ。 1924年式 single_eight_touring
戦前のパッカード、この 「1924年の single_eight_touring」 なんて今見ても息をのむくらい美しいモノだ。
僕が特に感銘を受けたのが 1942年の Packard_160_super_eight_convertible だ。
まさに息をのむ美しさと言ほかない。 1942年の Packard_160_super_eight_convertible
それまでの僕は、アメ車と言えば重い、テールフィンを始め余計な「加飾」だらけで美しくない・・・と思い込んでいたのだが、いやはや戦前のアメ車、特にパッカードの美しさと来たら他に例えようがない、当時の欧州車はまだ実用的なデザインばかりだったので、如何にアメリカがクルマの文化、クルマを楽しもうという風潮があったかが分かって衝撃的だった。
戦時中は航空機のエンジンでも名を馳せ、さらに、その航空機ののエンヂンを改良した 4M2500 エンジンを開発。
日本軍を恐怖のどん底に陥れた、高速艇PTボートに積まれたパッカード4M2500。
こいつが V12 40,000CC で巡行馬力 1200PS、瞬間最大馬力が 1500PS というエンヂンで、これを搭載したPTボートが40ノット(時速70Km/h)と言う高速で日本軍を大いに悩ませた。
パッカードは戦時中は、その優れた技術力で優れた高性能エンヂンを開発して大いにアメリカ軍の戦力向上に影響を与えた。
いざ戦争が終わると、気付けば戦争用のエンヂンを一生懸命に作っていたので、米国でのクルマのシェアが、戦前12%だったものが4%までに激減していた。
カーメーカーとして要ともいえる「プレス金型」も、その多くが、ソヴィエトのスターリンがパッカード好きという事で、ルーズベルト大統領の仲介でほとんどが 、スターリンのご機嫌取りの為に、ソヴィエト に売られていてしまった!!
しばらくは戦前型の一部のモデルで脈略を保っていたが、戦時中はクルマに関するデザイナーも必要ないとばかり放出してしまっていたので、出て来たクルマが・・・
1956年式packard_caribbean_custom_convertible これが、あの流麗なクウペやコンヴアーチブルを作っていた会社のクルマか!?と思わせる フロントグリル 一点豪華主義の酷いクルマだ。
これは・・・・さらに売れないと、これまでにないデザインをしよう、高級車だけでは売上が上がらないからと、パッカードのブランドのまま、フォード、クライスラーの中級量産車クラスまで触手を伸ばし、ますますブランドのイメージは低下し、悪あがきし、さらにデザインは混迷を深め、
えっ!美しさの欠片もないデザインにパッカードの栄光は潰えてしまった。
あんなに美しいクルマを造っていたパッカードも、戦中と言う非常事態でエンヂン屋に撤してたが故に、その道では成功をおさめたが、戦後元に戻ろうとしても簡単にはゆかず、1958年式packard_hawk_hardtop_sport_coupe に至ってはもはやこれまで・・という酷い状態になってこの年に名門パッカードの脈略は潰えてしまった。
どんなに高尚な意思を持っていても、それが予想だにしない外的要因や、売れるから何でもとか、市場調査に基づいて、本心では無いけど売れるのであればと言うデザインを続けていたら、そのメーカー、いや、その国の自動車産業も傾いてしまうだろう。
かつて高尚な意思と目的を持って売り始めたクルマも外的要因などで売れなくなると・・・
崩壊 売れない国産車の末路は・・・・
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今の日本で一番売れているメーカーのデザインを見ていると、とにかく市場調査一辺倒で、確かに売れているけど、自動車の文化的本質で言えば、そのデザインはホンモノなのであろうかと思う事がしばしばである。
データーに縛られて、クルマ本来の美しや動的な躍動感を見失ったデザインが、トップメーカーに引きずられて、まかり通っている国産車の昨今を見るにつけ、これが国産車の没落の序章で無ければと思って止まないのである。
そして何より、今の国産車のデザインの没落の原因、そして今のトヨタの独走を許してしまった最大の犯人は日産以外に他無い。
毎回、新しいジャンルのクルマを造り出すが、次が続かない。
間違いなくLクラスミニヴァンの世界を切り開いたのは エルグランド なんだが、日本専売のクルマは CMと小手先のリデザインで何とかごまかすという放置プレーで今では影が薄い。
最近ではジュークがそうだし、エルグランドも実に罪深いクルマだ。
せっかくLクラスミニヴァンの市場を開拓しながら、いつの間にかトヨタのミニヴァンに主役を取って代わられて、さらに問題なのは、「国内でシェアばかり狙わない」 などと都合の良いことを言っているが、海外に向けたクルマの開発ばかりに心血を注いで、日本市場向けのクルマは数が出ないという理由で放置プレーを決めてしまった事だ。
マーチとキューブもジュークもエルグランドも本気でリデザイン、マイナーをして商品価値を上げれば逆転は無理かもしれないが、ここまで国内でトヨタの好き勝手にさせないで置けた筈だ。
日本のメーカーなのに 「自国の市場」 を疎かにする、さらに下手をすれば欧州のメーカーに完全に吸収されるかもしれないという状況なのに、そこで働いている人に、日産は日本のメーカーだという自覚と、それを守り抜こうという思念が微塵も感じられない。
おかげで、トヨタなら何でもみたいなヘンテコなデザインがまかり通っても対抗馬と成り得ないので、トヨタの好き勝手が通ってしまうのだ。
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
この言葉をしっかり胸に刻んで、現状に満足することなく日本のクルマ文化を自分たちで健全な方向に持って行くくらいの気概を日産には持って欲しいと切に願って止まないのだ。
パッカード アプローズ デザイン
Posted at 2018/05/09 01:05:15 | |
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