
残り3分というところで、ほぼ手中に収めていたル・マン初優勝を逃したトヨタ。
“残り3分の悲劇”とも言われたあまりにも悲し過ぎる結末に、ポルシェオーナーでありながら、ポルシェではなくトヨタの勝利を願っていた私も、とてもガッカリした覚えがあります。
まぁ、個々のメーカーと言うより、やっぱり日本人として日本のメーカーに勝って欲しかったんでしょうね。
レース前に、
「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」とまで言って勝利への意気込みを見せたトヨタでしたが、この言葉はむしろレース後にこそ相応しいものになってしまいました。
そんなトヨタですから、翌年ももちろんル・マンに挑戦しました。
2017年 トヨタ・TS050
「何としてでも ル・マンの初優勝を」
トヨタは、2012年にル・マンに復帰して以降、ずっと2カーでのエントリーでしたが、今期はライバル並みの3カーエントリーとなりました。
そのライバルですが……
まず、ポルシェは、トヨタとは逆に2カーエントリーとなりました。
さらに、マシンのカラーリングが変更されたのですが……
えっ、ちょっと、この配色は、トヨタのガズー・レーシング カラーじゃないですかっ!
遠目から見たら、トヨタのマシンとの区別がし難くなるんじゃね? って思いました。(汗)
一方、アウディはと言うと、2016年いっぱいで、18年間に渡って出場してきたル・マンを含む世界耐久選手権から撤退してしまいました。
アウディが属する VWグループが ディーゼル・ゲート(ディーゼル車における排ガス規制での不正行為)を起こしてしまった事が、ディーゼル・エンジンでル・マンに参戦していたアウディ・チームを直撃した形ですね。
18年間で13勝を挙げたアウディでしたが、こんな形での幕引きになるとは……
ま、レギュレーション上のディーゼル・エンジンへの優遇も少なくなって、勝利も段々と難しくなってきていたし、同じグループのポルシェも参戦し始めた事だし、あとはポルシェに任せようって感じですかね。
トヨタの並々ならぬ思いと対照的に、ドイツ勢から熱意が急速に萎んでいったのが、この年のル・マン 及び 世界耐久選手権でした。
で、そんな熱い思いが込められた ル・マンですが、
3台全てにトラブルが出て、結果を残すことが出来ませんでした。
レース後、豊田章男社長は、ドライバーに
「思い切り走らせてあげられなくてごめん」と謝罪すると同時に
「クルマを速くするだけではルマンには勝てないんだ! 我々には“強さ”がない! 強いチームにはなれていない!」という言葉を残しています。
まあ、ピットレーン上で マーシャルと同じカラーのレーシングスーツを着た他チームのドライバーの紛らわしい仕草で誤ってピットレーンを出てしまい、それを制止したら、想定外の動きになってしまってクラッチが壊れたとか、不運もありましたけどね。
まぁ、ポルシェにしても両方の車にトラブルが出たものの、1時間以上もピット作業で止まっていた車で勝ってみせたので、その辺がトヨタには足りなかったんでしょうね。
2018年 トヨタ・TS050
「何としてでも、ル・マンで優勝したい!」
その思いは、あまりにも簡単に叶えられる事になりました。
ライバルのポルシェが、2016年のアウディに続いて、
2017年いっぱいで撤退してしまったのです。
ライバル不在、参加すれば勝てる。
トヨタも、「どうせなら、ライバルを破って勝ちたい」と思っていたでしょうね。
まあ、実際には『勝って当然』の状態は、違うプレッシャーもあったとは思いますけどね。
個人的には、ポルシェの撤退は アウディの撤退でポルシェに移籍したアンドレ・ロッテラーが、たった1年で再びシートを失う事になったので、単にポルシェの撤退という事以上に残念に思いました。
ロッテラーは、日本ではトムスで走っていたトヨタ系のドライバーだったんだからトヨタで走れば? って思っちゃいましたけどね。
ロッテラーを乗せたいと思っていたシートには、この人が座りました。
トリプルクラウン(モナコ、インディ、ル・マン)を熱望していた、フェルナンド・アロンソです。
ちょうどその頃は、
アロンソの乗るマクラーレンが絶不調だったので、F1以外にモチベーションを求めた時期でした。
ただねぇ、前述の様に、トヨタは参加しさえすれば勝てる状況でした。
トヨタにしても、
「勝利の為に、是非ともアロンソさんのお力を貸してください」 って感じじゃなかった。
むしろ、アロンソ側の
「今年のトヨタなら確実に勝てそうだね。だったら、その車に俺も乗せてよ!」 って感じ。
そんな、『勝って当然』の状態で勝ったところで嬉しいの?
嬉しかったようです。(笑)
念願のル・マン初優勝を飾ったトヨタは、気が付けば 2000年のアウディと同じ立場となっていました。
唯一残ったワークス・チームとなった事で、トヨタの存在はル・マンや世界耐久選手権の存続にも拘わってくるため、おいそれと撤退出来なくなりました。
トヨタに頼らざるを得なくなった、ル・マン、及び 世界耐久選手権ですが、競争が無くなると単調でつまらなくなりますから、唯一のLMP1 HVマシンのトヨタに対し、プライベーターのLMP1のレベルになるまで EoT(Equivalence of Technology:技術の均衡)と呼ばれる性能調整を求めます。
速く走れるように開発を進めれば、その分のEoTが課される……容易に勝てる状況ではなくなりましたが、2019年、2020年と トヨタ・TS050はル・マンを連勝。
そして、2021年からは、ハイパーカーで争われる事になった ル・マン、及び 世界耐久選手権に
トヨタ・GR010 HYBRIDで参戦、今年もル・マンを制しています。
ただ、トヨタとしても、ガチンコのレースをした上で ル・マン優勝を勝ち取りたいんじゃないでしょうか?
そういう意味では、早くル・マンに参戦するライバルメーカーが現れて欲しいですね。
出来れば、レースカーがEVになってしまう前に……
ようやく終わった。(長かった…)
ー完ー
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TOYOTA | 日記
Posted at
2021/05/22 19:16:27