昨日、ルノーがロータスを買収してF1サーカスに戻ってくる話をしました。
そこで、今日はルノーF1の歴史を御紹介したいと思います。
最近のF1ファンは御存じないかもしれませんが、ルノーは70年代にF1界に一大革命をもたらしています。当時のF1は3ℓエンジンで、殆どのチームがV8のフォード・コスワース・DFVエンジンを搭載していて、フェラーリなど一部のチームがモアパワーを求めてV12を採用していたくらいでした。
ここで、一部の重要な単語が抜けています。それは自然吸気(NA)エンジンと言う事です。
当時のF1のレギュレーションでは、3ℓ 自然吸気エンジン、もしくは 1.5ℓ 過給器付きエンジンという物でした。当時のスポーツカーレースでは、ターボ係数が1.4であり、半分の排気量では過給エンジンは不利と思われていたのです。
そこに、ターボエンジンで挑戦したのがルノーでした。
参戦当時はトラブル続出で苦労したようです。
wiki によれば、エンジントラブルで白煙を上げながらリタイアすることが多かったため、その黄色いカラーリングをもじって「イエロー・ティーポット」と揶揄されたそうです。
ただ、ターボエンジンの潜在能力は3ℓ 自然吸気エンジンを上回っていました。
初めはターボに懐疑的だった他チームも、ルノーエンジンの戦闘力が上がるにつれて、ターボエンジンへと流れて行きます。
ターボエンジン先駆者として、ターボ車初のチャンピオン獲得を目指すに最適のドライバーが現れます。後にプロフェッサーと呼ばれるアラン・プロストです。
実際、1983年はチャンピオンシップをリードしていましたが、最終戦でネルソン・ピケに逆転されてしまいます。この一件でルノーとプロストの関係は険悪となり、プロストはルノーを離れ、マクラーレンに移籍します。この移籍がプロストをチャンピオンにしたのに対し、ルノーは遂にチャンピオンを獲得することなくF1から撤退する事になります。
(その後もロータスにエンジン供給を続けますが、ここではルノーチームの話に留めます)
さて、ルノーはF1から撤退しましたが、ルノーF1チームを語る上で触れておかねばならないチームがあります。
それは、弱小チームトールマンです。
トールマンと言うチームはF1史に輝くような成績を挙げたチームではありません。
しかし、あるドライバーの名と共にF1史に残る事になるでしょう。
写真の黄色いヘルメットを見れば分かりますよね。トールマンはアイルトン・セナがデビューしたチームなのです。(ちなみにF1解説者の津川 哲夫氏もこの時期トールマンのメカニックをしていました)
弱小チームではありましたが、このチームにはのちにベネトン、フェラーリでデザイナーを担当するロリー・バーンがいました。弱小チームの割には頑張っていたチームに願っても無い「ベネトン」という大スポンサーが付くのです。
ベネトンとの関係は深くなり、遂にベネトンがチームを買収し、ベネトンチームとなります。
ベネトンは、フォードのワークスエンジンを獲得し、トップグループの仲間入りを果たします。
1989年には鈴鹿で1,2フィニッシュを飾りました。(津川さん、大興奮でしたね)
ベネトンチームに新しい才能が加入します。
ミハイル・シューマッハです。
シューマッハの加入で、ベネトンはトップグループの一角からトップチームとなるのです。
そんなベネトンチームにルノーエンジンが積まれる事になりました。
ここで遂にルノーがエンストンのチームと合流するのです。
シューマッハは見事に、ルノーエンジン搭載初年度にチャンピオンを獲得します。
たた、シューマッハはこの年を以ってフェラーリに移籍してしまいます。
ベネトンは暫く低迷期に入ります。
(この間、ルノーエンジンもワークス活動を中止、メカクローム製のエンジンとなります)
再び戦闘力を取り戻したのはルノーのF1復帰です。
今回はエンジン・サプライヤーとしてではなくワークスチームとしての参戦です。
そう、ベネトンチームを買収したのです。
そして、追い風になる才能豊かなドライバーが加入。
フェルナンド・アロンソです。
アロンソは、2005、2006年と2年連続でチャンピオンを獲得します。
しかし、アロンソもチャンピオンチームから移籍してしまいます。
アロンソはマクラーレンで不本意なシーズンを過ごし、1年でルノーに復帰します。
しかし、既にルノーはトップチームではなくなっていました。
勝てるチームを求めてアロンソは今度はフェラーリへと移籍してしまいました。
世界同時不況で、ホンダ、トヨタ、BMWが撤退しましたが、ルノーはF1に残りました。
ただ、新たにトップチームとなったレッドブルとは戦闘力が違いすぎ、成績は低迷、費用対効果を考えると本社側が納得できるものではありませんでした。(もっとも、コストカッター、カルロス・ゴーンが参戦費用を抑えていた為、戦闘力が上がらなかったとも言えますが)
ルノーが売却したのはロータス・カーズでした。
ルノーのイメージカラー・イエローから、昔懐かしいロータスのJPSカラーを連想させるブラックに変わった新生ロータス。(ちなみに昔のチーム・ロータスとは関係ありません)
ラリー界から戻った、キミ・ライコネンを擁してなかなかの成績を残したものの、金銭面は火の車。
ライコネンに逃げられたあとは、成績も低迷。既に身売りしか残された手はありません。
そのロータスを、再びワークス活動を目指すルノーが買収するというのがほぼ確定的というのが現在の状況です。
ルノーの強かった時は、アラン・プロスト、ミハイル・シューマッハ、フェルナンド・アロンソという世代を代表する名ドライバーを抱えていました。今回はそういうドライバーを加入させる事が出来るでしょうかね?