
日本政府がガソリン車の新車販売を2030年代半ばに禁止する方向で調整に入ったと、毎日新聞など複数のメディアが報じました。
遂に日本も、内燃機関から電動車へと舵を切るか……
脱ガソリン(実際にはディーゼル車も含みますから、内燃機関=Internal Combustion Engine、略してICE車の事になります)・電動化に関しては、イギリスが2030年までにガソリン車やディーゼル車の新車販売を、2035年にはハイブリッド車も禁止するとしている他、アメリカのカリフォルニア州が2035年までに、フランスは2040年までにガソリン車などの新車販売を禁止するとしています。
ああ、中国も2035年までにガソリン車の販売を禁止すると言ってましたっけ。
この流れに、日本は乗り遅れているのではないか? という意見は以前からありました。
ついこの間も、国産メーカーが2020年第3四半期(1−9月)累計のEV・PHVの「世界トップ10」から陥落したと問題視する記事がありましたっけ。
確かに、ここ最近は欧州メーカーの電動化の流れが急です。
フォルクスワーゲンが2位(前年同期6位)になったのを始め、4位のBMW(同5位)、5位のルノー(同13位)、6位のメルセデス・ベンツ(同25位)、7位のボルボ(同16位)、8位のアウディ(同21位)と、軒並みアップしています。
その煽りで、日産は7位から14位に、トヨタは10位から16位にランクダウンしているのですが……。
多分、国内メーカーの電動化の遅れに「日本メーカーは技術的に遅れているのではないか?」と懸念しているんだと思いますが、私はそんな事は無いと思っています。
欧州メーカーの急激な電動化は、EUの厳しいCO2排出量規制をクリアする為のものです。
EUが求めるメーカー平均CO2排出量は95g/kmと厳しいもので、今までのガソリン&ディーゼル車では到底クリアできません。(2019年の平均値は122g/kmでした)
規制をクリアできなければ、多額の罰金を支払わねばなりません。
ラインナップの変更なしに規制をクリアできるのは、圧倒的なHV技術を持つトヨタくらいのもの。
逆に言うと、トヨタは現状ではラインナップにEVを必要としていないんです。
欧州メーカーはEV技術が進んでいると言うより、EVを出さざるを得ないんですよ。
もちろん、20年後にはEVが主流になっているのでしょうが、今、慌てて電動化に走る必要があるのかというと、これが微妙です。
上記のCO2排出量規制をクリアするために電動化に走った欧米メーカーですが、韓国製バッテリーのトラブルに苦しんでいます。
フォードは、規制をクリアするために33g/kmのクーガPHEVを投入、しかし、バッテリーが火災を引き起こす危険性があるとして2万1000台のリコールに見舞われてしまいました。
多額の罰金を避けるため、フォードはPHEVの導入に成功していたボルボと提携、両ブランドの平均CO2排出量をプールする形で規制をクリアします。
リコール対応やボルボへの支払いなどで、フォードは欧州における第3四半期の利益を全て失いました。(推定6億ドル=624億円)
BMWも同様の問題を抱えており、主に欧州で2万6900台のPHEVをリコールしなければならなかったらしいです。
ジャガー・ランドローバーは、主力のレンジローバー・イヴォークとランドローバー・ディスカバリー・スポーツのPHEVの発売が延期(電気のみの航続距離の不足が原因)したことで、9000万ポンド(125億円)の罰金を支払っています。
上記3社のPHEVに共通しているのは、
サムスンからバッテリーを供給されている事です。
現在のところ、サムスンは一連の問題についてコメントしておらず、メーカーも責任の所在を明らかにしていません。
バッテリー トラブルは、韓国
LG化学のバッテリーを積む
GMや
ヒュンダイ車でも火災の原因となっている可能性が疑われています。
自動車メーカーの責任が及ばないところでのトラブルで、車の品質が決まってしまうところに、EV製造の危うさを感じますね。
バッテリー品質以外でも、電動化は各メーカーを苦しめています。
フィアット・クライスラーは 2020年第3四半期も財務上の損失を明らかにしていますが、これは新しいPHEV開発と、テスラに支払って自社の排出量をプールして罰金を回避するためのコストが原因のようです。
フォルクスワーゲン・グループも、VW、アウディ、ポルシェと 積極的にEV展開し、自力での規制クリアを目指しましたが、結局、9月に中国資本のMGとプールしたことを発表しました。
かように欧州メーカーが苦しむ規制の厳しさを示しているのが、実は日本の
スズキです。
新型ジムニーが好評で大ヒットしますが、その事で メーカー平均CO2排出量の95g/kmを超えそうになってしまい、ジムニーの販売を中止せざるを得ませんでした。
軽自動車ベースのジムニーですら平均値を悪化させる車になってしまう、それだけ厳しい規制値が課せられているのが今のEU市場です。
欧州でCO2排出量規制を始めた理由は、もちろん地球環境への配慮です。
しかし、クルマ自体の電動化を進めても、EVに充電する電気を発電する時に発生するCO2を考えるとEVが有利とは限りません。(原子力発電の進んでいるフランスは良いでしょうが、石炭火力発電が主流の中国ではむしろ悪化するでしょう)
また、大量のバッテリーを搭載するEVは、その生産時や、廃棄時の環境負荷はエンジン車よりも負荷が高いです。
単純な電動化では実利が得られないのに、電動化へと突き進むのは
「私は環境をを大事に考えている政治家だ」というポーズをしたいだけなのではないか? と思ってしまいます。
あとは、トヨタにHV技術では太刀打ちできない欧州メーカーが、自分たちが勝負できる分野へと、自国政府と結託して無理やり土俵を変えようとしたのかもしれません。
ただ、その目論見通りとはならず、今や自らの首を絞めている状況になっています。
今頃、
「やっぱり、電動化なんて目指さなきゃ良かった」なんて思ってるんじゃないですかね。
私は、電動化(EV)が進むと、現在の自動車メーカーが衰退していくのでは? と懸念を持っています。
EVは、前述の通り、主要部品のバッテリー、そしてモーターを外部のメーカーから調達します。
下手をすると、自動車メーカーは単なる組み立て工場になってしまう。
かつてパソコンが、インテルのCPUとマイクロソフトのOS、そして台湾メーカーのマザーボードさえ用意すれば誰でも組み立てられるようになり、パソコンメーカーが衰退していきました。
なにせ、あの『オウム真理教』までパソコンを作って売ってましたからねぇ……。
2035年、かつて「技術の日産」と言っていた日産自動車が消滅し、アレフの自動車部門『マハポーシャ』製EVが日本の道を走っているかも……いやいや、そんなバカな。(汗)