
1999年いっぱいでル・マンから撤退したトヨタは、F1に軸足を移し、2002年から F1を戦いました。
同時期にF1参戦を開始したBMWや ホンダと違い、シャーシを含めた オールトヨタでの参戦でした。
(まあ、のちに BMWはザウバーを、ホンダはBARを買収して、エンジンメーカーからコンストラクターになりましたけど……)
しかし、さすがにモータースポーツの頂点であるF1ですから、ちょっとやそっとで勝てるようにはなりません。
結局、リーマンショックから続く不況が理由で、2009年を最後に F1から撤退しました。(トヨタの場合、2009年には アメリカによる“トヨタ・バッシング”もありました)
F1での最高成績は、コンストラクター選手権4位でした。
2009年は、本業で59年ぶりとなる赤字を記録したトヨタですが、早々に経営状況を改善させました。
2009年、苦渋の F1撤退を発表した 豊田章男社長は、元々『モリゾウ』と名乗り、レースに参戦するくらいのレース好きですから、状況さえ許せばレースフィールドに戻って来る事は容易に想像出来ました。
そして、そのフィールドの中には、ル・マンも含まれていたのです。
2012年 トヨタ・TS030
プリウスで、トヨタが市販車として世界で初めて開発&生産したハイブリッドカーを、レースフィールドにも持ち込んだのが、この TS030でした。
エンジンは新開発の V8 3.4ℓの NAエンジン、これに電気モーターを組み合わせる訳ですが、電気を蓄えるのはバッテリーではなくキャパシタでした。
キャパシタは、構造的にはコンデンサの仲間ですから、あまり大容量は貯められませんし、リークも多いので、生産車両には向きませんが、充放電性能はバッテリーよりも高く、それ故、レーシングカーに向いている製品なのです。
マシンのスタイリングは、GT-One(TS020)ほど過激ではありませんが、アウディが先鞭をつけたフロントフェンダー形状(横から見るとスラントしていないが、フロントフェンダーが独立していて 船体構造のようになっている)を採用しています。
個人的には、カッコいいとは思わないので、このスタイリングは好きではありませんけど…
TS030は、復帰1年目から速さは見せたものの、出場2台が クラッシュやトラブルでリタイアしています。
2013年 トヨタ・TS030
カラーリングが変わっていないので、去年のマシンとの違いが良く分からん。(汗)
この年は、去年と違って、王者アウディと優勝争いを行うことが出来ました。
もっとも、トップを走っていたアウディにトラブルが有ったから接近できたとも言えますが。
この年のル・マンは、重大アクシデントが頻発し、24時間中 5.5時間もセーフティカ―がコースインしていたそうです。
そんな荒れたレースでも制する事が出来るのも、アウディが耐久王者だからこそでしょうか?
ちなみに、アウディが 1、3、5位で、トヨタが 2、4位でした。
2014年 トヨタ・TS040
この年から、TS040にチェンジしました。
カラーリングは踏襲していますが、明確にスタイリングが変わっているので、違いは分かります。
ただ……
カッコ悪いなー。(汗)
F1とかで、よく「速い車は美しい」って言われますが、この時期のプロトタイプカーには当てはまらんな。
エンジンは 520馬力を発生する、3.7ℓ に拡大された V8 NA エンジンに、回生エネルギーの480馬力が加わります。
そして、TS030では後輪のみだった駆動が、TS040では 前輪にも電気モーターで駆動される四輪駆動になりました。
この年からは、元祖 耐久王者のポルシェも復帰、3大ワークスによる争いとなりました。
ル・マンでは、予選で中嶋一貴がポールポジションを獲得、もう1台も3位と、速さは既にライバルより上でした。
決勝でも、順調にトップをキープしていましたが、14時間後に電気系統のトラブルでリタイア。
トヨタって、勝てるポジションに立つとトラブルが発生するよねー。
なお、ル・マンは勝てませんでしたが、この年のFIA 世界耐久選手権は、ドライバー、マニュファクチャラーズの両タイトルを獲得しました。
2015年 トヨタ・TS040
ル・マンこそ勝てなかったものの、速さはあり、2014年の年間チャンピオンを獲得したトヨタでしたが、2015年は、アウディ、ポルシェの新旧耐久王者に大きく差をつけられてしまいました。
ル・マンの予選では1~3位はポルシェが独占、続く4~6位もアウディが占め、トヨタは上位に食い込むことが出来ません。
決勝でも、その流れは変わらず。
ポルシェが1,2フィニッシュし、5位までをドイツ2社のマシンが占めました。
2016年 トヨタ・TS050
トヨタは、2015年にポルシェ・アウディとの相対的な戦力ダウンを感じ、TS040の開発を止めて、新車TS050を開発する事にしました。
マシンが新しくなったのに加え、マシンのカラーリングも、ハイブリッドのイメージで配したブルー主体の物から、いわゆるガズーレーシング カラーとなりました。
トヨタは、ル・マン24時間レースを前に、
「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」というキャッチフレーズを掲げ、勝利への並々ならぬ意気込みを見せました。
決勝では、スタート直後からトヨタとポルシェが、まるでスプリントレースの様なバトルを展開します。
耐久レースは生き残ってナンボではありますが、もはや ル・マン24時間レースは、24時間ぶっ通しでスプリントレースの走りをして、尚且つ 生き残らないと、もう勝利できない様なレベルにまで来ていたのです。
トヨタとポルシェの勝敗を分けたのは燃費でした。
トヨタの方がポルシェより1周余計に走れた為、最終的に ピットストップ1回分のマージンを得ていたのです。
完全に勝敗は決した! あとはマシンをゴールへと運ぶだけ。
残り3分、ファイナルラップが見えてきた、まさにその時!
“no power!”
5号車のステアリングを握っていた一貴選手の悲痛な声が無線を通じて流れてきました。
結局、ほぼ勝利を手中に収めていたはずの トヨタ5号車は、24時間経過後に ゴールラインを越えることも出来ず、完走すら出来ずに終わったのでした。
ダメだ、今回もフィニッシュならず……(俺もゴールラインを越えられなかったってか?)
-つづく-