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2021年10月22日

トヨタ自動車物語 「パブリカとカローラ」

トヨタ自動車物語 「パブリカとカローラ」 中村健也らが開発したクラウンの登場によって、乗用車は外国製(もしくは外国メーカーの車)が当たり前だったものが、国産車に置き換わっていきました。


しかし、それはタクシー需要であったり、会社の社長などの ごく一部の富裕層のものという状況に変わりはありませんでした。


そんなタクシー需要も、中型がトヨタのクラウン、小型が日産のダットサンが占めており、トヨタは小型タクシー用にコロナを開発(1957年)。


このコロナが次第に一般ユーザー層にも食い込んでいき、ダットサンの後継であるブルーバードと熾烈な販売競争、いわゆる『BC戦争』を繰り広げるようになっていくのでした。


その一方で、通産省の国民車構想に沿った、安価な軽自動車も現れ始めました。


1958年、富士重工からスバル360が発表され、頑張れば一般家庭でも車が持てる時代となっていきます。








この国民車構想に対するトヨタの回答が パブリカ でした。



もっとも、トヨタにしてみれば、パブリカの開発スタートが国民車構想よりも前(当時の技術担当専務だった豊田英二が、500~600cc級の前輪駆動大衆車の開発を提案した)なので、国民車構想が後からついてきただけなのでしょうけど……


トヨタは、パブリカを軽自動車にはしませんでした。


軽自動車には税制上の優遇があり、購入や維持に掛かるお金を節約できたのですが、寸法上の制約は避けられません。


トヨタは、軽自動車の制約は受けず、しかし、軽自動車並みの経済性をもつ車の開発を目指したのです。





しかし、さすがのトヨタでも、軽自動車並みの経済性を持つ普通車など、容易に開発出来る筈もありませんでした。(正確には、「軽自動車並み」ではなく「国民車構想に沿った」車ですが…)


いくつかの試作車の量産を断念した後、長谷川龍雄を主査に任命し、大衆車開発を進めていく事になりました。



長谷川は、前回のブログにも登場した 中村健也の下で初代クラウンを開発したメンバーの一人で、戦時中は立川飛行機の設計主務をしていたエンジニアでした。


当初、この大衆車は「空冷二気筒」「車重700kg」「駆動方式はFF」で開発が進められていました。


飛行機のエンジニアだった長谷川にしてみれば、空冷エンジンはお手の物、またボディの強度を保ちつつ軽量化を図るというのも飛行機エンジニアが得意とする分野だったでしょう。


フル・モノコック構造を採用したボディは、空力性能生産性も考慮されていました。


同時に開発されていたトヨタスポーツ800に至っては、飛行機並みの空力性能を誇る車になっていました。




この大衆車に積まれるエンジンは、当初は500~600ccの排気量で考えられていたものの、「じきに到来するハイウエイ時代に時速100キロで安全巡航するには、最大出力の7~8割でなければいけない」という長谷川の持論により、700ccとなりました。


その一方で、満足できる等速ジョイントが無い事から、長谷川はあっさりと前輪駆動を捨て、コンベンショナルなFRへと改めてしまいます。(FFは豊田英二さんの肝入りだったのに……)


ここでFFを諦めたトヨタは、国産メーカーで最もFF化に慎重なメーカーとなったのですが、これはまた別の機会で。






長谷川の拘りが詰まったこの車は、国民車を意味する英語「パブリック・カー」からの造語で パブリカ と名付けられ、1961年6月に発売が開始されました。




販売価格の38.9万円は、軽乗用車並みかそれ以下という安さ。(これは、大量に売れば収益も出るという 戦略的な価格設定でした)


極めつけは、パブリカ専用の販売チャンネル(パブリカ店、後のカローラ店)まで用意するなど、トヨタの力の入れようは凄まじいものでした。


しかし……


パブリカは思ったようには売れませんでした。


売れない理由は、あまりにも経済性を追い求めた事で、内外装が質素過ぎた為でした。


既に、日本国民にとっては、車は『夢のマイカー』ではなく『成功の象徴』であり、所有するだけで満足できるものではなくなっていたのです。






しかし、パブリカの失敗は無駄には終わりませんでした。


“ユーザーは軽自動車よりも少し上のクラスを求めている”


トヨタ、そして ライバルの日産も 1.0リッタ―クラスの大衆車を開発する事となります。


そして、一足早く 1966年4月23日に 日産からサニーが発売されました。



税法上の区切りとなる、1000ccのエンジンを搭載したサニー。


そのサニーから遅れる事 約6ヶ月、1966年11月5日に カローラが発売となります。


カローラのエンジンは、何故か 税法上 1クラス自動車税が高くなってしまう 中途半端な 1100cc(厳密には 1077cc)でした。




しかし、この中途半端な排気量にこそ意味が有り、100ccに込められた意味が分かるのが、有名なキャッチコピー「プラス100ccの余裕」なのです。




この「プラス100ccの余裕」は、他より上という優越感に浸れることからカローラは大ヒットしました。


これは、パブリカに続いて主査になった長谷川が パブリカの失敗から得た教訓で、「80点+α主義」によるものだったのです。(あらゆる部分でその時代の基準から見て80点のものを確保しつつ、プラスアルファで魅力的な先進的技術も導入する)




カローラは、同クラス初のフロアシフトや、日本車初のマクファーソン・ストラット式の採用などもありましたが、パブリカに比べると技術的な先進性は然程ない車でした。


しかし、ヒットするには技術的な先進性よりも、ライバルより高級感がある事のほうが大事であることを知らしめた1台でした。


この時 生まれたカローラとサニーの関係は、結局サニーの名が消滅するまで続き、カローラは 1969年度から2001年度までの33年間、車名別日本国内販売台数第1位を維持し続けたのです。(ちなみに、1位の座を譲ったのはサニーではなく ホンダのフィットでした)


なお、排気量アップ(プラス100cc)に関しては、日産がサニーを1000ccで開発していると知った、「販売の神様」と呼ばれた当時のトヨタ自販社長 神谷正太郎が、販売戦略上必要と判断し、要請したものだったそうです。







カローラは、1997年に累計販売台数でフォルクスワーゲン・ビートルを抜き、ギネス世界記録を樹立 。


2013年には世界生産台数累計4000万台を達成、今もなお、世界中で生産され続けています。


今でこそプリウスやヤリスに1位の座を譲っていますが、トヨタの最多量販車といったら、やはりカローラだと思ってしまいますね。


そして、カローラのネームバリューは、日本人が考えている以上に高いものがあり、海外でのカローラのネームバリューは絶大なのです。


それだけに、最近 トヨタからも旧い名前の車が消えていっていますが、カローラだけは無くせないでしょう。





パブリカの失敗を糧に、世界一となったカローラを作った長谷川さんは、この後 日本初のスペシャリティカー、初代セリカ&カリーナの開発主査も担当する事になります。


長谷川さんも、トヨタにおける伝説のエンジニアの一人だと思います。


しかし、昔の自動車メーカーの開発者って、元飛行機屋が多いねぇ。


もし、GHQが飛行機作りを禁じていなかったら、今の自動車王国 日本は無かったかもしれませんね。
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Posted at 2021/10/22 20:11:19

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