
先日のブログで、トヨタの販売チャンネルの再編成について書きました。
まだ、東京や神奈川など、一部でしかディーラー網の統合は進んでいないようですが、既に全系列店で全トヨタ車の全車併売が開始されている為、どのお店に行っても全てのトヨタ車を買う事が出来るようになっています。
ここで、若い人は「何でトヨタだけ複数のお店があるの?」と疑問に思ったかもしれませんね。
現在、トヨタ以外は、日産も、ホンダも、マツダや三菱も、1系列の店しか持っていません。
そのメーカーのディーラーに行けば そのメーカーの車を買う事が出来るのに、何でトヨタだけは、欲しい車を売っているお店を選んで行かなければならないのか?
若い人は知らないですよね、かつては他のメーカーも複数チャンネルを展開していた事を。
今回のブログでは、そんな各社の販売チャンネルの推移を紹介したいと思います。
そもそも複数チャンネルという考え方はアメリカがルーツであり、GMが
シボレー、キャディラック、ビュイック、
オールズモビル、ポンティアック、フォードが
フォード、リンカーン、
マーキュリーといったブランド毎に販売チャンネルを持たせていました。(薄字は、現在存在しないブランド)
ただ、日本ではブランド展開と言うよりも、車種を増やした時に その客層に合わせた販売チャンネルを設ける感じで系列が増えていきました。
トヨタであれば、クラウンを扱うトヨタ店、コロナ、マークⅡを扱うトヨペット店、カローラを扱うカローラ店、スプリンター(当時はカローラ・スプリンター)を扱うトヨタオート店と、暫く4系列が続いた後、1980年のクレスタ登場を機にビスタ店が誕生、5チャンネル時代となります。
日産はと言うと、ブルーバードを扱う日産店、セドリック、ローレルを扱う日産モーター店、サニー店、チェリー店、そして かつてのプリンス自動車系列のディーラーであるプリンス店と、トヨタよりも早く5チャンネルを持っていました。
かつては、トヨタ、日産が2大メーカーであり、両社がしのぎを削っていた為、この2メーカーの5チャンネルは理解出来ましたが、果敢にも この2社に追従したメーカーがありました。
マツダは、マツダ店と、当時 提携していたフォード社のエンブレムを付けた兄弟車を扱うオートラマ店の2チャンネルの時代がしばらく続いた後、バブル期に勝負に出て、ロードスターや 3ローターのコスモを扱うユーノス店、RX-7を扱うアンフィニ店、軽自動車などを扱うオートザム店と、一気に3チャンネルを増やして、トヨタ、日産と同じ5チャンネルとしました。
ホンダは、マツダ程ではありませんでしたが、シビックを扱うプリモ店、アコード、レジェンドを扱うクリオ店、プレリュード、インテグラを扱うベルノ店の3チャンネルを持っていました。
三菱も、複数チャンネルを持っていて、主力のギャラン、ランサー、パジェロを扱うギャラン店の他に、ミラージュを扱うカープラザ店を展開していました。
私が知る限り、上記が各社の販売チャンネルが一番多かった時です。
その後、各社の販売環境の変化で、マルチチャンネルが維持できなくなっていき、販売チャンネルの再編が始まります。
まずはマツダ。
販売チャンネルを増やす為、姉妹車が大量発生しました。
フォード フェスティバにオートザム レビュー。
ファミリアに、ランティス、アスティナ、ユーノス100、ユーノス プレッソ、オートザム AZ-3、フォード レーザー。
クロノスに、MS-6、MS-8、ユーノス500、800、オートザム クレフ、フォード テルスター、クーペのMX-6、フォード プローブ、4ドアHTのペルソナ、ユーノス300。
センティアに MS-9。
これだけ大量に発生した姉妹車、しかも、ベースとなった車も、ファミリア以外は、カペラをクロノス、ルーチェをセンティアに車名を変えてしまった為、馴染みの車が無くなってしまったことで混乱に拍車を掛けました。(車の形が思い浮かばない人は
こちらを参照)
マツダも、これだけ極端な拡大戦略に球数不足を承知していたのか、ユーノス店ではシトロエンを、オートザム店ではランチアを併売していました。(私、オートザム店でランチア・デルタの見積もり取ったことがあります!)
これだけ無謀な拡大戦略も、好景気が永遠に続けばあるいはものになったかもしれません。
しかし、バブルは弾けました。
マツダは、センティア系を二代で廃止、後継車も無くマツダのラインナップから高級車が消えました。
また、クロノス系も一代限りで廃止され、再びカペラに戻されました。(クロノス系の全てと ファミリア系の一部に搭載していた贅沢なV6エンジンも一代限りで廃止されました)
圧倒的に車種が減ったマツダは、マルチチャンネルを維持できる筈もなく、1チャンネルに集約されたのです。
まあ、当時のマツダのマルチチャンネルは全く身の丈に合っていなかったし、アンフィニ店がスペシャリティで、ユーノスがプレミアムと言われてもピンとこなかった。
今のマツダディーラーはそこそこ高級感もあるし、今が一番合っているかもしれませんね。
続いては日産です。
日産の場合、プリンスという元々は別メーカーのディーラー網を抱えていたという特徴はあるものの、その他の系列は高級車志向のモーター店に、サニー、パルサーを中心とした店舗と言う感じで、トヨタと似た感じの系列構成でした。
1999年3月、経営危機からルノーの傘下になった日産は、翌月には5チャンネルあった販売網を2チャンネルに集約します。
プリンス店、サティオ店(サニー販売)、チェリー店(パルサー販売)をレッドステージに、日産店、日産モーター店をブルーステージに纏めたのです。
もっとも、車種整理が進んだ日産では レッド/ブルーの色分けも意味を成さなくなり、2007年には今の形(1チャンネル)となりました。
ただ、マツダと違って、かつてはトヨタと張り合っていた2大メーカーだった為、販売拠点の数はマツダの比ではありません。
某所では、元サティオ店と元モーター店が隣り合い、斜向かいには元プリンス店が隣接するという、なんとも無駄な状況が生まれています。
販売系列を再編したなら、無駄な店舗は統廃合すればいいのにねー。
日産の次は、現在アライアンスを組んでいる三菱です。
三菱の場合は、FF 2Boxという新しい時代の車であるミラージュ登場を機にカープラザ店が出来たものの、その他はギャランΣ/Λ の姉妹車としてエテルナΣ/Λが用意されたくらいで、今一つ存在理由が希薄でした。
2000年、リコール隠しが発覚し、三菱の販売台数は激減。
また、ミラージュも一時期カタログ落ちしましたので、カープラザ店の存在意義を失い、ギャラン店と統合されたのです。
今、三菱は車種がグッと少なくなっているので、1チャンネルであることは致し方ない事です。
もっとも、今のままでは、単独でディーラー網を維持する事すら難しくなり、日産ディーラー網で三菱車も売ってもらうなんて事になるかも……。
最後にホンダです。
ホンダが3系列のディーラー網だった時は、系列毎に特徴をうまく出せていたと思います。
小型車のプリモ店、高級志向のクリオ店、スポーツイメージのベルノ店。
最強のデートカーと言われた3代目プレリュードの頃や、F1第二期の頃、ベルノ店はこの世の春を謳歌していましたし、クリオ店扱いのレジェンドは初代や二代目の頃、クラウンやセド・グロとは違う第三極の高級車として一定の評価を受けていました。
もちろん、ワンダーシビック等、ホンダの顔であったシビック(プリモ店)は常に人気の車でした。
しかし、売れ筋がミニバンやコンパクトカーへと移ると、系列の特徴は薄れていき、2006年には遂に販売系列を一本化してHonda Cars店となったのです。
暫くは、ステップワゴンやフィットが売れていたものの、N-BOX登場以降のHonda Cars店は、軽自動車販売ディーラーと化してしまった感があります。
トヨタ以外は、販売低迷からマルチチャンネルを維持できなくなった末の系列統合だったんですよね。
トヨタも、上記の各社ほどではありませんが、ディーラー網の再編を行ったことがあります。
1998年にトヨタオート店をネッツ店に改名、ヴィッツやアルテッツァなどの新ブランド車を展開する為と思われますが、2004年にはこのネッツ店とビスタ店を統合し、新ネッツ店としてスタートしました。
両ディーラーで扱っていたアルテッツァ、アリストがレクサスに変わり、ビスタも絶版になった事で車種が減る為に統合せざるを得なくなった感じです。
もっとも、翌年レクサスが国内にも導入された為、再び5チャンネルとなったのですが……。
トヨタの場合、販売が落ち込んでいるわけではなく、まだまだマルチチャンネルを維持できそうな気がするのですが、トヨタと言う会社は、外部からは絶好調に見える時でも常に危機感を感じていて、次々に対策を打つのですよね。
あまりに強過ぎてアンチも多いですが、努力を重ねているからこその強さだと思います。
ただ、1チャンネルにしては扱い車種が多過ぎます。
今後の車種整理は必須ですが、絶版モデルが増えるのはどうなんだろ? とも思っちゃいますけどね。