
トヨタネタが続いていますが、ここは開き直ってさらにトヨタネタを投入。(笑)
と言っても、今回はトヨタブランドではなく、トヨタ自動車が展開しているプレミアムブランド、レクサスについてです。
レクサス
1989年に北米で販売が始まりましたが、これには積極的な理由と言うよりは消極的な理由によるものでした。
アメリカでは、石油危機を機に燃費の良い小型車を持つ日本車が人気となりますが、日本車にシェアを奪われたGMなどビッグスリーの業績が悪化、全米自動車労組(UAW)などが圧力をかけた結果、やむを得ず対米自動車輸出台数を制限する「自主規制」を1981年から導入します。
台数が決められてしまったので、売り上げ(利益)を伸ばすには、一台当たりの単価を上げるしかありません。
こうして日本のメーカーは、プレミアムブランドを試考したのです。
まずホンダが 1986年に
アキュラを北米に展開すると、1989年にトヨタが
レクサスを、日産が
インフィニティで続いたのです。(ちなみに、マツダも
アマティを計画していましたが、日の目を見る事はありませんでした)
切っ掛けは消極的理由でしたが、トヨタはレクサスブランドを展開するにあたり、その商品開発において高品質を追求、妥協を許さず矛盾する要素をも両立させる
「Yetの思想」と、問題が生じればその根本までさかのぼって解決する
「源流対策」を徹底させました。
そうして生み出された初代LS(日本ではセルシオ)は、従来の高級車像を打ち破る車となり、世界中の高級車メーカーに『LSショック』を与えたのです。
LSは、レクサスブランドが展開されなかった日本でもセルシオの名で販売され、大ヒット車となりました。
レクサスが世界中のメーカーに影響を与えた車は、もう1台あります。
RX(日本名:ハリアー)は、SUVという名称が定着する前(日本ではRVと言われていた頃)、オフロードを走る車と思われていた四輪駆動車をオンロードを走る都会派の車として登場しました。
(プレミアムSUVとしての話。都会派SUVの元祖は同じトヨタのRAV-4です)
大ヒットを記録したRXは数多のフォロワーを生みます。
つまり、今のSUVブームの先駆けとなったのがRXなのです。
2005年、トヨタは国内でもレクサスブランドを展開します。
モデルチェンジを機にセルシオはLS、アリストがGS、アルテッツァがISとなりました。(ソアラは従来モデルのままSCとして再出発しました)
ちなみに、本来はハリアー=RXだったのですが、国内ユーザーからの要望が多かったため、2009年のRX登場後も従来モデルが継続販売されました。(ハリアーは2013年にモデルチェンジして3代目となります。ちなみに現行ハリアーは4代目)
満を持しての国内展開でしたが、販売は苦戦します。
まあ、プレミアムブランドですからバカ売れするようなものでもないでしょうし、セルシオの時の販売店(トヨタ店+トヨペット店)とレクサス店では店舗数が違いすぎますので、セルシオの時と同数が売れる筈もないのですが……それでも既存ユーザーという財産を活用できなかったのは問題です。
また、LS以外の車(特にセダン系)はさらに苦戦しました。
そもそも、前述のように GSはアリスト、ISはアルテッツァで、レクサスとしての共通イメージを持つ車ではありませんでした。
レクサス化で、アリストやアルテッツァが持っていた個性が薄れ、先代モデルのユーザーからの買い替え需要を捉えることが出来なかったのです。
セダン系はそれぞれモデルチェンジしましたが、状況は好転するどころかさらに苦しくなっていきます。
GSは2020年9月に販売終了。
ISはつい最近(一昨日)マイナーチェンジモデルが発売開始されたものの、2013年発売と旧いモデルなので、販売増は期待できそうもない。
LSにしても、現行モデルで全長5,235mmと 先代のロングモデルより長くなり(メルセデスのSクラスより長い!)、レクサスに変わってからもLSに乗り続けたオーナーが駐車場事情などで買い替えを断念せざるを得なくなっています。
レクサスは 2018年から ESの発売を開始。
販売が滞っていた IS、GS のユーザー層に関して、ある程度取り込みに成功しました。
上記、大きくなり過ぎた LSのユーザー層にも、FFによる広大な車内スペースによって ESが代替モデルになっているかもしれません。
しかし、それでいいのか?
もともと、北米では昔からES(日本名:ウィンダム)を発売していました。
ただ、国内でレクサスを展開するときに ESをラインナップしなかったのは、プレミアムカー=FRであり、「合理的な車」感が漂うFFをあえて避けたのではないかと思うのです。
さらには、ESは車格というかヒエラルキーから外れたところに存在する気がします。
レクサスのヒエラルキーは、LSを頂点に GS、ISと続いていました。
これは、それぞれ メルセデスの Sクラス、Eクラス、Cクラス、BMWの7シリーズ、5シリーズ、3シリーズに当たります。
ESの登場でレクサスのヒエラルキーが崩れてしまった。
私は、レクサスをジャーマン3(メルセデス、BMW、アウディ)並みのプレミアムブランドにするのならば、安直にESに走らず、GS や IS を大事にすべきだったのではないかと思います。
前述のように、LSは大きくなり過ぎて 、先代のオーナーが買い替えできなくなってしまいました。
しかし、GSが2012年に発表した旧いモデルでなければ、先代LSのオーナーはGSに流れたのではないでしょうか?
そもそも、初代セルシオが登場した時、その車格はメルセデスのSクラスと言うより Eクラスや、BMWの5シリーズに近かった筈です。
メルセデスのSクラスは、どちらかと言うとショーファードリブンカーであり、ドライバーズカーではありません。
個人オーナーは圧倒的にEクラスやCクラスに乗っている筈です。
LSがSクラス並みの大きさとなった今、GS や ISに力を入れるべきではなかったのか?
その層はクラウンが受け持つという考え方もあるかもしれませんが、レクサスがプレミアムブランドを目指すなら、GS や IS こそが大事だったと思うのですがね。
ちなみに、国内でのレクサスブランド内の販売ランキングは、上から UX、NX、RX となっています。
レクサスもSUVメーカーになっちゃうのかなー。