
連載企画「フェラーリとランボルギーニ」の続きです。
ベビーランボ編で、『再開』と言っておきながら、単発で終わり、別の話題に行っちゃいました。(汗)
すみませんね、気が多くて……。
本日は、いよいよスペチアーレ・フェラーリ編です。
『スペチアーレ・フェラーリ』でググると、この車がヒットしちゃいますが……
(写真は、フェラーリ458スペチアーレ)
この車の事ではありません。
458のスペシャルバージョンではなく、スペシャルなフェラーリたちの話です。
商業的に『スペチアーレ・フェラーリ』として企画し、販売した車はタイトル画像のフェラーリF40が最初だと思いますが、私は、この車から始めたいと思います。
フェラーリ288GTO(1984年~1985年)
見た目は308GTBですが、全くの別物。
スタイリングは308GTBそのものと言って良いですが、オーバーフェンダー化していたり、そもそも軽量化の為にカーボン製のものに置き換えていたりで、308GTBのパーツを使っているのはウィンドウ類など、ごく限られたものと言って良いでしょう。
もちろん、メカニズムも別物。
308GTBと同じV8エンジンではあるものの、当時のレースカー(グループC)のランチアLC2用(フェラーリ製)V8ツインターボがベースであり、308GTBのエンジンとは別物。
駆動系も、308GTBがエンジン横置きだったのに対して、縦置きに変更されています。
車名の288は、2.8ℓ V8を示しています。(2.8ℓになったのは、当時のターボ係数1.4を掛けて4.0ℓ換算となるように 2,855ccとしているのです)
また GTOと言う名は、イタリア語で競技車両を示すOmologationから来ており、かの有名な250GTOから引き継いだもの。
リアのスリットは、エアアウトレットとして機能させるというより、250GTOの意匠を加えたという意味の方が大きいでしょうね。
グループBのホモロゲーション・モデルとして生を受けた288GTOでしたが、肝心の出場レースがスタートする事無く、グループB規定は廃止されてしまいます。
これは、先行してグループBでレースを行っていたWRCで、重大事故が多発したためです。
1985年、圧倒的な強さでチャンピオンになったプジョー205ターボ16。
そのプジョーを追って、ミッドシップ・フルタイム四駆モデル デルタS4を出したランチア。
前年、037ラリーで戦ったランチアは、第5戦ツール・ド・コルスでアッテリオ・ベッデガが事故死していましたが、1986年に本格参戦したデルタS4で、またしても第5戦ツール・ド・コルスで、エースのヘンリ・トイボネンが事故死(コ・ドライバーも同時に命を落としている)。
このラリーを機に、WRCは1986年を以って、速すぎて危険なグループBによる競技を中止。
競技そのものが始まってもいなかったトラックレースは、一度も開催されることなくグループBが消滅。
戦う場を失った288GTOは、活躍の場を与えられることもなく、272台が生産されただけで終わったのでした。
フェラーリ F40(1987年~1992年)
戦う場を与えられなかった288GTOでしたが、フェラーリはそんな288GTOをベースに、さらにポテンシャルをアップさせた車を開発します。
それがフェラーリ F40です。
この車は、エンツォ・フェラーリが開発を指揮した最後のフェラーリと言われています。
かつてのフェラーリがそうであったような「自分でサーキットまで運転して行き、そのままレースに出られる市販車」を作るべく、エンツォが製作を指示した車は、1987年にフェラーリの創業40周年を記念する車としてF40と名付けられました。
その低いノーズや、巨大なリアウィングは、まさにレースカーそのもの。
メカニズムは真新しいものは無く、旧来からの鋼管によるスペースフレーム方式を採用。
駆動方式もコンベンショナルなMRと、同時期のライバル、ポルシェ959が、トルクスプリット式フルタイム4WDだったことを考えると、旧態依然と言っても良いものでした。
ただ、それが却って良かったのかもしれません。
当時の最新技術のトルクスプリット式フルタイム4WDなど、今では珍しくなくなりました。
それに対し、純粋なレーシングカーのようなレイアウトの288GTOは、今でも大変魅力的です。
288GTOの2.8ℓは、3.0ℓに拡大されました。
これは、ターボ係数が1.4から1.7になった為、5.0ℓ換算となるよう、2,936ccにしたとも言われていますが、開発時にターゲットとしたレースやカテゴリーは不明で、本当に5.0ℓ換算となるように意図したかは不明です。
F40の3.0ℓツインターボエンジンは478psを発揮しますが、出力特性は所謂ドッカンターボで、非常に危険な車と言われています。
しかし、F40はレースでも盛んに使われ、人気もあった事から、1,311台もの台数が製作されました。
フェラーリ F50(1995年~1997年)
F40がフェラーリの創業40周年を記念する車なら、F50は創業50周年を記念する車。
開発コンセプトは「公道を走るF1」。
そのコンセプト通り、搭載するエンジンは、1992年のF1マシンF92Aに搭載された3.5ℓ V12エンジンをベースにしています。
そして、そのエンジンをシャーシの一部としてボディに剛結、リアサスペンションをそのエンジンに取り付けるという、F1そのものの構造をしています。
もっとも、その構造ゆえに振動はものすごく、快適性に劣る車となっていました。
F1の3.5ℓから 4.7ℓに拡大したエンジンは520psを発生しますが、同時期(1993年~1998年)に発売されたマクラーレン F1は6.1ℓで636psですから、速さと言う点では敵いません。
それもあってか、フェラーリは「F50は性能を追及した車ではない」と言っているようです。
人気が出たF40を1,311台も作ってしまい、一時期、価値が下がってしまった事を教訓にして、フェラーリはF50の生産台数を349台としました。
これは、かつてエンツォが、「顧客が望んでいる数の、常に1台少ない数を供給する」と言っていた事を実践した事になります。
なお、実際にF50が発売されたのは、フェラーリの創業50周年より2年早い1995年です。
これは、当時のヨーロッパに施行された新しい排気ガス規定より前に、予定した台数を全て売り切ってしまう為といわれています。
フェラーリ エンツォ・フェラーリ(2002年~2004年)
創始者エンツォ・フェラーリの名を冠した車。
この車が出た当時、私は「フェラーリにとって、これ以上の名前は無い。この車の後、どうする気なんだろう?」と、心配になったものです。
この車のデザインは、当時、ピニンファリーナでデザインディレクターをしていた、ケン奥山こと、奥山清行氏によるものです。
私、このデザイン、フェラーリらしくない(≒ピニンファリーナらしくない)と思うんですよね。
フェラーリって、もっと優美な曲線美の方が似合うと思うのです。
エンツォ・フェラーリって直線基調で、どちらかと言うとランボルギーニっぽい。(汗)
デザインテーマは明らかにF1で、フロントノーズの造形はF1マシンを意識した事がありありと感じられます。
ドア後端の形状も、F1マシンのドライバーの後ろにあるエアボックスの形状を思わせる物があります。
その一方で、F40やF50にあった巨大なリアウィングが姿を消しています。
これは、アンダーパネルやリアディフューザーによるグランドエフェクトにより、十分なダウンフォースが得られているためです。
F1マシンを模すなら、リアウィングがあった方がいい気がするのですがねぇ。
エンジンは、F50同様 V12エンジンを採用しています。
排気量 6.0ℓのエンジンからは660psを発揮、もう遅いとは言わせない!(笑)
F40では古式ゆかしきスペースフレーム、F50はF1さながらのエンジン剛結しフレームの一部として使用するなど、両極端の車造りでしたが、この車では、他のハイパーカーと同様のカーボンコンポジット形成のモノコックとなっています。
なので、F50よりも振動も少なく、快適になってます。(笑)
いかにも、新時代のフェラーリと言った感じですね。
フェラーリ ラ・フェラーリ(2013年~2016年)
前モデルで、創設者エンツォの名を付けてしまった後、どうするのかと思いましたが、新しいスペチアーレ・フェラーリにはラ・フェラーリの名が与えられました。
"La"は、英語では"The"にあたります。
つまり、Theフェラーリっていう意味ですね。
それはそれで、次が困るぞぉ。
「これぞフェラーリ!」以上のフェラーリってあるのか?
デザインはピニンファリーナではなく、フェラーリ社内のデザインチームによるものです。
可変スポイラーを始め、造形美よりエアロ優先って感じです。
ラ・フェラーリでは、電気モーターのアシストが追加されました。
所謂ハイブリッドカーです。
もっとも、”エコ”に振り向けている訳ではなく、エキストラパワーの為に電気モーターを使う、パフォーマンスの為のハイブリッドです。
興味深い事に、同時期にポルシェ918ハイブリッド、マクラーレンP1と、ハイブリッド・ハイパーカーが生まれています。
どの車も、超絶性能を誇りましたが……でも、エコカー減税になったんだろうなー。
エンジンは6.3ℓ V12で800ps、モーターはF1のKERS技術をフィードバックした「HY-KERS(ハイ・カーズ)」と呼ばれるもので163ps をアシストし、全体で963psを誇ります。
最高速は350km/hオーバーだそうですが……実際にはどれくらい出るんでしょうか?
ちなみに、ラ・フェラーリには、オープン仕様も存在します。
ラ・フェラーリ アペルタ
以前、大黒PAで目撃しました。
一体、いくらするんでしょうねぇ?
スペチアーレ・フェラーリと言う事で、今回は特別編として写真多めでお送りしました。(爆)