
昨日のブログで取り上げた、ゴードン・マレー・オートモーティブの「T.50」。
この車に採用されているトランスミッションは Hパターンの6速MTでした。
今や絶滅危惧種と言えるMT(Manual Transmission)。
フェラーリやランボルギーニの車からも姿を消して久しいMT。
ドライブを楽しむ層には今も需要はある筈ですが、性能(変速スピード)を理由に姿を消しました。
そんな “時代遅れの” MTをあえて採用した「T.50」。
これまた絶滅危惧種の高性能NAエンジンを、MTを駆使して自らの意思で操る……楽しいだろうなー。
もっとも、MTが絶滅危惧種になってしまうにはそれなりの理由がある筈です。
そこで、MTを含めたトランスミッションの種類を、今まで乗ってきた愛車で感じた感想と共に述べたいと思います。
トルコンAT(搭載車:アルファロメオ・ジュリア)
私が免許を取得した頃は、ATと言えばトルコンATの事でした。
トルコンとは「トルクコンバーター」の略で、流体による動力伝達を行う機構を持ちます。
流体による伝達の為、変速ショックが少なく、高級車には向いている変速機と言えます。
その一方、ダイレクト感に欠けたり、パワーロスによる燃費悪化などの欠点もありましたが、ロックアップ(直結)する事でダイレクト且つパワーロスの抑止が可能になりました。
また、最近は多段化が進み、10速なんていうATも存在しています。
もはや、効率の面でもMTを凌駕している感のあるトルコンAT。
私の愛車の中でトルコンAT搭載車は、最初に自分のお金で買った愛車のアコード2.0Si、そして 一番新しい愛車のアルファロメオ・ジュリア クアドリフォリオ の2台です。
大昔のアコードは4ATでしたが、ジュリアは8速ATです。
ジュリアは、DNAシステムで 選んだモードにより変速スケジュールが変わります。
Dynamicモードにすれば、極力低いギアで高回転まで引っ張りますし、Raceモードにすれば『マニュアルシフトが最適です』とまで言われます。
イージードライブだけでなく、スポーツドライビングも出来るミッションと言えます。
しかし……
やっぱり、どこかにトルコンATによるダイレクト感不足を感じるんですよね。
変速スピードなど性能は十分なのでしょうが、変速フィールなど感性の部分がスポーツドライビングには向いてないんじゃないかなーと思います。
シングルクラッチAT(搭載車:BMW M5)
MTと同じ変速ギアとクラッチで構成されるものの、車がクラッチを操作して自動的に変速するのが シングルクラッチAT です。
ちなみに、シングルクラッチAT という名称は私がそう呼んでいるだけで、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)に対するシングルとしてそう名付けました。
一部でセミATと呼ぶ人がいますが、「自動的に変速するのだからセミATじゃねーだろ!」って思いがありまして。
この手のミッションはフェラーリの「F1マチック」やアルファロメオの「セレスピード」が有名ですが、元祖はいすゞの「NAVI5」って知ってました?
(1984年8月、いすゞ・アスカに搭載)
BMWの場合、この手のミッションはSMGと呼びます。
SMGの事を『サド・マゾなギア』と言う人がいるほど、普通のユーザーには評判の悪いミッション。
ATと思ったら変速ショックは大きいし、変速スピードもイマイチ。
でも、パドルを操作して自分で変速すれば意外と気にならない……2ペダルMTと考えれば、ダイレクト感もあって楽しいミッションでした。
結局、セミATとして使ってるじゃん。(汗)
DCT(搭載車:アルファロメオ 4Cスパイダー)
その名の通りクラッチを2つ持つのが特徴で、変速時にあらかじめ変速先のクラッチを繋いでおき、変速元のクラッチを切るのとほとんど同時に変速、ロスタイムがほとんどない変速を実現しているミッションです。
MTではどんな名手でも、このミッションの変速スピードには敵いません。
それ故、ヨーロッパのスポーツカーは軒並みMTからDCTへと変わっていきました。
なお、ポルシェはPDK、アルファロメオは TCT(ツインクラッチトランスミッション)と呼んでいます。
4CのTCTは、スポーツドライビングには向いていましたが、自分で操る自由度はHパターンのMTの方が上だと思います。
クラッチを切り、ギアを選んで回転を合わせ、クラッチを繋ぐ……この面倒臭いひと手間がまた楽しい!
この辺、PDK乗りのお友達と話すと意見が分かれる点ですね。
まぁ、どう考えても速いのはPDKですし、速い=楽しい という人にはPDKの方が上でしょう。
あと、PDKは渋滞時には絶対的に楽ですし。(クソ重いクラッチを繋ぐのもまた楽しいのですがねー)
なお、DCT/PDKでクリープを再現させているか否かで、イージードライブ度が変わります。
4Cはクリープが無く、車を動かすにはある程度エンジンを吹かさねばばりません。
「そんなの、アクセル踏めばいいじゃん」とお思いですか?
それが違うのですよ。
普通にドライブするならそれでいいのですが、車庫入れなどで少しずつ動かしたい時は、微妙なクラッチワークが使えません。
車を動かすために少し多めにアクセルを踏んでブレーキで調節する、但し、ノーマルでほぼ直管マフラーの4Cでは、多めにアクセルを踏んだ時点で結構な爆音になります。
これが閑静な住宅地では、ご近所の目が痛かった…💦
自分でクラッチワークを調節できるMTだったら、今でも4Cに乗っていたかもしれません。
CVT(搭載された愛車:なし)
今や、国産の小型車の主流となった感のあるCVTですが、CVT車を愛車にしたことはありません。
運転した経験も、一時期、足車として購入を考えて試乗したインプレッサくらいのものです。
CVTと言えば、無段変速で一番効率の良いエンジン回転数をキープ出来る事が一番の利点です。
ただ、その理想をそのまま具現化した初期のCVTは、エンジン回転が変わらず車速のみが伸びていく不思議な感覚が違和感となり、なかなか受け入れられませんでした。
試乗したインプのCVTは、無段変速のCVTながら段のある変速を再現させていて、あまり違和感はありませんでしたが、最近のCVTはどんなドライブフィールなんでしょうね。
なお、CVTが『無段変速で一番効率の良いエンジン回転数をキープ出来る』と書きましたが、効率がいいのは『変速時』です。
日本の様に、渋滞の多い市街地でストップ&ゴーが多ければCVTの変速効率の良さが生きますが、ヨーロッパの様な高速巡行が多い使い方では変速は発生せず、むしろ常に油圧を掛ける必要がある(油圧ポンプ駆動によるエネルギーロスを伴う)為、却って効率の悪い変速機になってしまいます。
欧州車がCVTを採用したがらないのは、ヨーロッパでは効率が良くないからでしょうね。
さて、ここまで変速機について書いてきましたが、将来的に車がEVに置き換わると変速機も必要なくなります。(ポルシェ・タイカンは2速のトランスミッションを採用していますが)
こういう点も、EVになったらドライブが楽しめないと思うところなんですがね。
タイカン、メッチャ速いようだけど、速いだけがドライブの楽しさじゃないと思うんだけどなー。
やっぱり私は
MTが好き!