2023年07月18日
Fの悲劇
『Fの悲劇』といっても、エラリー・クイーンではありません。
日経X-TECHの記事に
富士通退職者向けのSNSで波乱、問題視された現役経営幹部名の投稿とは
なるタイトルの記事がありました。
それによると…
Facebookの富士通退職者が集まるグループに、現役の上級幹部が投稿し、物議をかもしている。
自治体のコンビニ交付サービスシステム「Fujitsu MICJET コンビニ交付」のトラブルを巡り、福田譲EVP名義で以下の投稿があった。(EVPは常務に相当)
「現役です。問題になっているプログラムは2009年製です。現役製ではありません。自分ごととして『応援』していただけるOB/OGを求めている/リスペクトしていること、分かっていますか? ガッカリする/ありがたく思う。大きく分かれています。皆さん、どうありたいですか?問われているのは皆さんではないかと思います」
なぁに言っちゃってるんですかねえ…。
マイナンバーカードのトラブルで富士通は相当叩かれていますから神経質になるのは分かるんですが、この言い方はいただけない。
まるで、OBがやらかしたミスの所為で現役世代が迷惑してるって読み取れます。
しかし、実態はどうなんでしょう?
確かに、問題の原因は当時のシステム開発に係わった関係者にあるとは思いますが、システム発注元の要望の時点で無理があったと思います。
システム開発者は、発注元の無理難題を何とか形にしていったんじゃないですかね。
また、この手のシステムは一度出来上がればそれで終わりではありません。
最初の要求仕様では機能不足で(或いは要求仕様に不備があり)、システムのアップデートが繰り返されます。(自治体のシステムなら、令和になっただけでシステム改編が必須です)
そうした改編作業は当然現役世代が行うのですが…
ここからは、元富士通のエンジニアで、今は派遣で各システム開発会社に協力社員としてシステム開発に従事しているTさんに聞いた話です。(笑)
私が富士通で従事していたのは、最近問題になっているナンチャラカードの様なソフトウェア側ではなく、ハード側の制御システムの開発でした。
銀行、携帯キャリア、証券システムなどに納める為、システムの信頼性は生命線であり、考えうる限りの品質管理策が行われていました。
よく聞くであろう ISO9001 も、『こんな事をしていても品質は確保できない。ISO取得の為の活動ではなく、品質確保の為の活動をしよう!』と独自の品質管理システムを構築したくらいです。
また、これもよく聞く話ですが『仕様書は(プログラムの)ソースコードだ!』というのは、コードを解析すれば分かるようなものだけであり、外部I/Fだったり、作業手順書などの外部資料はしっかりと作成し、メンテもされていました。
プログラムなので不具合を完全にゼロにする事は出来ませんが、少なくても当時の部署は品質問題に発展するような体制では無かったと思います。
2000年代はプロパー社員だけで開発が行われていましたが、2010年代に入るとコスト削減の為に徐々に外注が増えていき、2010年代後半はプロパー社員は仕様決めと外注の進捗管理を行うだけで実作業から離れていきました。
プロパー社員が開発から離れれば、当然必要な社員数も少なくて済みますから、給料の高い中堅以上の社員から切り捨てが始まりました。
私の部署でも、45歳以上の社員に『アナタのキャリアアップを支援します』という名目で、希望退職の募集がありました。
希望退職と言っても、実態は“希望していなくても” 半ば強制的に辞めさせられましたが…
そんな訳で、富士通を退職し、今はソフトハウスに派遣されてシステム開発を行っているのですが、皮肉にも それらソフトハウスが請け負う仕事の大元が 富士通だったりするのです。
従事した業務には、銀行、証券取引所、マイナ〇バーカードもありました。
しかし…
”その” 富士通では、まともな資料が残されていませんでした。
『仕様書はソースコードだ!』と言われても、どう見てもそのソースコードがおかしい。
「何故、こんなコードになっているのか?」と問うても、答えられる人が居ない、
設計当時の仕様書も残されていない。
中には、変更対象が指示された仕様書がベースとしている版数と、現状のソースコードの版数が違うなんて事も。
これでどうやって品質を確保しろと?
OBが構築したシステムに問題があるというより、現役世代に引き継がれてないだけなんじゃないですかね?
結局、コスト削減だけを考えて、ノウハウを持つ開発者を切り捨てた弊害が、今、顕在化しているのではと思いますよ。
ノウハウを持つ開発者を切り捨てた事が、今の富士通の問題の根幹にあるのではないですかね。
コスト削減も大事だとは思いますが、社員(人)は財産です。
財産を捨ててしまった、それこそが富士通の悲劇だと思います。
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Posted at
2023/07/20 01:33:12
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