
本日のブログは、ピッコロ・フェラーリ編で行きたいと思います。
ピッコロ・フェラーリって言葉、聞いた事ありますか?
ピッコロ、イタリア語で小さいを意味しますので、日本人に馴染みのある英語風に言えば、スモールフェラーリと言う事になります。
もっと具体的に言うと、V12以外のフェラーリの事を指し示す言葉です。
F355 や 458 などの V8モデルをイメージして頂ければ良いです。
「だったら、V8を積んだフェラーリって言えよ!」って思ったりしましたか?
ダメなのです。
フェラーリ社には、かつてV6エンジンを積んだ車を製造していたことがありますから。
ディーノ206・246GTオープンモデルは246GTS(1967年~1974年)
ピッコロ・フェラーリの歴史を紐解くと、ディーノ206・246GTに行きつきます。
ディーノには、V6エンジンが搭載されていたのです。
前回のブログで、フェラーリ365GTB/4 が従来のFRレイアウトを踏襲したと書きましたが、フェラーリもミッドシップの乗用車については、その能力の高さは認識しており、それ故、このディーノが誕生致しました。
しかしながら、フェラーリ365GTB/4 と同様、レオナルド・フィオラヴァンティ(ピニンファリーナ)がデザインした流麗なボディには、どこにもフェラーリのエンブレム、カバリーノランパンテはついていません。(タイトル画像はディーノのエンブレム)
当時、エンツォ・フェラーリは「V12以外はフェラーリに非ず」としていて、V6エンジンを搭載するこの車には、別ブランドを名乗らせることにしたのです。
それが、エンツォの愛息で1956年に夭折したアルフレード・フェラーリの愛称:ディーノだったのです。

(この辺のエピソードは、また別の機会で書きましょうかね)
206GTは、エンジンの材質として高価なマグネシウムやアルミニウムを使い、同じくアルミニウム製のボディは職人によるオールハンドメイドで、非常にコスト高の車でした。
そんな訳で、206GTは 152台に過ぎなかった生産台数による希少性も相まって、現在では非常に高価で取引されているのです。
ああ、そんな、超希少車も大黒PAに行くと、見ることが出来ちゃうんだよなぁ。
話をディーノの紹介に戻しましょう。(汗)
コストダウンを図るべく、エンジンブロックを鋳鉄製とし、ボディも鉄製としたのが246GTです。
もう、お分かりでしょうが、車名の206/246は、排気量+気筒数であり、当時のV12フェラーリで用いていた、1気筒あたりの排気量ではありませんでした。
この辺も、ディーノを他のフェラーリと明確に区別していた事を示していると言えます。(もっとも、この後、V12フェラーリにも、この命名ルールは用いられるのですが)
フェラーリ308GTBオープンモデルはGTS(1975年~1985年)
ディーノ246GTの後継車として登場したディーノ308GT4は、とても異例なフェラーリでした。
ミッドシップでありながらも、後席を備えた2+2の車に与えられたボディは、ピニンファリーナではなく、ベルトーネ(あのマルチェロ・ガンディーニ!)によるものでした。
異例尽くめのフェラーリは、従来のフェラーリの顧客には受け入れられず、“正当な”ディーノ246GTの後継車を求める顧客の声に押され、フェラーリ308GTBはデビューするのです。
これぞディーノ246GTの後継車と言える美しいボディラインは、ピニンファリーナに戻され、フィオラヴァンティがデザインしました。
なお、初期モデルは、なんとボディがFRP製でした。
スチール製ボディとなった量産型(?)に比べて210kgも軽量だったわけですが……ロータスじゃあるまいし、FRPで品質を維持できたんでしょうかね?
なお、308GTBのボディを一部流用した288GTOが1984年に登場します。
こちらは後のF40のベースとなる、いわばスペチアーレ・フェラーリであり、ピッコロ・フェラーリには属しません。
フェラーリ328GTBオープンモデルはGTS(1985年~1989年)
308GTBのマイナーチェンジ版で、フロントバンパー形状が大きく違います。
車名からも分かる通り、3.0ℓから3.2ℓに排気量がアップしました。
フェラーリ348(1989年~1994年)
1989年のフランクフルト・ショーにてデビューしたのがフェラーリ348tb、そして 348ts でした。
不思議に思いませんでしたか?
今まで、頭で表示する車名はもっと具体的に書いていましたが、今回は「フェラーリ348」とだけ書いています。
それは、途中で車名が変更になるからです。
1993年、それまでの 348tb/ts から 348GTB/GTS に変更されました。
フェラリスタには馴染みの名称ですが……あまり名前を変えないでほしいなぁ。
348シリーズのトピックスは、エンジンがディーノや308/328の横置きから、縦置きに変更された事です。
しかし、ただ縦置きにしただけではありません。ミッションは横置きにレイアウトされています。
発表時の名称を思い出してください。”t” が付きますよね?
これ、エンジンとミッションが直角(90度)に結合されている事を”t”の字で示しているのです。(だったら大文字の”T”じゃね? と、私なんかは思ってしまうのですが)
ボディ構造も大きく変更され、前時代的な鋼管スペースフレームから、現代的なモノコックへと変わりました。
ただ、その影響でシャシ剛性が不足し、「高速道路で車が真っ直ぐ走らない」という有り難くない評判を生んでしまうのです。
なお、1993年には、屋根が外れるだけのGTSの他に、完全なオープンボディの348スパイダーも登場しました。
フェラーリF355オープンモデルのGTS/スパイダーもあり(1994年~1999年)
348シリーズのマイナーチェンジ版。
348が、テスタロッサの弟分らしく、ボディサイドにフィンをあしらっていたのに対して、フィンが無くなりだいぶすっきりした印象があります。
個人的には、ディーノ、308/328から続く、伝統のピッコロ・フェラーリっぽいボディラインが映えて見えて好ましく感じます。
なお、この車を最後に、トンネルバックも、リトラクタブルヘッドライトも、フェラーリからは失われてしまいました。
メカニズム的には5バルブ化された3.5ℓ V8エンジンがトピックスですね。
はい、F355という名称は、3.5ℓ、5バルブから来ています。
なお、この車の途中からセミオートマチックの『F1マチック』が追加されました。
フェラーリ360モデナ(1999年~2005年)
この辺から、ボディラインが「美しさ」よりも「空力」を重視するようになりました。
デザインはピニンファリーナのダビデ・アルカンジェリでした。(アルカンジェリは、My M5のE60世代のBMW5シリーズのデザイナーでもありました)
メカニズム的にはF355を踏襲しているものの、空力は大幅に向上していて、F355対比で4倍のダウンフォースを得ているそうです。
まぁ、この車も、先代シリーズのように、第2世代の方がグッと洗練されて評判が良いのですが……。
フェラーリF430(2004年~2009年)
車名が示すように、V8エンジンは4.3ℓまで拡大されました。
と同時にF355から採用され、360にも引き継がれた5バルブは、コンベンショナルな4バルブに戻されました。(一時期、日本車でも流行った5バルブ、完全に廃れたなぁ)
なお、MTが選べる最後のフェラーリとして記しておきます。
フェラーリSP1(2008年)
この世代(F430)をベースにしたワンオフモデル。
日本のフェラーリ・コレクターのオーダーで製作されたらしいです。
何故、ワンオフモデルをここで紹介しているかと言うと、デザイナーがレオナルド・フィオラヴァンティだから。それだけです。(笑)
フェラーリ458イタリア(2009年~2015年)
名称が排気量+気筒数に戻りましたね。(笑)
4.5ℓ V8エンジンは578PSを誇ります。いつの間にか F40を超える、最速のV8フェラーリになっていたんですね。
などと、ノスタルジーに浸っているとチコちゃんに叱られますよ!
遂に、この車を最後に、V8は全てターボになってしまうのです。(T-T)
ノスタルジーネタはもう1つ、この車から全車F1マチックとなり、MTが失われてしまいました。(ToT)
まあ、イージードライブ派や、速さ絶対主義派の方には、F1マチックがDCTになった事は朗報でしょうね。
フェラーリSP12 EC(2012年)
458イタリアをベースに、512BBのモチーフを取り入れて制作されたワンオフモデル。
車名のECは、Eric Claptonの頭文字、はい、注文主は、大のフェラーリファンで有名なエリック・クラプトンなのでした。
フェラーリ488GTB(2015年~2019年)
458のところでも述べた通り、ターボになっちゃいました。
3.9ℓ V8ターボで 670ps、確かに凄いんですけどねぇ。
ただ、NAであの馬力を出していた事がすごいと思っちゃうんですけど。
まあ、フェラーリはF1を戦っているし、そこではターボエンジンを使っているので「F1のイメージだ!」って言えばそれまでなのですが。
そうそう、名称では、GTBまで戻ってきましたねぇ。(←なんか、説明が投げやり?)
フェラーリF8トリブート(2019年~)
最新のピッコロ・フェラーリです。
ただねぇ、720psとか、既にピッコロ(小さい)なんて言える車じゃないよなぁ。
最新のV12搭載車、フェラーリ812スーパーファストなんかは、スポーツカーと言うには大き過ぎる、まるで恐竜の様です。
むしろ、真のピッコロ・フェラーリとして、F8トリブートよりも小さい車が欲しいくらいです。
だからでしょう、フェラーリからディーノが出るっていう話が出ていたのは。
昨年亡くなったセルジオ・マルキオンネが、V6エンジンを積んだディーノの復活を口にしたものの、今年になって、ディーノの開発計画が休止になってしまいました。
あくまで休止とは言っているけど、SUVにまで手を出すフェラーリです。
やる気があるなら出来ない筈がありません。
やっぱり、超高級車としてのブランド維持を優先するのでしょうね。
フェラーリのCEO ルイス・カミッレーリは「価格を下げてオーナーを増やすという考えはありません」とコメントしているそうです。
じゃあさ、もう一度、フェラーリブランドから切り離して、ディーノブランドで出してよ!
それが、スタートだったんだからさ!
―つづく―